医薬品等の個人輸入について1
最近、精神作用のある薬品やいわゆる合法ドラッグを外国から個人輸入する人が増え、また、個人輸入を代行するという輸入代行業を行う例が増えていることが、私には気になっています。
向精神薬は、資格のない人が輸入することは禁じられていますが、疾病の治療のために処方されている患者が一定量以内を携行する場合など、一定の条件を満たせば、外国から輸入することが認められているという事情があります。また、一般の医薬品については、個人が自分で使用する目的で輸入する場合は、一定量以内の個人輸入を認められています。
ヘロインやコカインなどの麻薬と比べて、たしかに、向精神薬の個人輸入や輸入代行については、わかりにくいところがあるため、個人輸入することに問題はないと考えてしまう人もあるようです。しかし、時折、向精神薬を個人輸入したり、輸入代行として輸入しようとして検挙されたというニュースが流れます。ごく最近も、リタリンを輸入しようとした男性が逮捕されたという報道がありました。
いったい、何が禁止されているのか、どんな行為が処罰されるのか、しっかり考えてみたいと思います。
<最近のニュースから>
●「リタリン」密輸容疑で男逮捕 京都府警
向精神薬「リタリン」600錠を営利目的で密輸したとして、京都府警組対3課と南署は7日、麻薬取締法違反の疑いで、京都市南区久世大築町、会社員を逮捕した。
南署によると、容疑者あての郵便物がパキスタンや米国など複数の国を経由しており、不審に思った大阪税関が千葉県の成田国際空港から大阪府の関西国際空港に届いた際に開封し、発覚した。南署の説明では、容疑者はインターネットで客を集め、1~2月に少なくとも男女3人に1錠800~950円で計220錠を売ったという。
逮捕容疑は、1月22日、他人に販売するため、リタリン600錠をネットを通じて米国から成田国際空港へ密輸した疑い。リタリンは「合法覚せい剤」などと呼ばれ、若者を中心に乱用が問題になっている。 .
4月7日22時59分配信 京都新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100407-00000035-kyt-l26
●そもそも、なぜリタリンの輸入が問題なのか
リタリンは、ナルコレプシーの治療に用いられる薬品で、向精神薬に指定されています。
麻薬及び向精神薬取締法は、向精神薬輸入業者や向精神薬試験研究施設設置者などあらかじめ届け出て許可を受けた人以外が向精神薬を輸入することを禁じ、違反者には罰則を定めていますから、向精神薬輸入業者などの資格を持たない人が、向精神薬であるリタリンを輸入することは、麻薬及び向精神薬取締法に違反する行為です。輸入罪に対する罰則は5年以下の懲役、営利目的での輸入に対しては7年以下の懲役(200万円以下の罰金併科あり)とされています。
こう説明すると、とてもシンプルなのですが、実際には、向精神薬の輸入禁止についてわかりにくいと感じる人が多く、また、個人的な輸入なら禁止されないと思い違いをしている人が多いのは、例外規定があるからでしょう。
●例外として認められる治療用の向精神薬
麻薬及び向精神薬取締法は、病気の治療のために向精神薬の処方を受けている患者が入国する際に自分で持ち込むものについては、例外として禁止を除外し、輸入を認めています。
これは、医療用麻薬等の携帯による輸入(輸出)とされているもので、具体的な規定は、「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」に示されているので、そのポイントを拾い出してみましょう。
・含まれる成分の総量が一定量以下であれば(注射剤以外の場合)、特段の手続きは不要とされています。ちなみに、リタリンの場合は、1.8グラム以下なら手続きは不要です。
・規定量を超えて携帯する場合は、処方せんの写し、患者の氏名及び住所並びに携帯を必要とする向精神薬の品名及び数量を記載した医師の証明書などの書類を所持するよう求められています。
・必ず患者本人が携帯して輸入することとされ、郵便などによる輸入(輸出)や、知人等に託して向精神薬を輸入(輸出)することはできないとされています。
[参照]
「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」
厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部>許認可申請手続>麻薬の携帯輸出入許可申請について http://www.nco.go.jp/dl_data/keitai/keitai_tebiki.pdf
●治療用向精神薬の携帯輸入の条件を満たす場合を除いて、資格のない人が向精神薬を輸入すれば、麻薬及び向精神薬取締法違反に当ることになります。
なお、厚生労働省のサイトに、医薬品等の個人輸入に関する注意がいくつか掲載されているので、参照してください。
・医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/index.html
・医薬品等の個人輸入について
http://www.mhlw.go.jp/topics/0104/tp0401-1.html
向精神薬は、資格のない人が輸入することは禁じられていますが、疾病の治療のために処方されている患者が一定量以内を携行する場合など、一定の条件を満たせば、外国から輸入することが認められているという事情があります。また、一般の医薬品については、個人が自分で使用する目的で輸入する場合は、一定量以内の個人輸入を認められています。
ヘロインやコカインなどの麻薬と比べて、たしかに、向精神薬の個人輸入や輸入代行については、わかりにくいところがあるため、個人輸入することに問題はないと考えてしまう人もあるようです。しかし、時折、向精神薬を個人輸入したり、輸入代行として輸入しようとして検挙されたというニュースが流れます。ごく最近も、リタリンを輸入しようとした男性が逮捕されたという報道がありました。
いったい、何が禁止されているのか、どんな行為が処罰されるのか、しっかり考えてみたいと思います。
<最近のニュースから>
●「リタリン」密輸容疑で男逮捕 京都府警
向精神薬「リタリン」600錠を営利目的で密輸したとして、京都府警組対3課と南署は7日、麻薬取締法違反の疑いで、京都市南区久世大築町、会社員を逮捕した。
南署によると、容疑者あての郵便物がパキスタンや米国など複数の国を経由しており、不審に思った大阪税関が千葉県の成田国際空港から大阪府の関西国際空港に届いた際に開封し、発覚した。南署の説明では、容疑者はインターネットで客を集め、1~2月に少なくとも男女3人に1錠800~950円で計220錠を売ったという。
逮捕容疑は、1月22日、他人に販売するため、リタリン600錠をネットを通じて米国から成田国際空港へ密輸した疑い。リタリンは「合法覚せい剤」などと呼ばれ、若者を中心に乱用が問題になっている。 .
4月7日22時59分配信 京都新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100407-00000035-kyt-l26
●そもそも、なぜリタリンの輸入が問題なのか
リタリンは、ナルコレプシーの治療に用いられる薬品で、向精神薬に指定されています。
麻薬及び向精神薬取締法は、向精神薬輸入業者や向精神薬試験研究施設設置者などあらかじめ届け出て許可を受けた人以外が向精神薬を輸入することを禁じ、違反者には罰則を定めていますから、向精神薬輸入業者などの資格を持たない人が、向精神薬であるリタリンを輸入することは、麻薬及び向精神薬取締法に違反する行為です。輸入罪に対する罰則は5年以下の懲役、営利目的での輸入に対しては7年以下の懲役(200万円以下の罰金併科あり)とされています。
こう説明すると、とてもシンプルなのですが、実際には、向精神薬の輸入禁止についてわかりにくいと感じる人が多く、また、個人的な輸入なら禁止されないと思い違いをしている人が多いのは、例外規定があるからでしょう。
●例外として認められる治療用の向精神薬
麻薬及び向精神薬取締法は、病気の治療のために向精神薬の処方を受けている患者が入国する際に自分で持ち込むものについては、例外として禁止を除外し、輸入を認めています。
これは、医療用麻薬等の携帯による輸入(輸出)とされているもので、具体的な規定は、「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」に示されているので、そのポイントを拾い出してみましょう。
・含まれる成分の総量が一定量以下であれば(注射剤以外の場合)、特段の手続きは不要とされています。ちなみに、リタリンの場合は、1.8グラム以下なら手続きは不要です。
・規定量を超えて携帯する場合は、処方せんの写し、患者の氏名及び住所並びに携帯を必要とする向精神薬の品名及び数量を記載した医師の証明書などの書類を所持するよう求められています。
・必ず患者本人が携帯して輸入することとされ、郵便などによる輸入(輸出)や、知人等に託して向精神薬を輸入(輸出)することはできないとされています。
[参照]
「携帯による医療用麻薬等の輸入・輸出手続きに関する手引き」
厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部>許認可申請手続>麻薬の携帯輸出入許可申請について http://www.nco.go.jp/dl_data/keitai/keitai_tebiki.pdf
●治療用向精神薬の携帯輸入の条件を満たす場合を除いて、資格のない人が向精神薬を輸入すれば、麻薬及び向精神薬取締法違反に当ることになります。
なお、厚生労働省のサイトに、医薬品等の個人輸入に関する注意がいくつか掲載されているので、参照してください。
・医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/index.html
・医薬品等の個人輸入について
http://www.mhlw.go.jp/topics/0104/tp0401-1.html
この記事へのコメント
正直なところ、(以前も書かせていただきましたが)疾病治療のためどうしても必要な向精神薬があり、日本国内では規制のため処方されず、さもなければサプリメントのような効能が曖昧なものに頼るか、あるいは遵法(治療のため必要である以上、違法でも脱法でもないと思いますので)ドラッグのたぐいに頼るかという差し迫った状況で、どちらもダメなら一日中ひどい抑うつ状態で廃人同然となってしまう、という厳しい現実があります。(明らかにシロである方法としては、バンコクに出向き、現地でメチルフェニデート錠をリタリンなら180錠、コンサータ(18mg)なら100錠以内の範囲で買い、税関申告の際に麻向法施行規則の該当条文を提示することで合法的な輸入であることを証明する、という方法でしょうけど、現時点では外国に出られるほどの力もなく…。
法律の素人であるわたしが読んだ限りでは、薬事法はかなり解釈に含みを持たせ、麻向法は厳格という印象ですが、税関のデータを見る限り、実際に向精神薬が無許可輸入で摘発されている例がほぼ1000錠を境に分かれ、しかも毎年1桁(成田は0~2件)という現状を見ると、明らかに本人の治療目的のものについては、麻向法の保護法益(薬物濫用による保健衛生上の危害の防止)を侵害しない以上、携帯輸入に準ずる扱いをしている、という解釈ができそうに思えるのです。
わたしが知っているだけでも2桁は輸入の例があるはずなので、全部杓子定規に「違法と書いてあるから違法」とはしていないのですよね?
このあたりはデリケートなので、直接相談をしたいのですが、小森先生はお忙しくて不可能でしょうか?
病院も薬局も駄目。
日本の精神科医の手紙も持っていっても駄目でした。
どうやってバンコクで手に入れるのでしょう?
合法の薬物よりも非合法の薬物のほうが容易く手に入る。
(もちろん、有料でという意味です)
何枚も作らないといけないので、もし誤りがあっては大変ですので、今後は弁護士さんのチェックを受けたいと思っております。
蛇足ですが、「2ヶ月分」といった数字に法的根拠はあるのでしょうか。
向精神薬の携帯輸入制限量は政令にはっきり記載されていましたが、この2ヶ月分という数字は厚労省と税関の「内々規」でしか見つけられませんでした。
とすると、これは「曖昧な規制で人民の健康に生きる権利を侵している」ことになりますから、曖昧故に無効の法理が成立する余地はないのでしょうか。
専門的な立場からのご回答をお願いします。