錠剤型薬物の傾向2008|アメリカの情報から

アメリカ合衆国の麻薬取締局Drug Enforcement Administration (DEA)の発行する分析情報誌「マイクログラム・ブリティン」には、アメリカ各地で押収された薬物の分析結果が頻繁に掲載されています。この情報誌は、新傾向の薬物や、警戒すべき兆候などをいち早く知るための貴重な情報源です。DEAのホームページに随時掲載され、つい先日、2009年12月号が掲載されました。
ところで、その2009年12月号の巻末に、この情報誌が2009年中に取り上げた薬物名のインデックスが載っていました。これは、アメリカの薬物のトレンドを把握する貴重な資料だと思います。一覧して気づくのは、薬物が多様化していることで、多様な合成麻薬が登場していることが気になります。
とくに、エクスタシー風の錠剤に含まれる薬物が多様化しています。エクスタシーの成分といえばMDMAやその類似薬物のMDA、MDEAが代表的ですが、最近では、外見は同じように見える錠剤でも、そこに配合された薬物が実に多様になってきているのです。
「マイクログラム・ブリティン」にみる、錠剤型薬物の新傾向2009年版を簡単にまとめてみましょう。
DEAのホームページhttp://www.justice.gov/dea/index.htm
マイクログラム・ブリティンの目次
http://www.justice.gov/dea/programs/forensicsci/microgram/bulletins_index.html

●MDMAと他の薬物の混合錠剤
たとえば2009年中に報告されたMDMA混合錠剤の内容は次のようなものです
・MDMA(麻薬)+メタンフェタミン(覚せい剤)+ケタミン(麻薬)
・MDMA(麻薬)+BZP(麻薬)+プロカイン(麻酔薬)
・MDMA(麻薬)+メタンフェタミン(覚せい剤)+コカイン(麻薬)
・MDMA(麻薬)+BZP(麻薬)+TFMPP(麻薬)+プロカイン(麻酔薬)+カフェイン
2008年中にマイクログラム・ブリティンは、28例のMDMA錠剤の記事を取り上げています。もちろん、アメリカではMDMAを含む錠剤の乱用は依然として多く、多数の錠剤が押収されていますが、同誌が記事として取り上げるのは、何か新しい要素があるものに限られるので、同誌に掲載される記事はそれほど多くはありません。
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↑MDMA混合錠剤の例(MDMA+メタンフェタミン+カフェイン)
マイクログラム・ブリティン2009年4月号より
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↑MDMA混合錠剤の例(MDMA+BZP+TFMPP+プロカイン+カフェイン)
マイクログラム・ブリティン2009年8月号より

●増えているピペラジン誘導体の錠剤
BZP(ベンジルピペラジン)に代表されるピペラジン誘導体も、錠剤型ドラッグの成分としてよく使われています。MDMAとはまったく違う化学構造をもつ薬物ですが、アンフェタミンとよく似た中枢神経興奮作用があり(メタンフェタミンの作用とは異なるといわれる)、薬理作用には、アンフェタミンと共通するものが多くみられます。
マイクログラム・ブリティンが2009年に取り上げたピペラジン誘導体は、掲載回数の多い順にあげると
①BZP  1-ベンジルピペラジン(麻薬)
エクスタシー風の錠剤ドラッグの成分として、よくみかけるものです。近年では、BZPと下記のTFMPPとの混合錠剤が増え、また、MDMAとの混合錠剤もみつかっています。BZPやその類似薬物を主成分とした錠剤は、近年ヨーロッパを中心に乱用が広まっていて、アメリカでの押収例も増えています。
2009年中にマイクログラム・ブリティンは、28例のBZP配合錠剤の記事を取り上げています。
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↑BZP錠剤の例(BZP+カフェインを含有)
マイクログラム・ブリティン2009年5月号より

②TFMPP  1-(3-トリフルオロメチルフェニル)ピペラジン(麻薬)
前述したように、BZPとの混合で錠剤型ドラッグの成分として使われることの多い麻薬です。この2種を配合すると、MDMAによく似た作用感をえられるというので、エクスタシー風の錠剤型ドラッグのひとつの類型になっています。
錠剤の外見は、MDMAを含むいわゆるエクスタシーと類似していて、多様な色、形があり、表面にロゴが刻印されているのが普通です。最近では、キャラクターを形どった新型の錠剤も押収されています。
2009年中にマイクログラム・ブリティンが取り上げたTFMPPを含む錠剤の報告は、26例。
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↑BZP+TFMPP錠剤の例(BZP、TFMPP、MDMA、カフェインなどを含有)
マイクログラム・ブリティン2009年8月号より

③3CPP  1-(3-クロロフェニル)ピペラジン(麻薬)
日本では3CPPの通称で呼ばれていますが、英語圏ではmCPP(meta-Chlorophenylpiperazineの略称)と呼ばれることが多いようです。これも、エクスタシー風の錠剤に配合されている例が報告されています。
この薬物はアメリカではまだ少ないようで、2009年中にマイクログラム・ブリティンが取り上げたmCPP を含む錠剤の報告は4例でした。

***
2月7日加筆
3CCPを含む錠剤型の薬物、たしかヨーロッパでは頻繁に出回っているという報告がどこかにあったような気がします。後日、もう少し調べて、さらに加筆するつもりです。

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この記事へのコメント

ノマトリ
2010年02月04日 16:17
複数の違法な成分が含まれている場合
罪数処理はどうなっているのでしょうか?
併合罪でしょうか?観念的競合?
小森 榮
2010年02月05日 09:24
一錠のエクスタシーの中に覚せい剤とMDMAが入っていたような場合には、一個の行為が二個以上の罪名に触れることになるので、覚せい剤取締法違反と麻薬及び向精神薬取締法違反の観念的競合(刑法54条1項前段)になります。ただし、故意の問題が出てくる可能性はありますが。
野中
2010年02月06日 03:25
食べたことなーい☆美味しいのかな(笑)。

日本国憲法 第一章 改正案

第一章 大麻

第一条 大麻は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
http://cannabispolicy.org


野中
2010年02月06日 14:20
"【10月30日 AFP】アルコールとタバコは、大麻、LSD、エクスタシーといった違法薬物よりも危険である――。薬物乱用に関する英政府諮問委員会の委員長をつとめる大学教授が29日、このような見解を示した。"

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2657928/4829483

ということは、お酒を飲むぐらいだったらmdmaを摂取した方が、健康の観点からみれば”まし”ってこと?
野中
2010年02月06日 14:22
だけど、非合法のエクスタシーには何が含まれてるか分からないので危険ですよね。

じゃあ、お酒はどうなのかなあ??
野中
2010年02月06日 14:23
いずれにしろ開かれた議論が必要であることはいうまでもありません。
チャンドラ(本物)
2010年02月10日 13:35
小森先生
いつも興味深くブログ拝見させていただいております。

上のチャンドラさんは本人ではありませんので
お手数ですがコメントの削除をお願いいたします。

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