裁判員に「認識」の判定を求めるのは負担が重いかも

成田国際空港を抱えた千葉地裁では、多数の薬物密輸事件を審理しています。密輸事件の裁判員裁判も、薬物密輸事件が続くのは無理のないことでしょう。
千葉地裁で20日に判決があったのは、覚せい剤約1.2キロを靴底とスーツケース内のサンダル2足に隠して密輸しようとしたとして起訴されたスペイン人男性の事件で、被告人は「覚せい剤が仕込まれているとは知らなかった」として無罪を主張していました。
<11月20日16時41分配信 時事通信>
●無罪主張のスペイン人に懲役10年=覚せい剤密輸、裁判員裁判-千葉
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われたスペイン国籍の測量技師の裁判員裁判で、千葉地裁(栃木力裁判長)は20日、懲役10年、罰金500万円(求刑懲役12年、罰金700万円)の判決を言い渡した。
同被告は「薬物が入っていたと知らなかった」と主張したが、判決は「供述には数々の疑問点があり、一連の行為として信用できない」として退けた。
量刑については「同様の犯罪を将来に向け押さえ込んでいく意志を示すためにも、従前よりやや刑を重くすべきだ」とした。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091120-00000117-jij-soci

18日の毎日新聞は、第1回公判の様子を次のように報じていました。
<11月18日11時0分配信 毎日新聞ニュースより抜粋>
●裁判員裁判:覚せい剤密輸、県内初の無罪主張 「靴底隠し」認識争点に /千葉
靴底と荷物内に覚せい剤が隠されていることを被告が知っていたかどうかが争点。検察側は冒頭陳述で「検査時の不自然な態度などから報酬目的での密輸は明らか」と述べた。弁護側は「密輸組織に利用されただけ。靴やサンダルに外見上異常はなく、サンダルには指紋もない」と無罪を主張した。裁判員らは、検察側が提出した靴やサンダル、透明な袋に小分けされた覚せい剤の実物を手にとって熱心に調べた。手荷物を調べた税関職員の証人尋問があったが、裁判員から質問はなかった。
公判後、弁護人の小林幸也弁護士は「裁判員に証拠物を見てもらえよかった。税関検査はイメージがわきにくく難しい事件だ」と話した。千葉地検の園部典生・公判部長は「税関職員の証言で検査時の被告の態度から、覚せい剤があると知っていたことを証明した」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091118-00000017-mailo-l12

いわゆる「運び屋」による薬物の密輸事件では、被告人が無罪を主張する例が少なくありません。とくに、スーツケースや靴底などに細工して薬物を隠して持ち込むケースでは、一見しただけでは、薬物が隠されていると見抜くことは難しく、運搬を引き受けた当人が薬物の存在を知っていたかどうかの判断は、きわめて微妙なものになります。被告人が、薬物が隠されていることを知らずに運搬を引き受け、気づかないまま入国しようとしたのなら、処罰することはできず、無罪となります。

こうした事件では、被告人の供述と被告人の所持品だけしか手がかりはありません。関係者はなく、背後関係もわからず、被告人が本国でどんな生活をしていたのかさえ、わからないのです。
こうした事件を担当すると、私たちは、税関検査から公判までの被告人の一連の供述を細かく調べ、その移り変わりを吟味し、内容が合理的か不自然か考えます。また被告人のパスポートや所持品から、なんとか情報を引き出そうと細部を探しまわり、証拠と格闘する、地味な仕事です。しかも「被告人が薬物を運搬することを知っていたかどうか」という判断は、微妙です。「何かマズイものかもしれない」という程度の認識では不十分だとされているのです。
いわゆる運び屋による薬物の密輸事件は、事実認定の過程が微妙で、従来は法廷で極めてテクニカルなやりとりを重ねてきたタイプの事件です。裁判員裁判に向けてできるだけ簡略に、わかりやすくと工夫が重ねられていますが、それでもなお、判断に難しさがつきまとうことだと思います。
裁判員の皆さんにとって、負担の大きすぎる事件にならなければいいのですが・・・。

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この記事へのコメント

のら猫
2009年11月22日 15:36
裁判員制度では、まだ無罪判決がありません。刑事事件での一審無罪そのものが、珍しい事であり、まだ100例にもいっていないので、仕方がない事です。
だがもうそろそろ出てもいい時期にさしかかってきました。来年には出そうな気がします。無罪もありうると考えなければ裁判とは呼べません。

被告人が外国人で通訳はさんでの裁判、被告人不利でしょうね。

情状裁判で、量刑相場に従っての判断では、裁判官の意見が基礎になってしまいます。現実的に量刑判断では裁判官の意見が仕組み的にも尊重されています。
有罪か無罪かの判断を迫られ、一審無罪や一審裁判員制度で有罪で控訴審では無罪が出てから、本当の意味の裁判員制度が始まると思います。

しかし保護観察を出しすぎの感否めません。保護観察所での対応大丈夫でしょうか?

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