薬物犯罪が変わってきた|平成21年版犯罪白書から1

待っていた『平成21年版犯罪白書』が届き、週末を使って読んでいます。今年の版では、「第7編・再犯防止施策の充実」が注目記事です。報道発表されたように、その第3章「窃盗・覚せい剤事犯に係る再犯の実態」では、再犯の特に多い窃盗と覚せい剤事犯について行った特別調査の詳細な報告があるので、この記事に期待していました。

さて、この特集に入る前に、薬物犯罪の動向をざっとおさらいしておきましょう。なお、犯罪白書が対象にしている最新のデータは、平成20年のものです。平成20年のデータに関しては、全国の警察が取り扱ったものは、すでに今年4月に『平成20年中の薬物・銃器情勢 確定値』(警察庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課編)として公表されていますが、犯罪白書では、内閣府がまとめたデータに基づいており、そこには警察のデータ以外のものも含まれているため、少し数字が違っています。
以下は、当ブログで何度も取り上げた内容ですが、あらためて整理しておきます。参照、引用するのは、主に次の部分です。
法務総合研究所編『平成21年版犯罪白書』/第3編・各種犯罪者の動向と処遇/第3章・薬物犯罪者(110-117頁)
なお、一部は別な章から引用していますが、そのページを示しました。

1、覚せい剤事犯者は減少し続けている
終戦後の混乱期を別にすれば、わが国で覚せい剤事犯の検挙者が急激に増加したのは、高度成長期と呼ばれる昭和40年代後半からです。昭和51年には検挙人員が1万人を超え、それ以来、今日に至るまで1万人を下回ることのない状況が続いています。
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(グラフは110頁から転載)

グラフでわかるように、昭和60年代から平成13年ころまでの間にとくに大きな山があり、年間の検挙者が2万人前後という状況が続いていました。
ところが、平成13年以降は顕著な下降線を示し、平成20年では1万人に近づきました。検挙人員から言えば、昭和50年ころのレベルに戻ったのです。

覚せい剤のマーケットは明らかに縮小しています。その結果、いま起きていることは
①覚せい剤事犯者の年齢層が上がった。
マーケットの拡大期には、未成年と20歳代の青少年層検挙者が検挙者の約半数に達していましたが、現在では30歳代~40歳代が中心になり、青少年層は約4分の1になりました。
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(グラフは111頁から転載)

②暴力団関係者の比率が上がった。
覚せい剤事犯の検挙人員の減少と反比例するかたちで、暴力団構成員等の比率が上昇しています。白書は「暴力団構成員等の比率は,15年から上昇し,17年からは50%を超え,20年は52.6%であった。」としています。

③再犯者の比重が上がった。
平成20年に覚せい剤取締法違反で起訴されたのは14,619人、そのうち罰金以上の前科を持つ人は10,137人。起訴人員に占める有前科者の割合は69.3%。(202頁)
覚せい剤取締法違反での受刑者には、刑事施設への入所を繰り返している人が多く、同一罪名での入所も多いのが特徴的です。(208-209頁)
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(グラフは209頁より転載)

上記にまとめた各ポイントは、いずれも、覚せい剤乱用マーケットが縮小していることから起きている現象で、相互に関連したものだと思います。つまり、現在では、新たに覚せい剤乱用に手を染める若者が減って、覚せい剤事犯者の層が固定化しつつある、ということなのです。薬物乱用に好奇心を抱き始めた段階の若者や、乱用度合いの浅い人たちから順に離れていき、今も乱用している人たちは、環境から覚せい剤に近づきやすい人、乱用度合いの進んだ依存者が中心になっているというわけです。

覚せい剤問題を改善するためにいま重要なのは、覚せい剤を使っている人たちへの対策です。とくに、ある程度長期間乱用を続けた人たちが、覚せい剤から離脱できるよう援助し、指導し、治療する具体的な施策が必要なのです。

いっぽう、これと対照的な動きを見せているのが大麻事犯者の動向です。これについても、何度も取り上げた内容ですが、次回でもう一度整理します。

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