中国と覚せい剤問題2|国連薬物犯罪事務所の資料から

前回に引き続き、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した『東南アジア、東アジア(および周辺地域)におけるATSの動向とパターン2009』から「地域別の概況Regional Overviews 」の中国に関する記事を参照しながら、中国の覚せい剤問題を概観してみましょう。該当部分は、同書の54~58ページです。
[出典]
2009 Patterns and Trends of ATS
http://www.unodc.org/documents/eastasiaandpacific//2009/11/ats-report/2009_Patterns_and_Trends.pdf

●新しいタイプの薬物
近年出回っている液体状の薬物で、「幸せの水」と呼ばれているものがあるそうです。その内容は、メタンフェタミン、アンフェタミン、ケタミンを混合した液体。「妖精の水」という名の薬物には、MDMA、ニメタゼパム、コデインなどが含まれていました。私は国連資料の英語版を参照してこの記事を書いているために、残念ながら漢字の表記がわかりません。
なお、この資料が取り上げている主な薬物の中国での俗称を、資料の表記のままで紹介します。このように多くの合成麻薬が中国風の名前で呼ばれていることは、現在の中国で多様な薬物が出回っている現状を示しているのでしょう。
・結晶状メタンフェタミン……Fei zai / halcyon
・錠剤型メタンフェタミン……Ma gu, Ma guo (北京語)  Ma ku (広東語)
・エクスタシー(MDMA)……Yao tou wan
・ケタミン……K fen (北京語)  K chai (広東語)
・フェンシクリジン……Kai xin fo (Angel dust)
・GHB……G shui
・メタカロン・エフェドリン混合錠剤……Hu yu yu
・2C‐B……Kai xin fo

●ケタミンの乱用拡大
2003年ころから中国で急速に乱用が拡大している合成薬物のひとつがケタミンで、大量押収が相次いだ2008年には、ケタミンの押収量はヘロインを上回りました。2009年6月には広東省で400キログラムのケタミンと2.2トンの前駆物質が押収されました。

●合成薬物の密造工場
中国政府の発表によると、密造所の押収・解体が増加しており、2007年には130か所、2008年には244か所が解体されたということです。2008年に広東省で押収・解体された密造工場では1,700リットルの液体メタンフェタミンが押収されましたが、4000平方メートルの広さの工場は、化学品及び塗料の工場を装い、営業許可もとって操業していました。
合成薬物の原料として使われる前駆物質の大量押収も続いています。2008年では、前駆物質の密輸と不法取引170件が摘発され、288人が逮捕され、1,113トンが押収されました。覚せい剤の原料として使われるプソイドエフェドリンや、ケタミンの原料として使われるヒドロキシルアミン塩酸塩などの大量押収が報告されています。
メタンフェタミンなどの合成薬物の密造施設は、従来は広東省、福建省など南東地域に集中していましたが、現在では、中国中央地域での摘発も増加しています。

●トリートメント
中国には、薬物トリートメント施設として、540の公営の強制薬物治療センターと、168の労働矯正施設があります。2008年には、26万4000人が、これらの施設に収容されて、強制治療、労働再教育などを受けました。
トリートメント施設に収容された人の大半は、ヘロイン使用によるもので、施設を出所して1ヶ月以内の再使用率は54.8%と報告されています。
当局では、メタンフェタミンなどのATS依存に対処するために、専門知識と治療スタッフがさらに必要になるとしています。

●世界最大級のATS市場への監視
中国は、薬物犯罪に関する統計データの詳細が公表されていませんが、おそらくメタンフェタミンなどの合成薬物の消費市場として、中国は世界でも最大級の規模に達していると思われます。この市場の動向を監視することは、事実上、世界の動向を知ることにつながると、報告書はまとめています。

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