大麻だけは右肩上がり|平成21年版犯罪白書から2

『平成21年版犯罪白書』を読みながら、最近の薬物犯罪の動向をまとめてみます。参照、引用するのは次の部分です。
法務総合研究所編『平成21年版犯罪白書』/第3編・各種犯罪者の動向と処遇/第3章・薬物犯罪者(110-117頁)

覚せい剤事犯の検挙が減少しているのと対照的に、大麻事犯が増加しています。白書は「大麻取締法違反の検挙人員は,平成13年以降,顕著な増加傾向にあり,20年には,2,867人まで増加し,12年の約2.3倍であった。麻薬取締法違反についても,13年以降,増加傾向にある。(113頁)」と分析しています。
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(グラフは113頁より転載)

終戦後から今日まで、わが国の薬物問題の中心的な課題となってきたのは覚せい剤問題です。2008年では、薬物事犯検挙人員の約69%を覚せい剤事犯が占めています。しかし、覚せい剤事犯の検挙者は、近年、着実に減少しています。そして、それと対照的に増加傾向を示しているのが、大麻事犯の検挙者なのです。
とはいえ、薬物事犯の全検挙者のなかで、大麻事犯は約18%を占めているに過ぎないのですが、①顕著な増加傾向を示していること、②検挙者の大半が青少年層であること、③検挙者の85.5%が初犯であることなどから、この増加傾向には大きな意味が含まれていると私は考えています。(②、③については、下記の警察庁資料を参照)
犯罪白書は、大麻事犯の傾向についての分析を掲載していませんので、警察庁の資料からデータを補って、その傾向をみておきましょう。
参照したのは、警察庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成20年中の薬物・銃器情勢 確定値』です。

まず、年齢層について。覚せい剤事犯の検挙者と、大麻事犯を比較してみると、次のように、明確な違いが現れます。
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 (グラフは上記の警察庁資料に基づいて私が作成したもの)

上のグラフでわかるように、覚せい剤事犯と大麻事犯では、検挙人員の年齢層に大きな違いがみられます。10代、20代の青少年層の占める割合は、覚せい剤事犯では約25%、これに対して大麻事犯では約60%と高い割合を示しているのです。現在の大麻乱用問題は、青少年の問題であるといってよいでしょう。
一般に、若年者の割合が高いことは、乱用を新たに開始する人が多いことを反映していると考えられます。

次に、初犯者の割合を比較してみます。2008年の検挙人員中、初犯者が占める割合は
● 覚せい剤 43.9%
● 大麻   85.5%
この指標によると、さらに具体的に、大麻では新しく参入する乱用者が多いことがわかります。現在、わが国の大麻乱用は、かなりはっきりと増加トレンドを示していることになります。

さて、この増加トレンドを支えている要因として、青少年の間で大麻への好奇心が広まっていることが、よく指摘されますが、私はそれに加えて、最も重要なファクターとして、供給体制の変化をあげたいと考えています。
ひと昔前まで、大麻は東京など大都市でなければ入手しにくいものでした。それが、今では全国どこでも、薬物密売人が検挙されると、覚せい剤とともに大麻も押収されています。今や、大麻はどこででも入手できる状況になり、しかも末端での密売価格には目立った変化は生じていません。つまり、供給が増えているにもかかわらずそれを上回る需要があると推測されるわけです。
2001年ころ、わが国へ流入していた大量の覚せい剤が、洋上取引のルートが遮断され、また中国が薬物取引に対する取り締まりを強化したことなどから、急速に減少し始めました。扱う品物の不足に見舞われた薬物密売組織が、従来は積極的に扱わなかった大麻やMDMAなどを取り扱い始めたことから、瞬く間に、全国的に大麻の入手可能性が高まったのです。折から、大麻の種子を購入して大麻栽培をする若者が増え始めた時期とも重なっているようです。
大麻は、いまや、どこでも手に入るものになりました。いま、私たちは若者の大麻乱用を防止するために、ほんとうに意味のある情報と、警告を提供していかなくてはならないのです。

犯罪白書のデータから、大麻と覚せい剤の押収量の推移を示します。なお、2003年以前の数字は、古い犯罪白書からとって私が追加したものです。
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(グラフは犯罪白書のデータに基づいて私が作成したものです)

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この記事へのコメント

のら猫
2009年12月07日 22:15
私は、実は懸念している事があるのです。それはタバコの価格と大麻の流通が関連しているのではないかという事です。調査した訳ではなく私の邪推かもしれません、欧米では、タバコの価格は高く、売っている場所も少ないのです。イタリアでタバコが切れた時は、たまたま出会った日本人に少し分けて貰いました。ドイツでも同様です。そんな国は大麻は結構流通しているのです。アメリカでは都市部では、怪しげな所でタバコは売っています。農村部はドラッグストアで買えます。タバコを買うよりも大麻の方が買いやすく、安価なら少なくとも、大麻を吸う危険性は高いと思います。

私はタバコ主義ですが、1箱500円を超えると若い人はタバコを抑制するでしょうが、大麻に走る人も少数とは言え、増える気がします。喫煙者だけの僻みでしょうか?
野中
2009年12月09日 06:11
インドに旅行に行った女性の体験談ですが、インドで大麻ばかりを吸っているうちに自然とタバコをすわなくなって止めてしまったそうです。

私は、何故、タバコ税を上げようとするのかと思います。庶民の楽しみを奪いやがって!

エコカー減税こそ廃止してもらいたい。
車なんて買えないし、経済的に維持できませんから。
野中
2009年12月09日 06:17
大麻はたばこやアルコールより有害性が低いことが複数の信頼性の高い研究によって示されています。
また、大麻は様々な疾病やストレスに対して、高い治療効果を有することも示されています。

WHOによる1997年の大麻の健康影響に関する報告書を翻訳しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
http://cannabispolicy.org/blog/cat10/who1997/
野中
2009年12月11日 01:36
WHOによる1997年の大麻の健康影響に関する報告書の翻訳版について、WHOよりofficial authorization認定の通知を本日受け取ったことをお知らせします。

以下のURLに示されるWHOによるpermissionとWHOの著作権を保護することを条件に、ご自由にご利用ください。

http://cannabispolicy.org/blog/cat10/who1997/

この情報がわが国の公衆衛生と大麻政策の向上、大麻の健康影響に関する正しい知識の普及に貢献することを希望します。
はなもげ
2009年12月11日 15:50
大麻が増加すれば覚せい剤も増加するはずでは?

だって大麻は覚せい剤の入り口のはずだから。

このグラフが、そういった都市伝説の誤りを
実証していると思います。それどころか、
「大麻は覚せい剤の使用を抑制する」とも
見れますね。防波堤理論とでも言いましょうか。
野中
2009年12月13日 00:41
”BLA カンナビノイド受容体が IA 条件づけ・消失に与えるストレスの影響をレスキューする。”

専門的な知識ですね。まあ、こういう研究があると。やはり、愛はエンドカンナビノイドを活性化させるのではないかと。

http://d.hatena.ne.jp/amygdala8939/20091110/1257849679

Cannabinoid receptor activation in the basolateral amygdala blocks the effects of stress on the conditioning and extinction of inhibitory avoidance.
Ganon-Elazar E, Akirav I.
J Neurosci. 2009 Sep 9;29(36):11078-88.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19741114?itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum&ordinalpos=1
野中
2009年12月13日 00:43
薬物依存症患者に愛情を!

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