中国その3|薬物密輸と死刑の問題12

●麻薬犯罪組織の拡大
世界中で薬物問題が暴発した1980年代、中国では改革・開放路線に乗じて麻薬犯罪組織が拡大し始めました。中華人民共和国刑法が改正された1997年ころは、中国は深刻化する麻薬問題に直面し、全国的な麻薬禁止運動に注力していた時期に当ります。日本で刊行された文献から、当時の上海市の薬物犯罪情況に関する解説の一部を引用します。
「1998年1月~8月に全市(上海)において検挙された麻薬事件は、全部で1669件であり・・・・・・検挙された1キロ以上の麻薬大事件は11件に達し、全部でヘロイン185.7キロ、資金6784万人民元を押収した。」
「本市の麻薬販売の課程には、大体4つのレベルがある。⑴麻薬の原産地が主として甘粛省であり、当地の密売者によって、麻薬はわが国の西南の辺境から購入され、甘粛へ運搬されて加工される。⑵甘粛の現地の密売者は、麻薬を上海に送り、長期に同市にいる同郷人にだけ販売して利益を得る。⑶長期間にわたり本市にいる甘粛人が、麻薬をさらに本市にいる新疆人または本市の人間に販売する。⑷本市の新疆人または本市の人間によって麻薬の小口販売活動が行われ、麻薬を吸食するものに提供される。」
この文献は、1990年代末の状況について解説したものですが、中国南西部を経由してゴールデン・トライアングルから密輸されるあへんが最大の問題である点は、現在も変わっていないようです。
[出典]
金利栄「麻薬犯罪の捜査および視聴証拠」52-53頁、西原春夫編『中国刑事法の形成と特色 6』成文堂(1999)

●麻薬問題の重要地域
現在、中国で薬物犯罪組織が活発に活動しているのは、主として次の4地域だといいます。
少し古いものですが、チャイナネットの2005年4月に「薬物対策の『4大戦場』を指定、徹底した取締りへ 」という記事があります。この記事は、薬物対策の重点地域として「4大戦場」をあげていますが、なるほど中国は、国境を接する3方面に世界有数の薬物産出地域を抱えているのだと、改めて納得してしまいます。
①雲南省を中心とする中国西南部
ゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)に隣接する中国南西部は、中国にとって最大の薬物流入ルートとなっています。ゴールデン・トライアングルでは、伝統的にけしの栽培が行われてきたほか、近年ではメタンフェタミンなどの合成薬物の密造所も集中し、さらに麻薬原料となる化学薬品の国際流通拠点も形成されているといいます。なお、ラオスはアフガニスタンに次ぐ不正あへんの生産地です。
②新疆ウイグル自治区を中心とする中国西北部
広大な新疆ウイグル自治区西端の山岳地帯は、アフガニスタンと接しています。世界に出回るヘロインの大半を産出するのは、アフガニスタン南部のゴールデンクレセント(黄金の三日月)と呼ばれる地域。ここで生産される、あへんやヘロインが、アフガニスタンやパキスタンを経由して中国へ密輸されています。
③吉林省を中心とする中国東北部
最近、相次いで日本人が覚せい剤密輸に関わったとして逮捕されているのが、この地域です。吉林省の南端は北朝鮮と国境を接しており、覚せい剤が密輸入されるルートのひとつになっています。記事では、この地域に対して「国境検問所や交通ルート、水際のパトロールを強化し、国外の密売グループによる薬物販売ルートの形成を阻止する。」としています。
④広東省・福建省などの沿海地区
1980年代から急速に拡大してきた中国の薬物犯罪組織の多くは、中国南東部の沿岸都市に拠点を置いています。上記の文献にあるように、ゴールデン・トライアングルを経由して中国へ密輸されたあへんは、甘粛省周辺の密造所でヘロインに加工され、沿岸都市へ運ばれました。
現在は、メタンフェタミンやMDMA、ケタミンなどの合成薬物の密造所や密輸拠点が、広東省や福建省の沿岸都市に集中しているとみられています。
[参照]チャイナネット日本語版>薬物対策の「4大戦場」を指定、徹底した取締りへ(2005年4月15日)
http://japanese.china.org.cn/txt/2005-04/15/content_2168764.htm

●南東沿岸部でのメタンフェタミン密造問題
上記の「4大戦場」は第4番目に、国内での薬物密造地域をあげています。隣接する他国から密輸される薬物に加えて、近年では、国内で密造される合成薬物の増加が、新たな重要課題になっているのです。密造される薬物は、メタンフェタミン、MDMA、ケタミンなど、なかでも中国国内で深刻な問題を引き起こしているのは、メタンフェタミン(覚せい剤)です。
2004年7月、公安部禁毒(麻薬撲滅)局の楊鳳瑞局長による麻薬撲滅方針解説を報じる英文記事では、「氷毒」と呼ばれる結晶状メタンフェタミンの密造が、中国南東の沿岸部で行われ、深刻な問題となっていることに言及しています。中国で製造された合成薬物が密輸出され、外国の薬物販売組織の発生を促し、世界の不正薬物市場に流出していると、局長は警戒感を表しています。
[参照]IP>Officials of the Narcotics Control Bureau of the Ministry of Public Security of China Talk about China's Drug Control(07/14/2004)
http://ipc.fmprc.gov.cn/eng/zjhd/t143444.htm
また、2006年6月のチャイナネットは、福建省、広東省などでメタンフェタミン約18トンを密造していたとして逮捕された被告人の初公判が行われたと報じています。記事は「被告らは、自ら開発した製造技術で、「アイス」と呼ばれる覚せい剤メタンフェタミン18.075トンを密造していた疑い。この量は、事件発覚までの1年間に世界で発見、没収されたメタンフェタミンの総量に匹敵する。公安部(警察)は、20万元の懸賞金をかけて劉被告をA級指名手配していた。」と報じています。
[参照]チャイナネット日本語版>史上最大のメタンフェタミン密造事件、広州で初公判(2006年6月27日)
http://japanese.china.org.cn/archive2006/txt/2006-06/28/content_2245937.htm

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