北米とメタンフェタミン|世界薬物報告書2010を読む4

国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した『世界薬物報告書2010 The World Drug Report 2010』を読みながら、いま世界が抱えている薬物問題について考えています。
[参照]UNODC‘World Drug Report 2010’
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2010.html

日本で「覚せい剤」として広まっているのがメタンフェタミン。その主要な生産地、消費地は東南アジアから東アジアにかけての地域ですが、実は、この地域での密造や消費の実態はそれほど明らかになっていません。わが国も含めて、アジア諸国では基礎的なデータが不十分なため、正確な分析ができにくいのです。
そこで、メタンフェタミンの第二のマーケット、北米の状況をみておきましょう。『世界薬物報告書2010』の107から110ページです。

アメリカ合衆国では、密造に使われる原料(前駆物質)のエフェドリンやプソイドエフェドリンの規制強化の結果、2000年代前半には、市販の風邪薬を原料とした小規模な密造が急増しましたが、2005年に市販薬の販売制限が導入され、国内での密造が急速に減少しました。
しかし、USAでの減少と反比例して、この時期からメキシコで大規模なメタンフェタミン密造が急増しはじめたのです。本書は、2009年にメキシコで摘発された大規模密造所の例を紹介していますが、「240ヘクタールの敷地内に22の建物を備え、31,000リットルの化合物を製造するというもの(108ページ)」です。
USAでのメタンフェタミンの末端価格は、この時期の需給変化を反映しています。国内での製造が急減した2007年には価格が急騰し、年初には1グラム当たり147ドルだったものが、年末には279ドルになりました。その後、メキシコでの密造が増加するにつれて価格が下落し、2009年後半には127ドルに戻っています。
画像

↑アメリカ合衆国でのメタンフェタミン末端価格の変化(2005-2009年)
『世界薬物報告書2010』108ページより転載
原資料:National Drug Threat Assessment 2009 and 2010, US Department of Justice, National Drug Intelligence Center

さて、メキシコで密造に使われる前駆物質ですが、2006/2007年では、エフェドリン、プソイドエフェドリン錠剤が西アジア、アフリカからヨーロッパ経由で密輸され、次いで中南米経由のルートが利用されるなど、国際的な前駆物質規制をかいくぐる新たな密輸ルートが次々に生まれています。
メキシコは、エフェドリン、プソイドエフェドリンの密造への転用防止に取り組み、密造は抑えられ始めています。メキシコからUSAへの密輸ルート上で押収されるメタンフェタミンは、2005/2006年のピーク時に比べ、約40%減少しました。
しかし、製造工程を組み替えて、規制レベルの低い前駆物質からメタンフェタミンを合成する動きもみられます。フェニル酢酸誘導体からP-2-Pを合成する方法が用いられ始めているのです。2009年末の時点で、密造メタンフェタミンの37%がP2P方式で製造されたとみられています。

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