弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 麻薬撲滅の名の下の暴力|フィリピン

<<   作成日時 : 2016/08/04 23:56   >>

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6月末に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領は、断固として薬物犯罪抑止に向かう厳しい姿勢で、国民の圧倒的な支持を集めてきましたが、新政権が発足してわずか1月たらずで、「麻薬密売人または乱用者」として、400人以上が警察に射殺され、自警組織などによるものを加えると、700人以上が殺害されたという衝撃的なニュースが、世界をかけめぐっています。
新大統領は、麻薬犯罪の撲滅を宣言しましたが、その手段として、警察官と民間の自警組織の要員が麻薬犯を殺害することさえ容認し、報奨金を与えて積極的な取り組みを奨励しているともいわれ、国際人権団体などから批判されていました。

<ニュースから>*****
●フィリピン新政権、1カ月で麻薬容疑者400人射殺 恐れなした57万人が出頭 
就任から1カ月が過ぎたフィリピンのドゥテルテ大統領が、公約に掲げた「治安改善」をめぐり強権姿勢をあらわにしている。警察が400人を超える違法薬物の容疑者を現場で射殺。恐れをなした薬物中毒患者や密売人ら約57万人が当局に出頭するなど、取り締まりは一定の成果を上げているが、人権団体からは“超法規的殺人”との批判が上がっている。(以下省略)
産経ニュース2016.8.3 17:59
http://www.sankei.com/world/news/160803/wor1608030037-n1.html
*****

●世界を揺り動かした1枚の写真
7月下旬、マニラ市内で、麻薬密売人と疑われた若い輪タク運転手が射殺されました。街路に打ち捨てられた被害者の傍らには、段ボールの紙片に殴り書きされた「密売人」の文字。殺害者は明らかになっていません。
報道カメラがとらえたのは、被害者の恋人が亡骸をそっと抱き起こすシーンでした。女性の悲しみに満ちた表情の静けさは、かえって、この事件の背景にある暴力を浮かび上がらせていました。
この写真が、世界の有力紙の紙面に取り上げられ、人々の心を動かしたのです。

ところが、CNNのニュースによると、話題の渦中にあるドゥテルテ大統領は、この写真を大きく掲載した地元紙を手に、被害者に同情のかけらもみせず、「死にたくなかったら、(政府の姿勢を批判している)教会や人権団体の言い分を真に受けないでください。彼らは死をとめることはできない」と語ったといいます。
画像

↑CNNのサイトより
「生死にかかわらず:フィリピンの麻薬戦争はコントロール不能か?」August 4, 2016
http://edition.cnn.com/2016/08/03/asia/philippines-war-on-drugs/

●刑事施設は超過密
麻薬犯罪撲滅のためには、殺害をも辞さず・・・そんな強硬姿勢に、フィリピンでは麻薬密売人や乱用者が大挙して警察に自首しているといいます。
その結果、もともと収容能力が不足気味だった刑事施設が、一気に超過密状態になってしまいました。

下の写真は、マニラ近郊の拘置所で、体育館の床にまですし詰め状態で眠る入所者の様子が撮影されています。定員800人の施設に3800人が収容されているそうです。居室どころが、寝床さえ満足に確保できない状態だとか。
画像

↑TIME誌のサイトより
フィリピン、マニラ首都圏の刑事施設の超過密ぶりを報じている
http://time.com/4438112/philippines-overcrowded-prison-manila-rodrigo-duterte/

●不安定社会で旗印に使われる「麻薬撲滅」
1980年代、ベトナム戦争後の不安定な米国社会で、麻薬撲滅を掲げて強力な指導力を印象付けたのは、レーガン大統領でした。
薬物乱用防止を旗印に、青少年を巻き込んだ運動が社会の隅々まで広がりましたが、そのいっぽうでは薬物事犯への極端な厳罰化が進み、多くの若者が終身刑を言い渡されて、今も刑事施設で過ごしています。

米国ではその後、行き過ぎた厳罰政策への批判が高まり、薬物犯罪者に対する罰則の見直しも、少しずつ進展しています。また最近では、過度な長期刑を言い渡された人たちの早期釈放も進み始めました。
しかし、行き過ぎた刑事政策の巻き戻しに、実に40年近い時間を要したのです。

さて今度はアジアに飛び火した「薬物撲滅」のスローガン。
たしかに、アジア太平洋地域では、近年急速に覚せい剤の流通量が増え、薬物乱用が急拡大しています。加えて、世界的な景気後退で経済的な行き詰まり感も強まっています。

こんな時期に、またしても「麻薬撲滅」を旗印として掲げる人物が現れました。しかも、今度のリーダーは、法や人権さえ意に介さず、「麻薬撲滅」の名の下で、暴力的な粛清を推し進めていると批判されています。
このような大義名分は、おおいに疑ってかからなくてはなりません。

この問題に関しては、まだしばらくは、続報があることでしょう。国際機関の動きや、世界のメディアの報告に注意をはらっておくことにしましょう。

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コメント(1件)

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先生お体大丈夫ですか?ブログ更新だけでなく法廷手続きとかご多忙なのでは?ご無理しないでください
なるみん
2016/08/08 00:04

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