マレーシア|薬物密輸と死刑の問題5

国際ハームリダクション協会The International Harm Reduction Association(IHRA)が最近発表した『薬物犯罪に対する死刑:2010世界の概観 The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010』を読みながら、薬物犯罪と死刑の問題を考えています。
薬物犯罪に対して死刑を定めている国は、現在32か国。本書は、この32か国を「象徴としての死刑存置国」、「死刑関与の低い国」、「死刑関与の高い国」の3つのカテゴリーに分類し、考察しています。
[出典]
Patrick Gallahue and Rick Lines‘The Death Penalty for Drug Offences:Global Overview 2010’(2010) International Harm Reduction Association
http://www.ihra.net/Assets/2538/1/IHRA_DeathPenaltyReport2010.pdf

●薬物犯罪に対して死刑関与の高い国
さて、いよいよ「死刑関与の高い国」です。本書がこのカテゴリーに分類するのは、現に死刑の宣告が高頻度で行われており、また、その執行が定期的に行われている6か国です。世界の約190の国と地域のうち、薬物犯罪に対して高頻度で死刑を執行しているのは、わずか6か国だけなのに、前述したように、公表されない数字も含めると、年間1000人ほどが薬物の密輸や売買などの罪で死刑を執行されているのです。しかも、そのすべてがアジアに位置し、とくに東南アジアから東アジアに集中しています。
・ 中国
・ イラン
・ サウジアラビア
・ ベトナム
・ シンガポール
・ マレーシア

●麻薬を厳しく取り締まるマレーシア
マレーシアは、シンガポールとともに、「薬物に厳しい政策」を内外に示し、自国民だけでなく、外国人に対しても厳しい取締りを実施しています。マレーシアでの薬物犯罪取り締まりに関して、日本の現地大使館のサイトには、次のような注意情報が掲載されています。

<在マレーシア日本国大使館の情報>
「マレーシアの麻薬規制は非常に厳しく、外国人も例外ではありません。
危険薬物法(Dangerous Drugs Act 1952)によれば、麻薬等の危険薬物の違法売買は死刑であり、所持は最高で無期懲役の重刑が科せられます。また、一定量以上の薬物、例えばヘロインであれば15g以上、大麻であれば200g以上を所持していた場合は、違法売買の目的があったと見なされ死刑が科される場合もある。麻薬関係違反者は、外国人といえども厳しく処罰されており、「外国人旅行者だから少しぐらいは大丈夫だろう」などという甘い考えは絶対に通用しません。
麻薬防止のため出入国カード、空港、警察署、病院など至るところに“DADAH DEATH”(麻薬=死)の表示を行い、また、テレビ放映等でもその恐ろしさを訴えています。
麻薬犯罪に巻き込まれないための注意点は次の通りです。
・出国の際等、知らない人から小包を持って行って欲しいとの依頼を受けた場合はこれを拒否する。
・警察が摘発のための捜査を行う場合は、とりあえず現場にいる人を一網打尽にするので、路地裏等麻薬取引が行われている可能性が高い場所に行かない。
・自動車に麻薬を積んでいる場合もあるので、事情を知らずに同乗し、一緒に検拳されることのないよう、ヒッチ・ハイク等はしない。」(在マレーシア日本国大使館)
http://www.my.emb-japan.go.jp/Japanese/guide/5.html

<薬物犯罪に関する法制度>
●1952年の危険薬物法
マレーシアで不法薬物を取り締まっているのは、1952年の危険薬物法DANGEROUS DRUGS ACT 1952です。この法律は、第一スケジュールの1部から5部に掲げられている薬物を「危険薬物」として規制していますが、そこには生あへんやコカ葉(第1部)、大麻(第2部)ヘロイン、コカイン、覚せい剤から、わが国では向精神薬に分類されているもの(第3部)まで含まれています。
薬物の量による刑の加重や、一定量以上(コカイン15g、大麻50g、メタンフェタミン30gなど)の薬物で有罪となった場合に、10回以下の鞭打ちといった身体刑の規定もみられます(39A(2))。
●輸出入や取引罪に対する罰則
この法律で最も重い処罰を定めているのは薬物の「取引」に関する違反ですが、許可なく行われる、製造、輸入、輸出、保管、隠匿、買い受け、譲り渡し、無償譲渡、譲り受け、貯蔵、運搬、輸送、配達、調達、供給、分配などが、ここでいう「取引」に含まれます(2「用語」)。また薬物の取引とともに、取引の申し出、その予備行為などが処罰対象とされます(39B(2))。
ここで規定する「取引」の罪で有罪となった場合には、言い渡される刑は死刑に限定されています(39B(2))。
●推定規定
この法律には、一定量(たとえばヘロイン15g、大麻200g、コカイン40g、メタンフェタミン50g)以上の危険薬物を許可なく所持した場合、反証がされない限り、「取引」のためとされる、という推定規定があります(37(da))。
[参照]
DANGEROUS DRUGS ACT 1952
Attorney-General’S chambers>LAWS OF MALAYSIA Act 234
http://www.agc.gov.my/agc/Akta/Vol.%205/Act%20234.pdf

マレーシアの死刑の状況は次回へ

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この記事へのコメント

シンジケート
2010年05月25日 10:02
だからマレーシアって旅人に嫌われてるよね。
東南アジアで悪魔のナンシー・レーガンって嫌悪されてる。
自分の娘がヘロイン中毒だからって・・・・・

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