弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 和歌山県で超大型の大麻栽培施設を摘発

<<   作成日時 : 2016/11/18 05:50   >>

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長くブログの更新ができない状態が続きましたが、私も、ようやく急性期の治療を終え、自宅療養にはいったところです。まだしばらくは、療養生活が続きますが、少しずつ、鈍った頭の訓練を始めようかと思います。

さて、間延びした私の思考回路に、いきなり、超大型の大麻栽培施設が摘発されたというニュースが飛び込んできました。

<ニュースから>*****
●1万本超の大麻草栽培疑い 奈良、男4人を再逮捕
和歌山県かつらぎ町の建物で1万本を超える大麻草が見つかり、奈良県警は16日、販売目的で栽培したとして、大麻取締法違反(営利目的栽培)の疑いで男4人=同法の営利目的所持容疑で逮捕=を再逮捕した。
警察庁の統計によると、大麻草の年間の押収量はこの数年間、数千本の範囲で推移しており、一度の摘発量では異例の多さとなった。
逮捕容疑は10月26日、かつらぎ町の工場内で、営利目的から大麻草24本を栽培したほか、乾燥大麻約340cを所持した疑い。県警は大量の大麻草が栽培されているとの情報を入手し、同日に工場を捜索。1万本を超える大麻草や乾燥大麻を発見、押収し、出入りしていた4人を現行犯逮捕していた。
2016年11月16日 11:25産経ニュース
*****

日本で、大麻の栽培が社会の関心を集め始めたのは、2008年ころのことでした。外国から輸入される大麻の種子が出回り、若者が安易に大麻栽培に手を染めるようになったのです。警察が積極的な取り締まりを行った結果、2009年中に摘発された大麻栽培事犯は300件を超え、合計1万本を超える大麻草が押収されました。
その後、国内では栽培用の大麻種子の販売が姿を消し、また、一般人の警戒意識が高まったこともあり、栽培事犯の摘発は下火になりましたが、いっぽうでは、営利目的で大量に栽培する拠点の摘発が相次いでいます。

しかし、これまでの大量栽培事案で押収される大麻草は、1拠点当たり、せいぜい200〜300本程度でした。一般の民家で栽培するとしたら、広さの都合で、栽培する量に限りがあるわけです。
1グループが、複数の民家などを使って栽培を繰り返し、合計すると1000〜2000本を栽培・・・というのが、組織的な営利栽培の典型的なスタイルだったと思います。

それに比べて、1拠点で1万1千本の大麻草を押収したというのですから、今回の事案は、けた外れに大規模なものだったといえるでしょう。
ちなみに、警察庁の統計によると、1年間で全国の警察が押収した大麻草は、2015年は3,355本、2014年は5,195本でした。今回の事案では、これまでの2、3年分の合計量を一挙に押収したことになります(下記参照@)。

画像

↑警察による大麻栽培事犯の摘発状況
各年度版の警察庁「薬物・銃器情勢」の発表データに基づき、筆者がグラフ化したもの
・赤線は大麻栽培事犯の検挙件数
・棒グラフは、押収された大麻草の本数

●急がれる大麻密売市場の把握
報道によると、逮捕された4人のなかには暴力団幹部が含まれているそうです。暴力団の組織力を背景に、これほどの大規模栽培が行われていたとすれば、日本の大麻密売市場は、成長期にさしかかっているとみてよいでしょう。供給量が急増しても、それを消化する需要があるからこそ、密売組織に最も近い暴力団が自ら大量栽培に乗り出したのでしょう。

しかし、日本の大麻密売市場の現況について、掌握があまり進んでいないのが現実です。

わずか5、6年前まで、日本に出回る大麻のほとんどは外国から密輸されるものでした。その内容は、大麻草の葉や花を乾燥したもので、原産地によっては、種や小枝が混入していることもありました。
ところが、2009年ころから、税関で押収される密輸大麻が急速に減り始めたのです。ちょうどそのころ、逆に急増していたのが大麻の種子の輸入でした。

おそらくこの時期から、国内で栽培された大麻が、密売市場に流出するようになってきたのだと思います。拡大しているとはいえ、まだ規模の小さい日本の密売大麻市場は、たちまち、国内生産品で埋め尽くされ、密輸品の需要が駆逐されたのではないでしょうか。

現在、密売大麻の市場は、結構複雑になっているようです。
ひと昔前までは覚せい剤だけを扱っていた密売ルートが、都市部から順に、大麻など各種薬物を取り扱うようになってきました。
いっぽう、一部の愛好者の間では、品質へのこだわりが進んでいる様子です。THC含有量の多い花穂部分(バッズ)に限定して取引する例や、ときには銘柄を指定して売買するようなケースも散見されます。こうした品物は、当然、密売価格も割高です。一般の密売品とは、流通の経路も異なることでしょう。

しかし、変化し始めている密売大麻の市場について、まだまだ私たちの理解は及んでいません。捜査陣にとっても、事情は同じことでしょう。

たとえば、今回の事件では、県警の発表によれば、押収された約1万1千本の大麻草のうち、成長した約4千本だけで、末端価格は約20億円と推計されるということです(下記参照A)。
警察は、成長した大麻草1本から乾燥大麻が約100g収穫され、それが末端では1グラム当たり5000円で密売されると計算しているようです。

実は、私自身も数年前まで、大麻草からの収穫量を1本当り約100g(乾燥重量)と計算していたのですが、その後、いくつかの栽培事件を手がける中で、収穫量はもっと少ないのではないかと思うようになり、現在では、約50g程度かと考えています。
また、密売価格も、扱う大麻の品質や、密売ルートによって、1グラム当たり4、5千円から、1万円を超えるものまであり、多様になってきています。

全国の警察には、多くの捜査記録が残されているのですから、そろそろ、こうしたデータを集約する時期ではないでしょうか。これまでの捜査を通じて得た膨大な経験は、まとめの作業を経てこそ、広く活用できるノウハウになっていくはずです。

[参照]
@警察庁「平成27年における薬物・銃器情勢(確定値)」2016年3月
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h27_yakujyuu_jousei.pdf
A朝日新聞デジタル「大麻草を栽培した疑い、男4人逮捕 1.1万本押収」2016年11月16日
http://www.asahi.com/articles/ASJCJ3V00JCJPOMB00J.html

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