ベトナム|薬物密輸と死刑の問題9

国際ハームリダクション協会The International Harm Reduction Association(IHRA)が最近発表した『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観 The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010』を読みながら、薬物犯罪と死刑の問題を考えています。
[参照]
Patrick Gallahue and Rick Lines‘The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010’(2010) International Harm Reduction Association
http://www.ihra.net/Assets/2538/1/IHRA_DeathPenaltyReport2010.pdf

現在、世界の大勢が死刑廃止に向かう中で、薬物犯罪に対する法定刑として死刑を定めている国は32か国。本書は、各国の現況を3つのカテゴリーに分類しており、「死刑関与の高い国」には6か国があげられています。しかし、そのうちマレーシアとシンガポールでは、近年死刑の執行が急速に抑えられているといいます。そうすると、中国、イラン、サウジアラビア、ベトナムの4か国が問題の焦点になっていることになります。
さて、これらの国は、薬物犯罪に対して相当数の死刑を毎年執行しているのですが、その実態は秘密に覆われ、きわめて不透明です。

●薬物犯罪に対する罰則
ベトナムの刑罰コードは、一定量を越える麻薬の製造(193条)、貯蔵、運搬、取引(194条)に対する罰則を、20年の拘禁、終身刑または死刑と定めています。
基準になる量は、194条の貯蔵、運搬、取引罪では、たとえば■あへん、大麻樹脂、コカプラズマでは5kg以上、■ヘロイン、コカインでは100g以上、■大麻草の葉や花実、コカの葉75kg以上、■乾燥けしがら600kg以上、■他の麻薬では固形物重量として300g以上、などと細かく定められています。
[参照]World Legal Information Institute >Vietnamese Laws>PENAL CODE
http://www.worldlii.org/vn/legis/pc66/

しかし、ベトナムは犯罪や刑事司法に関する実態をほとんど公表しておらず、とくに死刑に関しては、国家機密として情報を堅く閉ざしています。そのなかで、多くの国際人権団体が様々な手段で情報収集を試みて、同国の死刑の実態を少しずつ明らかにしているのが現状です。
私は、信頼できそうな資料をいくつか探し出してみましたが、それぞれ内容に差があり、正確な状況を把握することの困難さに直面しています。幸い、国際人権連盟(FIDH)が最近発表した『ベトナム社会主義共和国に於ける死刑―死刑に反対する第4回世界会議版』という資料に、比較的詳しい記事があるので、この資料に基づいて、もう少し具体的に検討してみます。
画像

[出典]
THE DEATH PENALTY in the Socialist Republic of Vietnam
Special edition for the 4th World Congress against the death penalty
The International Federation for Human Rights (FIDH),2010
http://www.fidh.org/The-Death-Penalty-in-the-Socialist-Republic-of,7575

実際の刑事裁判において、薬物犯罪で死刑が科されるのは、薬物の取引(輸出入、販売)罪の場合が多く、人民最高裁判所が2001年7月に示したガイドラインに基づいて判断されているといいます。ガイドラインによれば、ヘロインの取引の場合では、100gから300gでは20年の拘禁、300gから600gでは終身刑、600gを超えた場合は死刑とされています(PDF版6頁)。

同書から引用します。
「政府系メディアによれば、死刑の判決が宣告されたのは、2009年では58人、そのうち14人が薬物犯罪によるものであるが、実際の数字はさらに多いものと思われる。」
「死刑がもっとも多く適用されるのは薬物関連犯罪で、次いで汚職、闇取引、暴力犯罪となっている。ベトナムの薬物法令は、世界でもっとも過酷なもののひとつである。1997年の法令では、100グラム以上のヘロイン、または5キログラム以上のあへんの所持または密輸に対して死刑を科すことがある。2001年には、薬物取引罪だけで55人に死刑が言い渡された(同書3頁)。」
「死刑の宣告と執行に関する統計は、共産党本部によって発表されることはない。ベトナムは実に、国際社会と人権機関による批判を静めるために、2004年1月に、死刑統計に対して「国家機密」としての分類等級を採用したのだ。ベトナムの報道機関は2006年に『例年、100人前後が銃殺隊によって死刑執行されている』と報じた。AP、AFP、およびベトナムの報道機関によると、2007年には104人に死刑が宣告され、そのなかには14人の女性も含まれている(同書4頁)。」

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