弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 続・芸能界での薬物検査はありうるか

<<   作成日時 : 2016/04/04 17:11   >>

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元有名選手の薬物事件を受けて、芸能やプロスポーツの世界では、薬物乱用防止活動への取り組みが話題になっています。この際、薬物検査を導入してはどうかという話題も、繰り返されているようです。
職場での薬物検査は、欧米では、一般企業でも幅広く実施されていますが、日本では、公共交通機関の職員や、国土防衛にあたる自衛隊員などに対して、ごく限定的に導入されてきました。一般企業や芸能関係にはなじまないイメージでした。
でも、昨年公布された、個人情報保護法の一部改正によって、そんな見方も変わるかもしれません。

●プライバシー保護との関係
憲法13条に基づく個人の私生活上の自由として、人は、みだりに私的生活領域へ侵入されたり、他人に知られたくない個人的な情報を公開されたりしない自由を保障されています。

個人的な情報のなかでも、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などは、取り扱いを誤ると、本人に対する不当な差別、偏見につながるおそれがあり、とくに慎重に取り扱うべきものとされています(センシティブ情報)。
昨年公布された個人情報保護法の一部改正では、こうした情報を「要配慮個人情報」とし、本人の同意を得ない取得を原則として禁止し、本人の意図しないところでの第三者に提供されることがないよう、新たな規定が設けられました(下記参照@)。

<要配慮個人情報の定義>
この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう(改正法2条3項)。

さて、尿を試料とした薬物検査が、ここでいう「要配慮個人情報」に含まれるかについては、現時点では明確な情報はありません。前述したように、欧米では、薬物検査に関する情報は健康管理上の情報であり、とくに慎重な取り扱いが要求されるセンシティブ情報とみなされていますが、日本ではどのように解釈されることになるか、今後の展開を見ていく必要があります。

ただし改正法では、本人の事前の同意がなくても、事業者が「要配慮個人情報」を取得することができる場合として、挙げている中に、
  「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」
という条項があります。アルコール検査や薬物検査も、公衆衛生の向上のために行われるものであり、この条項に従えば、本人の同意がなくても、事業者は検査を行うことができることになります。

いずれにしても、これまで明確な規定を欠いていた職場でのアルコール検査、薬物検査について、改正法は、配慮の必要なプライバシーとして慎重な取り扱いを求めながらも、新たな位置づけを与えているように思われます。改正法の施行とともに、様々な職場で薬物検査の検討が進められることになるかもしれません。ガイドライン等の改正を待ちたいと思います。

●薬物検査が向く職場
これまで、わが国では、職場でアルコール・薬物検査を行う際にその背景となる法律上の明確な規定がなかったために、その導入は控えめでした。憲法が保障する個人のプライバシーをある程度制約しても、アルコール・薬物検査を行うべき職場となると、自衛隊や公共交通機関といった職場が中心で、一般企業での導入はごく限られていたのです。

2000年に厚生労働省が公表した「労働者の個人情報保護に関する行動指針」でも、
  「使用者は、労働者に対するアルコール検査及び薬物検査については、原則として、特別な職業上の必要性があって、本人の明確な同意を得て行う場合を除き、行ってはならない。」
とする規定が盛り込まれていました(下記参照A)。
なお、この指針は、個人情報保護法が制定・施行される前に研究会の考え方をとりまとめたもので、あくまで参考情報ととらえるべきものでしょうが、それなりの影響力をもってきたと思います。
同指針の解説によると、「特別な職業上の必要性」がある場合とは、「パイロットやバス、トラック等の輸送機関の運転業務に従事する者に対してアルコール検査を行う場合や医師、薬剤師等の医療職等に対して薬物検査を行う場合」が想定されており、一般事業所での導入はふさわしくないという風潮もあったと思います。

いっぽう、個人情報保護法の一部改正で新設された「要配慮個人情報」では、センシティブな情報として慎重に取り扱いをする限り、仕事の性質などによって限定されないのです。
マスメディアなどを通じて、社会一般に対して強い影響力を持つ芸能関係、報道関係といった職場でも、職場での薬物検査を検討するケースが出て来るかもしれません。

[参照]
@個人情報の保護に関する法律(改正後の全面施行版)
要配慮個人情報については17条2項・現時点では未施行
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/personal_law.pdf
A労働者の個人情報保護に関する行動指針
http://www2.mhlw.go.jp/kisya/daijin/20001220_01_d/20001220_01_d_shishin.html

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