弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS ドゥテルテ大統領が訪日・・・私たちはこの人物をどう迎えればいいのか

<<   作成日時 : 2016/09/23 15:08   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

フィリピンのドゥテルテ大統領が10月に訪日することになりそうだと、ニュースが報じています。フィリピンは外資誘致を積極化しており、製造業を中心に日本からの投資を呼びかけるのが狙いだといいますが・・・。
麻薬撲滅の名の下で、住民の殺害さえ許容するという超法規的な粛清を強行し、その手法が国際的な非難を呼ぶと、米大統領や欧州連合、国連事務総長さえ口汚くののしるという、大統領の対応に、問題はいまや、国際的な経済、外交、防衛といった問題にまで拡大し始めました。

さて、この人物の訪日にあたって、私たち日本人は、どのように迎えたらいいか戸惑ってしまいます。
ドゥテルテ大統領と「麻薬撲滅」活動の問題、今日までの経緯をざっとまとめてみました。

●ドゥテルテ大統領による強行策
フィリピンは7000を超える島からなっていますが、国土の面積は日本の約8割、人口は1億人強と、日本をひとまわり小ぶりにしたような国だと考えればよいでしょうか。
貧困、失業、治安などとともに、この国を長年悩ませてきたのが薬物乱用問題です。2016年の大統領選では、治安の回復や薬物問題の早期解決を掲げたドゥテルテ氏は、広く国民の支持を集めて当選、6月末に新大統領に就任しました。

就任早々、新大統領は公約に従って、「フィリピンから薬物問題を一掃する」という課題に積極的に取り組み始めたといいます。
ところが、その手段となったのは、警察による末端の密売人と乱用者に対する、超法規的な取り締まりだったのです。重武装した取締まりチームが貧困地区をパトロールし、薬物密売人や乱用者に自首を促します。捜査に抵抗を示す場合には、射殺することも容認されました。警察ばかりでなく、各地で組織された自警団や正体不明の暴力集団も、この活動に加わったといわれます。

8月23日、フィリピン議会上院の合同調査委員会でフィリピン国家警察の幹部は、新大統領の下で麻薬撲滅作戦が始動してからの2か月で、警察は10,153人の薬物乱用者を逮捕し、多量の薬物を押収したと証言しました。
しかし、その裏で、多くの市民が「取り締まり」の名の下で殺害されていたのです。警察によって殺害されたのは756人、ほかに1160人が殺害されたといいますが、その多くに、自警団が関与しているとみられています(下記参照@)。

新大統領の肝いりでスタートした「麻薬一掃」活動ですが、これは正式な国家としての取り組みに位置付けられたものではなく、政府からの、公式な方針などの発表はありません。

●フィリピンの薬物問題の現状
この国で最も広く乱用されているのは覚せい剤で、現地では「シャブ」と呼ばれることからもわかるように、もともとは日本の犯罪組織が持ち込んだものです。
 ・1位・・・覚せい剤
 ・2位・・・大麻
 ・3位・・・コカイン
画像

↑フィリピン政府の危険薬物委員会のサイト(下記参照B)

この国に約180万人の薬物乱用者がいるといいます。ここで示された180万人という数字は、過去1年以内に違法な薬物を使った人の数で、人口の1.8%にあたります。これまでに1回以上薬物を使ったことのある人は6.1%で、480万人に及びます。
フィリピンでは、長年にわたり、薬物乱用問題が重要政策課題の一つとされ、政府の下に置かれた危険薬物委員会が薬物対策の中枢を担ってきました。同委員会が定期的に実施している、全国規模の薬物実態調査の2015年版の概要が先日報道発表され、右肩上がりで増え続ける薬物乱用の実態が明かされたところです(下記参照A)。

危険薬物委員会のまとめによると、性別では圧倒的に男性が多く、その中心年齢は31歳、過半数が無職で、都市部に住む低所得層が中心です。平均乱用年数は6年以上、覚せい剤を中心に他の薬物も使用しています(下記参照B)。

日本と比べると、フィリピンの薬物乱用状況は、かなり深刻だと言えるでしょう。
ちなみに、日本の調査では、過去1年以内に覚せい剤、大麻、危険ドラッグなどの薬物を使った人は0.1%。これまでに1回以上使ったことがある人は、2.5%となっています(下記参照C)。

●取り締まり体制
薬物犯罪の取締りにあたる主要機関は、フィリピン麻薬取締局Philippine Drug Enforcement Agency (PDEA)で、全国16の支局と16か所の分析ラボを備えた組織です。組織の構造や規模などは、日本の厚労省麻薬取締部の現状に似ているように思います。
捜査官の人数が限られているため、麻薬取締局の活動対象は大型事案に絞られるといいます。しかし、取り締まりの最前線や司法組織にまではびこる汚職や、体制の不備などのため、密輸や密売を取り仕切る犯罪組織の摘発は遅々として進まず、逮捕した組織幹部を起訴できないまま捜査を打ち切ることもしばしば起きているといいます。

いっぽう、末端の密売人や乱用者に対する取り締まりは、主に警察が担当しています。
東南アジア諸国の例にもれず、フィリピンの薬物法制も大変厳しいもので、たとえば5グラム以下覚せい剤の単純所持に対しても、長期の拘禁刑が科されます。

●ビリビッド刑務所スキャンダル
マニラ市郊外に新設された、2万人以上を収容するビリビッド刑務所をめぐって、内部で薬物密売が行われているという疑惑が、長く取りざたされていました。2014年12月、当時の大統領の特命を受けて、警察と軍が数回にわたって同刑務所に対して強制捜査を行い、驚くべき実態が明らかになりました。
刑務所内で発見されたのは、エアコン装備の特別室、ジャグジーバスや温水シャワー、ブランド腕時計や札束を入れた金庫が備え付けられた部屋や、高級ウィスキーを並べた房もあったといいます。収容者の身辺から押収されたのは、覚せい剤、携帯電話、多額の現金、携帯型パソコン・・・。
メディアはこぞってこの話題を取り上げ、有罪判決を受けた薬物密売組織の大物たちが、刑務所内で「王様みたいに暮らしている」と報じ、この問題は国民的スキャンダルになりました。
この問題は2016年の大統領選挙で大きな争点となり、ドゥテルテ現大統領はビリビッド刑務所問題の徹底究明と麻薬問題の短期解決を公約に掲げて当選したわけです。

[参照]
@CNN Philippines' War on Drugs(Sep 07, 2016)
http://edition.cnn.com/specials/asia/philippines-drugs-war
Aフィリピンの薬物乱用実態全国調査
2015 Nationwide Survey on the Nature and Extent of Drug Abuse in the Philippines
調査結果は、下記のニュース記事によりました。
DDB: Philippines has 1.8 million current drug users - Rappler(September 19, 2016)
http://www.rappler.com/nation/146654-drug-use-survey-results-dangerous-drugs-board-philippines-2015
Bフィリピン危険薬物委員会
Dangerous Drugs Board (DDB)
www.ddb.gov.ph/
*乱用実態に関する統計は2015 Statisticsでまとめられている
C薬物使用に関する全国住民調査(2015年)
国立精神・神経医療研究センターのサイト内
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NGPS_2015.pdf

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
かわいい かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ドゥテルテ大統領が訪日・・・私たちはこの人物をどう迎えればいいのか 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる