タバコと薬物のどちらが害が大きいか|世界薬物報告書2009年版3

前述したように、ポルトガルでは、個人的使用目的での少量の薬物所持に対して、刑事罰を科すことをやめました。ただし、決して薬物を解禁したわけではなく、薬物の所持は法で禁じられているのですが、違反者に対して刑事手続きで対処して拘禁刑を科すかわりに、行政手続きの下で、治療や罰金などが命じられるのです。この政策によって、依存者が治療を受けやすくなり、薬物関連の死亡が減少するなど、問題のある部分は好転しているといいます。
では、ポルトガルのような政策が、世界の標準になりつつあるのかといえば、そうでもありません。依然として、おおかたの国では、たとえ個人的使用目的であろうと、薬物の所持は犯罪として取り扱われ、違反の程度に応じて刑事罰が科されています。ポルトガルのような非犯罪化政策をとる国は、今のところ、少数派です。

薬物問題の解決策として、非犯罪化を含む多様な合法化政策が提唱され、実際に政策として採用している国もあります。2009年版の世界薬物報告書の第2部は、こうした合法化の可能性を正面からとりあげ、検討するところからスタートしているのです。

世界は、国際的な協調によって薬物を統制下におくことに成功しました。しかし、薬物をなくすことはできていません。世界はいま、不法薬物が横行し、犯罪組織が肥大化し、依存者がさまざまな社会問題を生み出すという、当初は予期しなかった現実に直面しています。貧困、内戦、兵器拡散、感染症など国連が取り組んできた諸問題の中で、薬物問題だけは、出口が見えないままいささか迷走しているようです。出口が見えないなかで、現行の制度は利益よりも害のほうが多いと感じ、薬物統制のあり方を根本的に見直すことを提唱するのが、多様な薬物合法化論です。

さて、ここで本書は、タバコと薬物どちらが有害かというおなじみの議論を取り上げます。世界中でタバコでは年間500万人近く、アルコールでは200万人近くが死亡しているのに、不法薬物での死亡は20万人ほどである(2002年のWHOデータ)ことから、より害の大きなタバコやアルコールが合法であるのに、なぜ薬物を不法として取り締まるのかと、合法化議論ではよくこの話題が取り上げられるのは、皆様もご存知でしょう。
これに対して、本書の答えは明快です。タバコやアルコールは合法であるがゆえに、けたちがいに多数が使用し、多数がその害を受けている。仮に、不法薬物が合法になったとすれば、使用者は増加し、それとともに死亡数も増加することになるだろう・・・。
「依存性物質のうち特定のものを禁止しながら、他を許容して課税するという手法を、物質そのものの相対的な有害性を根拠に防御するのは、きわめて困難である。習慣性のある合法な物質は、毎年、不法薬物よりはるかに多くの死亡をもたらしており、現存人口のうち5億人はたばこによって死亡することになると推計されている。しかし、より大きな死亡者数とは、この合法薬物が不法薬物よりも薬理学的に危険であるということではなく、合法であり、利用可能性がより高いことによる直接的な結果なのである。不法薬物の使用率は、制限年齢にある未成年の不法使用も含めて、合法な中毒性物質使用の何分の1というものである。仮に、現在は不法とされている物質が合法化されたとすれば、その数字は間違いなく増加し、おそらく、現在の合法薬物のレベルに達し、それに関連して病的症状や死亡率も増加することであろう。」

出典:国連薬物犯罪事務所編『世界薬物報告書2009年版 WORLD DRUG REPORT 2009』
http://www.unodc.org/unodc/en/frontpage/2009/June/world-drug-report-2009-released.html

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この記事へのコメント

野中
2009年07月10日 01:04
How to improve drug control
In some countries, the ratio of people imprisoned for drug use compared to drug trafficking is 5:1. "This is a waste of money for the police, and a waste of lives for those thrown in jail. Go after the piranhas, not the minnows," said Mr. Costa.
http://www.unis.unvienna.org/unis/pressrels/2009/unisnar1059.html
コム
2009年07月11日 00:37
先進国では薬物の単純使用、少量所持で勾留・起訴される国は日本ぐらいですね。
日本の薬物政策も甚だ疑問に感じます。
コムさんへ
2009年07月11日 01:39
初めまして。薬物政策は何か疑問ありますか?薬は病気を改善しますね。薬物は必ず身体に影響与えます。常識ですよね。薬物政策は何か疑問ありますか?

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  • 禁煙

    Excerpt: なんか、このブログのカテゴリを選ぼうとしたら、禁煙っていうカテゴリが目に入って・・・(笑) せっかくだから禁煙にチャレンジしようかと。。。 実は数年前に、3年間ぐらいタバコを辞めて Weblog: 社会風俗行状記 racked: 2009-08-01 16:22