第三者没収と判決期日の延期

芸能人薬物事件の公判が続き、再び報道合戦が展開されている中で、目立たない小さな記事がありました。

●<高相被告>判決期日延期、11月27日に
女優の酒井法子被告の夫で、覚せい剤取締法違反(使用・所持)に問われた高相被告について、東京地裁(稗田雅洋裁判官)は、判決期日を11月12日から同27日に延期した。高相被告は公判で、起訴内容で使用・所持したとされる覚せい剤について「鹿児島県奄美大島の野外音楽会場で拾った」と述べた。検察側が求める没収手続きには、持ち主を特定するため検察による公告(2週間)が必要となり、期日変更した(記事の要旨)。
10月22日21時1分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091022-00000114-mai-soci

私はこの日、公判の様子をインターネット速報で読み、被告人が所持していた覚せい剤のなかに、奄美大島で「拾った」というものが含まれていたのを知ったわけですが、「第三者没収か、ご苦労なことだ」と考えていたところでした。
覚せい剤取締法は、犯人が所有し、又は所持した覚せい剤を没収する、と定めていますが、被告人はこの覚せい剤は拾ったものだと言っており、つまり本来の所有者がほかにいると主張しているわけです。犯人以外の第三者が所有する物、あるいは被告人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない物を没収するための手続きが、第三者没収と呼ばれるものです。
具体的には、没収すべき覚せい剤の所有者に対して、その没収を告知し、刑事事件の係属する裁判所に対して、参加の申し立てをして弁解、防御することができると知らせる手続きなのです。

この手続きは検察官が行うもので、没収の対象物の所有者に対して、検察官が書面で告知をすることになります。しかし、覚せい剤などの規制薬物の場合、多くは、所有者が誰かわからなかったり、そもそも被告人の所有物か、第三者の物か不明だったりもします。告知する相手が特定できない場合や、相手の所在がわからなくて告知できない場合には、公告という方法で知らせることになります。公告とは、官報や広報などに掲載したり、裁判所や官庁の掲示板に公示して、広く一般に知らせることをいいます。
検察庁の建物の前には、ガラスの扉のついた掲示板が設けられ、そこに何やら書面が貼り出されています。東京など取り扱う事件の多い検察庁では、書面の束がぶら下がっていることもあります。このなかに、犯罪にかかる覚せい剤などの第三者没収に関する公告も混じっているわけです。この書類が公示される期間は14日間。

ところで、このように面倒な手続きがなぜ必要か、簡単に説明しておきましょう。この手続きについてさだめているのは、「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法」(昭和三十八年七月十二日法律第百三十八号)という法律で、その制定の引き金となったのは、最高裁判所が下した憲法違反の判断でした。
当時、ある密輸貨物の没収をめぐって裁判が行われていました。関税法に基いて密輸した貨物を没収された者が、没収した貨物には第三者の所有物が含まれていたことから、その所有者に告知・弁解・防御の機会を与えなかったのは、憲法に違反するとして争っていたものです。昭和37年の最高裁判決は、「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。」という判断を示しました(昭和37年11月28日最高裁判所大法廷判決)。
最高裁の判断を受けて、急遽、上記の法令が整備され、それ以来、第三者没収の手続きが行われている、というわけです。

実は、覚せい剤などの規制薬物の所持事犯者が、その薬物を「拾った」「他人からもらった」と主張することは、それほど珍しいことではありません。公判廷で供述を翻して「実は拾ったものです」といい始める被告人も、まれにいます。第三者没収の手続きには、普通、1ヶ月ほどの時間を要するため、公判の場で第三者による所有の可能性が出てきたような場合は、その手続きが完了するまで判決が先延ばしになることもあります。
おや、高相被告人の場合、判決期日がおよそ1ヵ月後になったということは、公判の後で第三者没収の手続きにとりかかったということのようです。だとすれば、「奄美で拾った」という彼の供述は、公判の場で初めて出てきたものなのでしょうか。もっとも、検察官が手続きをし忘れていたため、判決が先送りされたということもありえます。実際、私はそうした例に出会ったこともありますから。

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この記事へのコメント

のら猫
2009年10月24日 09:27
産経の公判記事を読む限り、供述の変更ではないようです。単に忘れていたようです。もっとも内心信じていない事もあったのでしょうが。公告するにしても、量は彼のいいなりにするしかないのでしょう。

しかし 彼はいいですね。何をいっても分からないと追求している方が諦める。
使用場所変更も、奥さんの使用を供述しながら、その後に供述した使用場所は、奥さんをかばうためと言い切るのも普通の人では出来ません。検察官も裁判官も質問したが、結局諦めている。こんな意味のない事を少なくとも弁護士がそのまま通して下さいと言うとは、常識的に考えられませんが、平気で言う。最初の弁護士さんも巻き込まれてお気の毒です。

しかしこれだけ頻度の高い使用でも、常習的とも言われないし、親和性と言う言葉に置き換わっている。仕入れルートの秘匿の可能性も指摘されないし、奥さんに勧めた事についても、指摘されない。
押尾さんは、指摘された使用は数回なのに、毛髪検査され、常習的と言われているのに。

ツッコミ所満載の供述でも、検察もたいして追求しない。 追求するのが、ばからしいのでしょう。つくづく得な人ですね。
公判対策見え見えのカウセリング、親と弁護士の監視が効いて、初犯も加味して、公判での態度は多めにみて、執行猶予となりそうですし、妻も子もいるのも(いつでかは分からない)も効いている感じです。まあカウセリングは良いことに違いありません。

覚醒剤の微量所持では、今度は京大生の10mgがでました。もっとも今度は結晶のようです。彼は、大麻も持っているようですが、今は覚醒剤とは知らなかったと否認しているようで、尿検査も出ていない。のりピー特例に準じて、毛髪検査されたり、覚醒剤所持容疑で起訴されるのでしょうか?微量起訴が確立されていくのか?
のら猫
2009年10月24日 16:58
ごめんなさい。
京大生は、読売の記事では、3日逮捕、23日起訴されたようです。のりピー特例と言われたくないので、しばらく微量起訴が続くかもしれません。土日の関係もあり、拘留をフルに使ったようです。同時に見つかった大麻 0.865gの所持容疑で今頃追送検されたので、又拘留を続ける事でしょう。マスコミのパッシングはないのですが、京大当局はどう出るでしょう。退学処分となるかどうか。悲観的な観測が当たり、憂鬱です。

今度は使用で、尿検査関係なしに、起訴する事案が出てくるでしょう。

来週の月曜日は恐らく、なんでもかんでも、のりピーは認めそうで怖い。そして前例となる。


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