マレーシア続|薬物密輸と死刑の問題6

国際ハームリダクション協会The International Harm Reduction Association(IHRA)が最近発表した『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観 The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010』を読みながら、薬物犯罪と死刑の問題を考えています。
前回に引き続き、マレーシアの後編です。
[出典]
Patrick Gallahue and Rick Lines‘The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010’(2010) International Harm Reduction Association
http://www.ihra.net/Assets/2538/1/IHRA_DeathPenaltyReport2010.pdf

●薬物犯罪に対する死刑の執行はそれほど多くない
マレーシアは「薬物に厳しい政策」を内外に示しており、裁判では、薬物犯罪に対して多くの死刑が宣告されています。しかし、実際の死刑執行数は、それほど多いものではないとみられています。
本書はマレーシアを「薬物犯罪に対して死刑関与の高い国」に分類していますが、「マレーシアは、シンガポールと同じく、実際には『死刑関与の低い国』に属しているようだ。この国は、一般に、大量の死刑を執行しているとは思われていない。とはいえ、執行された人数は依然として公表されておらず、また、薬物犯罪に対する死刑宣告は増加しているようだと報告されている(29頁)。」と分析しています。
本書によれば、近年では、マレーシアでの死刑執行数は比較的少数であり、1975年から2005年の間では、薬物「取引」罪で死刑を執行された人数は、推定で229人とされています。

●薬物犯罪に対する死刑宣告は多い
前回でまとめたように、マレーシアでは薬物の製造、輸出入、大量の売買など重大犯罪に対して、1952年の危険薬物法39Bが適用され、有罪となった場合には必ず死刑が言い渡されます。マレーシアの裁判所では、重大な薬物犯罪者に対して死刑が宣告されることは珍しくないのです。本書は「たとえば、2008年では、薬物取引罪で死刑が宣告されたケースが少なくとも22例あったと新聞が報じている(29頁)。」といい、そのうち7人はインドネシア、フィリピンなどの外国人であったとしています。
2009年には、薬物犯罪で死刑を宣告されたケースは倍増し、50例になっています。

●2009年には約3000人が危険薬物取引罪で逮捕された
本書は、最近のマレーシアの薬物犯罪状況を説明するために、同国の英文ニュースサイトの最近の記事を引用しているので、その記事を私も読んでみました。2010年3月25日付の「薬物に対する全面的な戦い」と題する記事が、麻薬犯罪捜査部門(NCID)の発表に基づいて、最近の薬物密輸犯罪の動向について報じています。その概要を以下に簡単にまとめます。
・薬物密輸罪に対して死刑を定めている1952年の危険薬物法の39B(前回の記事を参照)を適用する事案は、逮捕数でいうと、2007年には2080人、2008年には2572人、2009年には2955人と増加している。
・2008年以降本年2月末までの間で、逮捕者のおよそ40%に当る1933人が起訴された。
・マレーシアで最も広く使用されている薬物はヘロインだが、近年ではシャブ(メタンフェタミンの呼び名)、ケタミンやエクスタシーといったデザイナー・ドラッグも広まっている。
[出典]the Star online>All out war against drugs(March 25, 2010)
http://thestar.com.my/metro/story.asp?file=/2010/3/25/central/5927048&sec=central

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