弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻樹脂が変わってきた|EUの報告書から

<<   作成日時 : 2016/06/16 23:52   >>

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EUの薬物問題研究機関EMCDDAが発表した、「2016年版ヨーロッパ薬物報告書European Drug Report 2016」のなかに、大麻樹脂に関する興味深い考察があります。
室内栽培の高THC大麻の普及によって、ヨーロッパの大麻市場は、いま、大きく変貌していますが、その潮流の中で、大麻樹脂にも変化が生じているというのです。
この部分を特集した記事セットの内容をかいつまんで紹介します(下記参照@、A)
画像

↑EMCDDAのサイトから
2016年版ヨーロッパ薬物報告書のトピック記事(下記参照A)

●モロッコ産の大麻樹脂
大麻草の花穂や若葉の腺毛部分は、各種カンナビノイド成分を豊富に含む樹脂状の粘液を分泌します。雌株の大麻草の花穂部分には、とくにこの腺毛が密集しているので、この部分に手を触れると、分必された成分でべとついた感触があるほどです。
この樹脂状の分泌成分を集めて固まりにしたものが、大麻樹脂です。大麻樹脂は、大麻の成分を濃縮した製品で、乾燥大麻よりTHC濃度が高く、また運搬や保管がしやすいことから、古くから用いられてきました。

従来、ヨーロッパでは、とくに大麻樹脂が好まれてきました。
ヨーロッパで出回る大麻樹脂は、そのほとんどが北アフリカのモロッコ産だといわれています。1980年代以降、モロッコ産の大麻樹脂は、ヨーロッパの大麻を代表するものだったと言ってもよいでしょう。

ところが、ヨーロッパでは、21世紀に入ったころから、室内栽培された乾燥大麻の流通量が急増しています。室内栽培用に、高THCタイプの交配品種が次々と生み出され、ブランド化された種子や苗として供給され、ヨーロッパ区域内で乾燥大麻が生産されているのです。
その結果、今やヨーロッパの大麻市場では、高THCの新しい品種の人気が高まり、モロッコ産の大麻樹脂の人気は色あせてしまいました。
現在では、EU加盟国の多くでは、ヨーロッパの乾燥大麻の消費量が、大麻樹脂を上回っています。

では、大麻樹脂は、ヨーロッパの市場から駆逐されてしまったのかというと、意外にも、しっかり生き延びているらしいのです。どうやら、室内栽培の乾燥大麻に対抗して、大麻樹脂も変化を遂げ、新たな市場に適応しはじめているようです。

●高THCタイプへの変貌
近年、ヨーロッパの大麻樹脂に、大きな変化がみられるといいます。
その第一は、まずモロッコの生産地にあらわれた変化です。大麻樹脂の製造が集中的に行われているのは、モロッコ北部のリーフ山岳地帯ですが、この地域での大麻栽培面積は、2003年ころから一貫して減少しているといいます。
しかし、その一方で、栽培される大麻の品種が、従来のキフ種からTHC含有量の多い交配種に切り替わり、栽培面積当たりの大麻樹脂の生産量は数倍に増えているという指摘もあります。

変化の第二は、ヨーロッパで押収される大麻樹脂の形状が、変わったことです。
従来のモロッコ産大麻樹脂は、通称「石けん」と呼ばれる細長い角型のもので、1個が平均250グラム、表面に刻印のある形状が、浴用石けんを大型にしたように見えるところから、この名前で呼ばれてきました。
ところが、数年前から、このタイプが姿を消し、替わって、1個平均200グラムの球状のものや、100グラムのタブレット型、10グラムのペレット型といった形状の大麻樹脂が押収されるようになってきました。
画像

↑ヨーロッパで押収された大麻樹脂のTHC濃度
下記参照@の報告書3ページより転載

変化の第三は、大麻樹脂のTHC濃度が次第に上昇していることです。
従来タイプのモロッコ産大麻樹脂のTHC濃度は、当時の乾燥大麻より高いとはいえ、せいぜい8〜9%程度のもので、10%を超えるTHC濃度の交配品種が普及し始め、室内栽培した乾燥大麻のTHC濃度が上昇し始めるとともに、大麻樹脂は魅力を失いました。
ところが、2010年ころから、ヨーロッパで押収される大麻樹脂にTHC濃度の高いものが目立ち始め、その傾向は年を追って強まっています。たとえば、フランスで2014年に押収されたモロッコ産大麻樹脂のTHC濃度は、平均で20.7%にもなっています。
おそらく、生産方法が変化したのだろうと報告書は示唆しています。モロッコの産地では、従来は、手作業レベルの選別によって樹脂成分を選り分けていたため、花粉や植物片が混入し、THC濃度を下げる要因となっていました。近年では、冷水やドライアイスを使って樹脂成分を選別する方法で、混入物の少ない状態で樹脂成分を選別することもできます。

ヨーロッパでは、大麻樹脂と言えばモロッコ産というのが通り相場です。しかし、近年では、従来のモロッコ産とはいろんな点で異なる大麻樹脂が出回っているようです。
「モロッコ産大麻樹脂」として取引されていますが、果たしてモロッコで生産されたものかどうか、定かではありません。報告書は、ヨーロッパ区域内で生産されている可能性にも触れています。

いずれにせよ、この記事を読んで、変貌し続けるヨーロッパの大麻市場に向けて、供給される大麻樹脂もまた変化していることに、改めて気づかされました。
わが国では、目下のところ、大麻の輸入摘発が少ない状態が続いていますが、新たな強みを備えた大麻樹脂の国際流通量が増えれば、わが国への流入にも警戒しなければなりません。なにしろ、大麻樹脂は長距離の運搬に向く性質を備えた製品なのですから。

[参照]
@2016年版ヨーロッパ薬物報告書European Drug Report 2016
EMCDDA、2016年5月31日
http://www.emcdda.europa.eu/system/files/publications/2637/TDAT16001ENN.pdf
AEMCDDAサイト内情報「ヨーロッパにおける大麻樹脂の変化」
Changes in Europe’s cannabis resin market
http://www.emcdda.europa.eu/topics/pods/cannabis-resin-market-europe
B大麻樹脂の製造工程がよくわかるVTRが上記Aのページ内にあります
Cannabis resin production explained
https://www.youtube.com/watch?v=lPYx64Tl4jg

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
警戒って馬鹿馬鹿しい。
多くの弁護士が社会福祉などの弱者に向けた活動をしてる最中に官権の手先のような・・・

グアムで大麻が解禁されたら、どっと観光客が押し寄せて、もう大麻は危険ですなんて誰も言えないよ。
ただでさえ政府は嘘ばかり並べてるのがばれてるのに、もう誰も政府の言うことなんか信用しない。

政府の言うことを信ずる者、馬鹿ばかりということになる。
m
2016/06/17 08:35
大麻解放論者は、政府の長年の過剰なまでの大麻バッシング、プロパガンダ、に逆ギレして大麻の悪い側面を見ないようにしていると思います
実際オランダやアメリカに長く住んでいれば大麻の悪影響ははっきり分かります
違法がいいのかはさておき、大麻常用者はボケた痴ほう症もどきの若者ばかりです
貴族
2016/06/20 10:33
なるほど、そうかも知れませんね。
アルコール、タバコでもそうですが、
節度というか、配慮というか、それができないと
結局、自らを苦しめることにもなる。


m
2016/06/22 10:19
グアムで日本人も医療大麻の治療が受けられるって本当ですか?この頃若年性乳がんの話題が多いので、すっごく関心があります。日本も医療大麻解禁するべきなのでしょうか?
沙矢
2016/06/23 21:26
医師の管理のもとで大麻の有効成分を使用するのであれば
多くの患者さんが救われるのではないでしょうか。
癌や認知症にも効果があるそうです。
熱帯雨林の中にある不治の病を治す薬草ってこれなのかもしれないと猪豚的直感で思ってしまうのです。
皆様はどう思われますか?
沙矢
2016/06/25 16:00
アヤワスカかな?あれ紙より凄いらしいね
貴族
2016/06/26 01:40
大麻の有効成分を活用することで膨大な医療費が削減できるのではないでしょうか。保育所増やすとか福祉にお金を使えます。250種類もの病気が治るのだそうです。
沙矢
2016/06/27 23:48
日本での合法化は今まで大麻で刑務所いった人の整合性が取れないので
難しいのではないでしょうか
アメリカではイリーガル時代でも常習犯でも罰金か社会奉仕活動でした
しかし日本では1回で執行猶予付きの実刑、二回目で実刑が相場でした

アメリカのように元々個人使用目的の大麻所持は全く社会的ダメージを受けない程度なら、うまく合法化にもっていけそうですが
日本だと今更大麻は無害ですじゃ、今まで大麻で懲役いってきた数万人の人に、どう補償していくんだって話になりますし
なまけもの
2016/06/30 22:48
いつも読ませていただいておりとても勉強になっております。覚醒剤事件等でお忙しいのかブログの更新が無いので寂しく思っております。

関係ないですが機会がありましたら、日本の薬物の法律について、その構造、運用、量刑、判決等は他の先進国と比べてどう違うのか、特に問題点等も含めてまとめていただくと、偏見のない薬物への視点が育成されていいと思うのですが。

今まで私が読み始めてからは随所随所に世界と比較するコメントを拝見させていただいていて、実際日本の薬物に関する法律は妥当性(正当性?)は担保されているかについて疑問を持っております。

薬物の広い範囲に精通している司法従事者としての視点でのレポートがあるととても参考になると思います。
よろしくお願いいたします。
lol again
2016/07/02 05:35
世界の流れのなかで、日本でもカンナビノイドが「有益な医薬品」として病院で処方される日がくることを願っています。きっと多くの日本人が幸せになれると思うのです。
沙矢
2016/07/02 22:00

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