弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 誤判の是正は誰の責任か|北海道警の偽造調書事件

<<   作成日時 : 2016/10/06 05:06   >>

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前記事でも書きましたが、札幌地裁で審理されていた、元警部補による調書偽造、捜査情報漏えいなどの事件で、4日、有罪判決が言い渡されました。

<ニュースから>*****
●捜査情報漏えい:元警部補に有罪判決 札幌地裁
覚醒剤密売仲介者と共謀して供述調書を偽造し捜査情報を漏えいしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反などに問われた北海道警薬物銃器対策課の元警部補(38)に対する判決公判が4日、札幌地裁であり、中桐圭一裁判官は懲役2年、執行猶予3年(求刑・懲役2年)を言い渡した。
・・・判決によると、被告は2015年4月、覚醒剤密売仲介者H被告(51)=同罪などで公判中=と共謀し「50代の男が覚醒剤を所持しているのを見た」とする虚偽の供述調書を作成。後日、H被告に捜索予定日などの捜査情報を漏らした。
2016年10月4日 20:22毎日新聞
*****

報道によると、元警部補は、公判の過程で「他にも(調書偽造を)やっている人がいると聞いた」と証言し、また過去にも同様の調書偽造を行ったことがあるとも供述しているそうです。

当然、事件の捜査段階では、余罪について念入りな取り調べが行われたことでしょう。また、北海道警察内部でも調査が行われ、同警部補が関与した過去の事件について、徹底的な掘り起しが進められていると思います。
しかし、こうした事件で問題になるのは、警察内部の不正だけではありません。一連の不正捜査によって検挙され、覚せい剤や銃刀法事件で有罪判決を受けた被告人が、他にもいるかもしれないのです。違法捜査が行われたことを踏まえて、それぞれの判決を見直し、誤判がなかったかについて、厳密な検討が必要なはずです。

もちろん、警察の内部調査も、この点を無視しているわけではないでしょう。しかし内部調査では多くの場合、検挙された被告人は、もともと覚せい剤を入手するつもりで密売人に接触してきたもので、犯罪を行うつもりのない人に働きかけて犯罪を誘発するようなおとり捜査が行われたわけではないから、捜査に違法があったとしても、判決に影響を及ぼすものではないと理解されてきたように思います。私が知る限り、こうした内部調査によって、既に確定した判決に対して、是正の動きがとられた例はありません。

いっぽう、こうした不正捜査問題が取り上げられると、裁判を受けている被告人や、すでに判決が確定した当事者から、自分のケースでも捜査に不正があったのではないかという申し出が相次ぎます。その窓口になるのは、事件を担当している弁護士や地域の弁護士会ですが、正式な捜査記録に残されていない背後事情などを調べる手段はほとんどなく、調査はなかなか核心に及びません。
現状では、誤判を是正する機会として設けられている再審への道のりは、限りなく遠いのです。

それでも、今春、画期的な再審請求が認められました。
前記事でもふれたように、2002年に北海道警察で起きた、元警部による覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反事件が起きましたが、同じ元警部が関わったけん銃所持の別事案で、おとり捜査が行われた疑いが強いとして、有罪が確定したロシア人元被告人の再審請求が認められたのです。
札幌地裁によるこの決定は、裁判所ウェブサイトに掲載されているので、全文を読むことができます。
[参照] 
札幌地方裁判所平成28年3月3日決定/平成25年(た)2号
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/828/085828_hanrei.pdf

しかし、ここまでの道のりが決して平たんでなかったことは、時間の経過からも推察することができます。ロシア人被告人が、けん銃等を所持したとして懲役刑を言い渡されたのは1998年でした。同人は、公判時から一貫して違法なおとり捜査を訴え、無罪を主張していたといいます。
その後2002年に、元警部による不正捜査問題が発覚し、公判での供述などから元警部が違法なおとり捜査に関わったことが明らかになりました。これによって、ロシア人元被告人の主張は、にわかに真実味を増したはずですが、再審請求が認められるまでには、これほど長い時間がかかったのです。

もしも、元警部による不正捜査問題に関する警察での内部調査が行われた時点で、その結果が開示されていたなら、このようなケースはもっと早く結論にたどり着くことができたのではないでしょうか。
私は、内部調査の結果をみやみに公表すべきだと主張しているわけではありません。しかし、不正捜査に巻き込まれた可能性のある当事者やその代理人が、該当する事案の調査結果を知る道は、確保されるべきではないでしょうか。

不正捜査によって、本来無罪であるはずの被告人に有罪判決が言い渡されているかもしれないのです。誤判を是正する責任は、検察官や捜査側にもあるはずです。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
『依存症の反対語は絆 その3』
⇒ http://amba.to/2dJqtAD

先生お体大丈夫ですか?もしお時間があれば私のこの記事目を通してください。ブログを書き始めて2年半が経ちました。
これも先生のお蔭だと思っております。
私もやっとやらない生活が楽しくなったところです

お体本当にお大事にしてください
なるみん
2016/10/13 00:14

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