弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 処方薬も規制対象に|英国の薬物運転規制

<<   作成日時 : 2016/08/14 22:36   >>

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道路交通法は、飲酒運転と同じように、薬物を使用して自動車を運転することを禁じているのに、実際には、飲酒運転と同じように薬物運転の取り締まりが行われることはありません。薬物運転の取締まりを困難にしている要因として、まず、どの程度の薬物を摂取した場合に薬物運転とみなされるのか、その基準がはっきりしないことが挙げられます。アルコールでは、酒気帯び運転にあたる状態が血中濃度で示されているのに、薬物では、こうした基準がないのです。
また、アルコールの場合の呼気検査のように、道路上で簡単に行える簡易な検査方法がないことも、悩みでした。

しかし、欧米では、薬物運転への社会的な問題意識が高まるにつれ、薬物運転についても、アルコールの場合と同じように、基準を明確にして、確実に取り締まりを進めようという動きが、次第に広がってきています。

たとえば英国(UK)では、2015年春の法改正で、薬物運転に対する規制が大きく変わりました。
取り締まりの対象となるのは、乱用が広まり、自動車運転の危険性を高める恐れの強い17種の薬物(違法薬物8種と処方薬8種、およびアンフェタミン)で、それぞれ血中濃度の下限値が定められました。
運転者の体内から、これを超える濃度の薬物が検出された場合は、「薬物運転」として摘発され、1年以上の運転免許停止、罰金といった処分が科され、場合によっては拘禁刑を言い渡されることにもなります。

処方薬については基準値が比較的高く定められ、また、医師の処方通りに服薬している場合には、仮に検査の結果、基準値を超える薬物が検出されても、処罰されることはないといいます(詳しくは下記を参照)。

●取り締まりの対象となる薬物と血中濃度の基準値
<違法薬物>
ベンゾイルエクゴニン(コカインの代謝物)・ 50µg/L
コカイン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10µg/L
Δ9‐THC(大麻の主要成分)・・・・・・・・・・・・2µg/L
ケタミン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20µg/L
リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)・・・・・・・ 1µg/L
メタンフェタミン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10µg/L
MDMA・・・・・・・・・・・・・・・・ 10µg/L
6-アセチルモルヒネ(ヘロインの代謝物)・・5µg/L
<処方薬>
クロナゼパム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50µg/L
ジアゼパム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 550µg/L
フルニトラゼパム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300µg/L
ロラゼパム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100µg/L
メタドン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・500µg/L
モルヒネ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80µg/L
オキサゼパム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300µg/L
<別枠>
アンフェタミン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・250µg/L

●薬物簡易検査キットの導入
改正法の導入を支えたツールのひとつが、現場ですぐに判定できる薬物簡易検査キットです。自動車運転の取り締まりでは、通常の薬物検査のやりかたで、尿を採取して検査するわけにはいきません。アルコールの場合の呼気検査のような簡便な方法で、薬物使用を判定することができなければ、現場で活用することはできません。

基本的には唾液(口の中の粘液)を採取して、その中に含まれる薬物を簡易検査キットで判定するのですが、英国各地の警察では、様々なタイプの検査キットが導入されました。法改正当時のニュース記事から、いくつか拾い出したものを下に掲載します。
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↑ITVのニュースサイト2014年12月21日の記事
http://www.itv.com/news/story/2014-12-21/police-to-test-drivers-with-drugalyser-kits/
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↑Yorkshire Standardのニュースサイト記事2015年3月2日
http://www.yorkshirestandard.co.uk/news/explained-new-drug-driving-law-and-drugalysers-in-force-10496/
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Plymouth Heraldのニュースサイト記事2015年3月2日
http://www.plymouthherald.co.uk/plymouth-police-training-using-roadside/story-26104931-detail/story.html

もちろん、すべてのドライバーが簡易検査キットによる薬物検査を受けるわけではありません。警察官は、ドライバーの様子などを観察して、薬物使用の疑いがある場合には、まずアルコールの場合と同じように、片足立ちや線の上をまっすぐ歩くといった検査を行い、さらに疑いが強くなった場合には、簡易検査キットを使ってその場で検査します。綿棒で口のなかをぬぐってドライバーの唾液を提出してもらい、鑑定にまわしたり、ときには警察署に同行して、検査を行う場合もあります。

今のところ、こうした簡易検査キットで検出できる薬物は数種類に限られていますが、今後、キットの改良が進めば、多種類の薬物について検査することが可能になりそうです。

英国では、改正法の施行以降、従来の飲酒運転取り締まりに加えて、薬物運転の検査も積極的に行われるようになってきたといいます。

[参照]
薬物運転に関する英国政府の広報
GOV.UK>Drugs and driving: the law
https://www.gov.uk/drug-driving-law

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
処方薬と言っても、日本で言うところの法律で向精神薬指定されている薬剤ですね。

法律で向精神薬指定されていない向精神薬、例えばジプレキサなどの抗精神病薬はベンゾジアゼピン系よりも遥かに眠気やフラツキ、運動障害は強い。

それらが規制されない理由は依存性がないからであり、運転中の危険性は抗精神病薬のほうが遥かに強い。

抗精神病薬は今や抗うつ薬として使われる時代。市場規模は抗うつ薬よりも大きい。

調査していないだけで、交通事故の原因のかなりの割合が抗精神病薬だと思われる。

動物実験の結果(インタビューフォーム記載値)でも指定薬物より強力なのだから。

違いは依存性があるかないか。
A太郎
2016/08/16 14:10
ケタミンの基準値が20µg/L(=20ng/mL)

ケタミンの麻酔作用濃度は1µg/mL(1mg/kg静注時が相当)

ケタミンの基準値20µg/L(=20ng/mL)は、抗うつ薬として経口20mg摂取したときが相当すると考えられる。

となると同力価のアルツハイマー治療剤メマンチンの経口20mgもほぼ同等なのだから規制されるべき。

高齢者は認知症で事故を起こしているわけではなくて、薬の副作用なのです。

力価的に言ったらミノサイクリン200mgは即アウトなレベルです。鎮痛作用が出るわけですから。国は慢性使用を承認していなから国が規制に関与する必要ないという言い分はある。日本には第三者機関が存在しないため、被害実績の積み重ねとその数値の確認をしない限りは規制ができないという状態です。
A太郎
2016/08/16 14:19
人工知能、ディープラーニング、センサー技術などのテクノロジーによる自動運転等が実用レベルになれば、これらの多くの問題は解決するかもしれませんね。相遠くない未来のことだと思います。

血中濃度等で判定するのも問題ありですね。人により薬物の感受性は大きく開きがあるわけですから科学的ではないように思います。

lol again
2016/08/16 18:04

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