中高生の薬物実態調査、日米の比較|モニタリング・ザ・フューチャー調査2009

日本の中高生に当たるアメリカの生徒を対象にしたモニタリング・ザ・フューチャーの2009年調査について、続けます。
前回は、大麻など法律で禁止されている薬物を中心に、アメリカの中高生の乱用実態や意識をみてきました。高校生のおよそ半分が、卒業までに大麻などの薬物使用を経験しているアメリカの現状をみると、日本とは大きく違うことをあらためて認識させられます。

日本では、中学生に関して、国立精神・神経センタ-精神保健研究所薬物依存研究部による「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査」として、薬物乱用の実態と意識を探る調査が継続的に行われていて、調査の規模や調査手法などからみて、モニタリング・ザ・フューチャー調査と比較可能なデータがあります。
日本の中学生にもっとも乱用が広がったのは、シンナー等有機溶剤です。近年は沈静化していますが、昭和50~60年代のピーク時にはまさに疫学的な乱用の拡大がみられました。その状況は、米国の中高生に大麻が広まっている状況と重ね合わせることができそうです。

米国の第8学年(日本の中学2年)における大麻の乱用状況と、日本の中学生のシンナー乱用状況を見比べて、日米の中学生の薬物乱用の共通点と、異なる点を考えてみます。これは、少し乱暴な比較の仕方かもしれませんが、日本と米国の同年代の少年における薬物乱用問題を対比して考える、ひとつのヒントになると思います。
対比したのは、以下のとおりです。

[日本]「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2008年)」から、中学2年生の「シンナー遊びを実際に見たことがある」と回答した率。日本では薬物乱用に対する取り締まりが大変厳しく、対象者の回答にも影響を及ぼしていると予測されるため、より実態を反映する項目として、「シンナー遊びを実際に見たことがあるか」などの質問が用意されているので、この項目を取り出しました。
(出典)和田清ほか「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2008年)」16頁
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/research-JHS.pdf

[米国]モニタリング・ザ・フューチャー調査2009の報道発表資料から、第8学年の「各種薬物使用の生涯経験率・大麻」の数字を取り出しました。
(出典)New 2009 Press Release "Teen marijuana use tilts up, while some drugs decline in use." 第1表  http://monitoringthefuture.org/data/09data.html#2009data-drugs

1980年代、米国では大麻、日本ではシンナー、少年の薬物乱用がピークに達しました。
ただし、この時期に関して、直接比較可能なデータはなく、中学生に関して比較可能な数字があるのは、1990年代からです。米国のモニタリング・ザ・フューチャー調査は1991年から第8学年を調査対象に加え、日本の全国中学生意識・実態調査は1996年に第1回調査を行いました。
<1996年>
日本の中学2年生の12.3%が、「シンナー遊びを実際に見たことがある」と回答した。
米国の第8学年の23.1%が、「大麻を使ったことがある」と回答した。
<2000年>
日本のシンナー乱用は減少し始め、「見たことがある」中学2年生は8.1%。
米国の第8学年では「大麻を使ったことがある」のは20.3%。
<2008年>
日本では「見たことがある」中学2年生は2.8%にまで減少した。
米国では第8学年の「大麻を使ったことがある」割合は14.6%と依然として高水準。

同じ時期の日本の中学生の大麻乱用状況は、ごく限られたものだと考えられます。
「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2008年)」は、中学生の大麻乱用経験についても調査していますが、「大麻及び覚せい剤の乱用経験率は、調査結果上、これまで同様に『経験あり』よりは『無回答』の方が数字が大きいため、参考データとした方が妥当と思われる」としています。実際に、乱用がそれほど拡大していないことに加えて、前述したように、薬物に対する取り締まりが大変厳しいことが影響しているのかもしれません。
中学2年生の大麻の乱用経験率は、1996年0.5%、2000年0.5%、2008年0.3%。
(出典)和田清ほか「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2008年)」20頁
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/research-JHS.pdf

同じ時期に、米国ではコカイン、日本では覚せい剤乱用も顕著な拡大を示していました。
上と同じ考え方で、日本の中学2年生の覚せい剤使用と、米国の第8学年のコカイン使用を比較することができるとよいのですが、残念ながら日本の中学生に関しては、確実なデータがありません。ただし、他の調査データやその他の状況から考えて、下記の数字は実態とそれほど遊離していないと私は考えています。
おおまかには、日本でも米国でも、少年にとって第1位の乱用薬物(現在までのところ日本ではシンナー、米国では大麻)と、いわゆるハードな薬物との乱用度合いには、大きな差があるといえそうです。
[日本]中学生調査では、前項と同様に、覚せい剤の使用経験も「参考データ」とされています。中学2年生の覚せい剤の乱用経験率は、1996年0.3%、2000年0.4%、2008年0.3%。
(出典)和田清ほか「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(2008年)」20頁
[米国]モニタリング・ザ・フューチャー調査2009の報道発表資料から、第8学年の「各種薬物使用の生涯経験率・コカイン」の数字をみておきます。なおコカインはパウダーコカイン、クラック、その他のコカインと3分類になっていますが、もっとも数の多いパウダーコカインの項目を取り出すと、1996年4.6%、2000年4.5%、2008年3.0%。
(出典)New 2009 Press Release "Teen marijuana use tilts up, while some drugs decline in use."

以上からみると、中学2年生の年齢で比べた場合、日本と米国の少年の薬物乱用の状況は、程度に差はあるものの、同じような傾向を示し、同じ時期に同様の推移をしてきていることがわかります。
●日米ともに、1980年代に少年の薬物乱用が拡大した
●この時期から現在まで、少年にとって乱用第1位の薬物は日本ではシンナー、米国では大麻
●日本のシンナー乱用はその後顕著に減少したが、米国の大麻乱用は改善しているが依然として高水準
●同じ時期に、よりハードな薬物の使用も拡大しているが、少年の乱用状況は第1位薬物とは大きな差がある
米国と比較すれば、日本の中高生に、薬物乱用はそれほど蔓延していないことは事実です。しかし、実は、少し見方を変えて、タバコの軸で比較すると、また別な側面が見えてくるような気がしていますが、この点は次回に。

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