合法化は世界標準になりうるか|世界薬物報告書2009年版4

タバコは、不法薬物と同じように依存性があり、有害ですが、その使用は禁止されてはいません。現在、先進国の多くは、タバコの使用者削減に真剣に取り組んでいますが、その手段は、禁止策ではなく、高率の税を課して使用を抑制しながら、自由市場の中で削減しようというものです。実際、タバコは急速に値上がりし、それにともなって使用者は減少しています。
実は、薬物合法化議論の中で主張されてきたひとつに、薬物を禁止するのではなく、高率の課税によって使用を抑制し、税収を依存者の治療に当てるというものがあります。なるほど、タバコでうまく機能しているのなら、これを薬物にも適用できるという考え方も出てくるでしょう。

では、こうした方法が、今後の薬物コントロールにおいて、標準形となりうるのでしょうか。それはありえないというのが、本書の結論です。つまり、今後も、グローバルな薬物コントロール政策は、禁止策を基盤にしていくということなのです。
「残念ながら、この考え方は、治療や税金徴収能力の双方が比較的充実している、先進国の場合に限定される。これは、グローバルな薬物統制システムが、発展途上国を習慣性薬物から保護する役割を無視している。これら薬物を禁止するという一貫したグローバルな政策なしでは、発展途上国は、今日、タバコやアルコール問題の増加によって被っているのと同様な被害を、不法薬物によって受けることになるであろう。」

一般的に、発展途上国では、タバコやアルコールといった許容されている依存性物質の使用率が高く、また消費量が高率で拡大しています。限られた消費生活のなかで、家計消費支出の10%以上をタバコ代にあてている例もあるのです。日本では2008年の家計調査によれば、タバコ代は家計消費支出の0.8%であることを考えれば、この数字がどれほど大きいか理解していただけるでしょう。
発展途上国では、先進国に比べ、不法薬物の使用率はそれほど高いものではありません。禁止政策の下で、不法薬物の供給は豊かな先進国をターゲットに行われており、発展途上国の所得水準では手を出しにくい価格になっているせいです。ところが、タバコには禁止策がとられていないため、自由市場の中で消費地の事情に応じた価格調整が行われ、発展途上国でも、割高とはいえ、庶民にも買える価格設定がされ、実際に庶民がこれを毎日購入しているわけです。

本書は、発展途上国におけるタバコ喫煙問題を、コカインの生産国のひとつボリビアの例を通じて検討します。「たとえば、コカインを現に生産している国でのコカイン消費は、ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国の半分以下である。この状況は、容易に変化しうるのだ。ボリビアは、人口の42%が1日当たり2米ドル以下で生活している貧しい国であり、世界のコカイン供給量の約10%を産出している。報告された数字によると、2005年のボリビアでのコカイン価格は1グラム当たり9米ドルであり、これは米国での価格のおよそ10%にあたる。しかし、米国の国民1人当たりGDPはボリビアの42倍であり、実際には、ボリビアではコカイン価格が米国の4倍ということになる。これと対照的に、ボリビアでは成人人口の27%が毎日タバコを喫煙する。タバコ1箱は、2006年の公的な為替レートでは0.62米ドルであり、現地で生産されるコカインよりも、輸入されるタバコのほうが、貧しい者にとっても入手しやすいのである。ボリビアは決して特別な例ではなく、貧しい国の多くで、消費支出の10%以上が、タバコに費やされているのである。」

さらに、先進国でなら選択肢のひとつになりうる高率の課税による使用抑制という方法は、発展途上国では採用が困難だという事情もあります。徴税制度が不完全な国では、高率の課税は、不正流通を増加させることになりかねません。現に、アフリカや南米では、課税を逃れた不正タバコが膨大に密売買されています。また、徴収した税を依存者の治療にあてるとしても、そもそも治療のための機関や施設、専門職が整備されていません。発展途上国が、これ以上依存性薬物の脅威にさらされないよう保護するには、禁止策しかありえない、というのが本書の出した結論です。
「国際的な薬物禁止策は、このように、発展途上国の防衛に大きく寄与しており、維持されるべきものである。また同時に、薬物に関連した暴力や不正が現に存在しており、これへの対処がなされなければならない。戦略的かつ強調的な取り組みがされるならば、幸いにも、現有の資源で、薬物コントロールと犯罪抑止を同時に実行できない理由はない。」

とはいえ、禁止策のあり方は、今のままでよいのだろうか。問題はまだまだ続きます。

出典:国連薬物犯罪事務所編『世界薬物報告書2009年版 WORLD DRUG REPORT 2009』
http://www.unodc.org/unodc/en/frontpage/2009/June/world-drug-report-2009-released.html

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