シンガポール|薬物密輸と死刑の問題7

国際ハームリダクション協会The International Harm Reduction Association(IHRA)が最近発表した『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観 The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010』を読みながら、薬物犯罪と死刑の問題を考えています。
[出典]
Patrick Gallahue and Rick Lines‘The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010’(2010) International Harm Reduction Association
http://www.ihra.net/Assets/2538/1/IHRA_DeathPenaltyReport2010.pdf

●「薬物犯罪には死刑」を掲げる国シンガポール
シンガポールは、薬物密輸や売買を厳しく取り締まり、違反者に対しては、外国人であっても、死刑を科す国として知られています。この国を訪れる旅行者は、空港到着前から「注意 シンガポールの法律により薬物取引には死刑が科せられる」という警告サインによって、否応なしにこの国の厳しい姿勢を知らされることになります。
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↑シンガポールの出入国カードWikimedia Commonsより

<在シンガポール日本国大使館の情報>
「麻薬は国家の安全に対する重大な脅威」
シンガポール政府は、麻薬関連犯罪に対し、死刑を含め厳しく処罰するという方針をとっています。(略)
シンガポールにおいては、15g以上のヘロイン、30g以上のモルヒネ、250g以上の覚せい剤、500g以上の大麻等の所持・密売・密輸に対しては死刑が科せられるほか、微量の所持や使用についても厳しく罰せられます。なお、麻薬を所持している場合は「疑わしきは罰せず」の例外として、所持人自身が自らの潔白を証明できない限り有罪と認定されてしまいます。
また、シンガポール政府はいったん判決が確定した場合、外国政府や関係者からの減刑要請があっても、これを受け入れないとの方針を貫いています。2007年1月26日、シンガポール政府は、2004年11月にチャンギ空港にて大量のヘロインを所持し、死刑判決が確定していたナイジェリア人について、ナイジェリアの大統領が発出した減刑要請の書簡を公表したうえ、麻薬犯罪に対する厳しい立場を堅持する必要から減刑には応じないことを発表し、同日、そのナイジェリア人に対し死刑を執行しました。2005年末にも、麻薬密輸に関与したオーストラリア人死刑囚に対して、オーストラリア政府からの減刑の嘆願にも関わらず死刑を執行しました。
[出典]在シンガポール日本国大使館「2010年 安全の手引き~シンガポールでの生活を安全に過ごすために~」
http://www.sg.emb-japan.go.jp/ryoji_bohan_j.pdf

●薬物乱用法MISUSE OF DRUGS ACT
シンガポールの薬物乱用法には、前回で紹介したマレーシアの法律とよく似たところがあります。まず、薬物の[取引]、[製造]、[輸出入]などの違反に対しては、有罪となれば、科される刑罰は死刑に限定されていること。また、一定量以上の薬物を所持した場合、反証がない限り、[取引]目的であると推定される規定があること。さらにいえば、鞭打ちという身体刑を定める規定がある点も共通しています。
<有罪になれば死刑が科される罪>
■一定量以上の薬物の[取引]
たとえば・あへん1200g以上、ヘロイン15g以上、コカイン30g以上、大麻500g以上、大麻樹脂200g以上、メタンフェタミン250g以上など
■以下の薬物の[製造]
 たとえばモルヒネ、ヘロイン、コカイン、メタンフェタミンなど
■一定量以上の薬物の[輸出入]
たとえば・あへん1200g以上、ヘロイン15g以上、コカイン30g以上、大麻500g以上、大麻樹脂200g以上、メタンフェタミン250g以上など
<推定規定>
この法律の第3部には、広範な推定規定が含まれています。
まず17条は[取引]に関する推定規定で、一定量以上の薬物を所持していた場合、取引目的でないことが証明されない限り、取引の目的で所持したものと推定されると規定しています。基準となる量は、たとえば、あへん100g、ヘロイン2g、大麻15g、大麻樹脂10g、コカイン3g、メタンフェタミン25g、ケタミン113gなど。
18条は、所持していた薬物の認識に関する推定で、反証がない限り規制薬物であると認識していたと推定されます。19条は所有物に関する推定。20条は航空機や船舶の内部で発見された薬物と、機長、船長の責任に関する推定。21条は自動車内で発見された薬物と自動車の所有者の責任に関する推定、22条は尿検査で陽性となった場合は、反証がない限り、その当事者が規制薬物を使用したと推定されるという規定です。
こうした推定は、司法判断では珍しいものではないのですが、法律そのものに詳細多岐な推定規定を盛り込み、とくに17条の規定では、「一定量以上の薬物の所持」によって、死刑が適用される[取引]の目的が推定されるのですから、私たちの目には、大変厳しい条項に映ります。
[出典]
SINGAPORE STATUES ONLINE>MISUSE OF DRUGS ACT
http://statutes.agc.gov.sg/non_version/cgi-bin/cgi_retrieve.pl?actno=REVED-185

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