2009年の薬物情勢2|警察庁の資料から

警察庁が毎年発表している薬物・銃器情勢の平成21年版が、発表されたので、これに基づいて2009年の薬物犯罪の状況を整理しておきましょう。
[参照]
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成2 1年中の薬物・銃器情勢 暫定値』
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/h21_jyousei_yakuzyuu_zantei.pdf

●覚せい剤乱用者は固定化しているのか
覚せい剤での検挙者は、2001(平成13)年ころから減少しています。1995(平成7)年ころには2万人に迫っていた検挙者が、2009年では11,688人、前年に比べて500人ほど増加したとはいえ、やはり長期的な減少トレンドのなかにあるといってよいでしょう。
近年、覚せい剤での検挙者には、縮小と同時に固定化していることを示す兆候があらわれているように思います。つまり、同じ人が繰り返して検挙され、次第に高年齢化していると考えられるのです。
実際、私が国選弁護人として担当する事件では、近年、被告人の年齢が40歳代や50歳代、覚せい剤で受刑した経験を持つ人たちのケースが増えています。平成初頭のころ、バブル景気に浮かれた深夜の街で、ちょっとした好奇心から覚せい剤を使って盛り上がっていた若者たちの姿が、今ではほとんど見られません。
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↑覚せい剤検挙者の推移(1951~2008年)
『平成21年版犯罪白書』110頁より転載

●検挙者の過半数が再犯者
初犯者の割合がじわじわと減少し続け、2009年では41.9%となりました。検挙者の過半数が再犯者で占められていることになります。大麻事犯と比較してみると、その違いは明らかで、2009年では、大麻での検挙者の84.8%を初犯者が占めています。
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↑覚せい剤検挙者中の初犯者の割合(2004~2009年)
グラフは警察庁発表のデータに基づいて、私が数字を抽出し、グラフ化したものです。

●高年齢化している覚せい剤検挙者
まず目を引くのが、少年と20歳代の検挙者が年を追って減少していることです。一般的に、10代後半から20代前半までの時期に薬物を乱用し始める例が多いのですが、その年代の検挙者が減っていることは、新たに覚せい剤乱用に参加する青少年が少ないことを反映していると思われます。
いっぽう、増減しながらも、検挙者の中心を占め続けているのが30歳代、40歳代の人たちです。2009年では、検挙者のうち30歳代が占める割合が37.0%、40歳代が26.4%、合計で63.4%となっています。50歳以上の人たちが14.0%いることも見逃せません。
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↑覚せい剤検挙者・年齢層別(2004~2009年)
グラフは警察庁発表のデータに基づいて、私が数字を抽出し、グラフ化したものです。

●暴力団構成員が半数以上
ここ数年、覚せい剤での検挙者の半数以上が暴力団関係者で占められている状態が続いています。2001年ころ、覚せい剤での検挙者が減少し始めるとともに、検挙者中の暴力団構成員等の比率がじわじわと上昇し始め、2005年に50%を超えました。
これは、暴力団と関係のない人が覚せい剤から離れていくのに対し、覚せい剤と密接に関係した生活を送る暴力団構成員等は、覚せい剤と縁を切ることが難しく、繰り返して検挙されている実態を反映していると思われます。

現在、警察で薬物犯罪の取締を担当しているのは、刑事局、組織犯罪対策部のなかの薬物銃器対策課ですが、暴力団対策課も同じ組織犯罪対策部に所属しています。薬物問題への取り組みにおいて、薬物犯罪組織に対する取り締まりを重要課題として位置づけている、警察の基本姿勢がここにあらわれているのだと思います。
わが国で、薬物犯罪組織といえば、まず、覚せい剤などの密輸から密売までを組織的に行う暴力団組織があげられます。昭和50年代に急増した覚せい剤乱用の背景には、折から勢力を拡大しつつあった暴力団が、重要な資金源として覚せい剤の密輸、密売に関与するようになり、覚せい剤の供給が増加したことがあげられます。それ以来、覚せい剤と暴力団の関係は連綿と続いているわけです。

毎年発表される薬物・銃器情勢の資料でも、薬物犯罪組織について取り上げています。『平成2 1年中の薬物・銃器情勢 暫定値』では、第3 薬物犯罪組織の動向として(18~21頁)、暴力団構成員等に対する取り締まり状況などをまとめています。
2009年では、暴力団構成員等の検挙者は、覚せい剤検挙者の半分以上(53.2%)、大麻検挙者の約3分の1(29.7%)を占めています。

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