弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS シバガスがようやく指定薬物に

<<   作成日時 : 2016/02/20 17:47   >>

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2月18日、厚生労働省は一酸化二窒素(別名:亜酸化窒素)を新たに指定薬物に指定したと発表しました(下記参照@)。

一酸化二窒素は、日本で販売された製品のブランド名から「シバガス」と呼ばれ、乱用目的と思われる販売が行われるなどしてきました。昨年9月、厚生労働省はこれら製品に対する指導取締まりを強化する方針を打ち出し、さらに10月には、指定薬物として規制すると発表してきました。
当初の予定では、パブリックコメントを経て、12月上旬に指定薬物とする省令を公布することになっていましたが、それがようやく動き出したわけです。

【指定の対象】
指定薬物名称・・・一酸化二窒素
通称等・・・・・・亜酸化窒素 Nitrous oxide
【施行の日】
2月28日

一酸化二窒素は、医療用の麻酔薬、食品添加物、様々な工業用材料など多方面で実際に使われています。こうした用途での利用を妨げることなく、乱用目的での使用を規制するのですから、今回の指定には、多くの難関があったことでしょう。
じっさい、パブリックコメントでは、現にこの物質を利用している立場からの要望や確認なども含め、多くの意見が寄せられています(下記参照A)。

●規制されたもの、規制から除外されたもの
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律は、「疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの」を「医療等の用途」とし、指定薬物について、それ以外の用途での製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、使用を禁止しています(76条の4)。
言い換えれば、省令で定められた「医療等の用途」に用いる限りは、指定薬物としての規制は受けないのです。

「医療等の用途」には、すべての指定薬物に共通する用途のほか、指定薬物を指定する際に個々の物質ごとに定められるものがあります。
これまでの指定では、共通する用途のほかに、指定薬物ごとに1、2項目が定められる程度だったのですが、今回の一酸化二窒素(別名:亜酸化窒素)に関しては、共通する用途のほかに8項目の用途を定めています。この物質が多方面で実際に活用されていることから、このような規定になったのでしょうが、除外される項目が多くなったことで、いったい何が禁止され、何が除外されるのか、いささかわかりにくくなってしまいました。
ここで、要点を簡単に整理しておきましょう。なお、以下は今回の省令(官報掲載)を読み、過去の関連通知などを参照して、私なりに解釈したものです。もし、解釈が間違っている点や疑問があれば、どうかご指摘ください。

【泡立て調理用のガス】
■食品衛生法の規定に沿ったボンベ入りは規制から除外
一酸化二窒素は、ホイップクリームなどの泡立て調理器具用のガスとして使われ、食品添加物として認可されています。
今回、一酸化二窒素を指定薬物に指定するにあたって、「食品衛生法 (昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物の用途」に用いる場合については、指定薬物としての規制は受けないと定められています。
ただし、食品衛生法では、乱用を防止するために「一般的に容易に販売されるようなカートリッジ式の耐圧金属製密封容器に入れた亜酸化窒素については、成分規格外としてその使用を認めない」とされています(下記参照B)。つまり、重量のあるボンベ入りなどの形でガスが供給される、規格に合った製品に限っては、これまで通りに使用できるということになります。
■小型容器入りは規制対象に
これまで、乱用目的で出回ってきたのは、主に、手のひらに入るサイズのカートリッジ式小型容器にガスを充てんした製品でした。これは本来、泡立て調理器具用のガス「ホイップチャージャー」として販売されているものですが、乱用目的でも使われてきました。
上述したように、こうした小型容器入りの製品は、食品添加物として規格外のものですから、指定薬物として規制されることになります。
施行日以降は、下の写真のような容器に充填された一酸化二窒素は、指定薬物として取締まりの対象になります。
画像

↑規制対象となる小型容器入りの一酸化二窒素製品
厚生労働省サイト内「新たに指定薬物となる物質を含む危険ドラッグ製品例」より転載
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/160218-01.pdf

なお、一酸化二窒素が指定薬物に指定された同じ日に、小型容器で一酸化二窒素を販売した、インターネット販売会社経営者が逮捕されたというニュースがありましたが、食品衛生法で定められた規格外の製品を販売したとして、食品衛生法違反に問われたものです(下記参照C)。

【医療用麻酔薬】
■正規の医薬品として承認されたものは規制対象から除外
一酸化二窒素は、従来から、「笑気ガス」として医療用の麻酔薬に使用されています。これは正規の医薬品であり。その製造・流通は承認を受けた業者の手で行われています。
こうした正規の医薬品を取り扱う場合は、指定薬物としての取締まりから除外され、従来通りに取り扱うことができます。
なお、「笑気ガス」は処方せん医薬品なので、医師の処方せんがなければ購入することはできません。
■それ以外のものは規制対象に
同じ一酸化二窒素であっても、日本で承認を受けていない製造者が製造したものや、正規の医薬品販売業者以外が販売するものを扱えば、指定薬物として取締りの対象になります。また、外国で医療用に使われている製品でも、医薬品として日本に輸入し、国内で販売することが認められていない製品を個人輸入することも、禁止されています。

【その他】
一酸化二窒素は、工業用、あるいは学術研究用としても様々な用途に使われているため、今回の指定では、以下の項目が「医療等の用途」として掲げられ、各用途で取り扱う場合は指定薬物としての取締まりが適用されないと定めています。
・元素又は化合物に化学反応を起こさせる用途 
・学術研究又は試験検査の用途(ただし、第1号に掲げる者における場合を除き、かつ、人の身体に使用する場合以外の場合に限る。 )
・工業用の洗浄剤の用途
・電気絶縁の用途
・噴射剤の用途
・冷媒の用途
なお、こうした用途に用いるために一酸化二窒素を販売する際には、販売者は、購入者の氏名及び住所、用途、目的等を確認するよう義務付けられています。また、こうした用途のために一酸化二窒素を輸入する際には、輸入監視要領に従った手続きが必要です(下記参照D)。


●参考:一酸化二窒素について定められた「医療等の用途」
【すべての指定薬物に共通する用途】
(1)次に掲げる者における学術研究又は試験検査の用途
[1] 国の機関
[2] 地方公共団体及びその機関
[3] 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する大学及び高等専門学校並びに国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第4項に規定する大学共同利用機関
[4] 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人及び地方独立行政法人(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人
(2)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第69条第4項に規定する試験の用途
(3)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第76条の6第1項に規定する検査の用途
(4)犯罪鑑識の用途

【一酸化二窒素についてのもの】
1 疾病の治療の用途(法第14条若しくは第19条の2の規定による承認を受けて製造販売をされた医薬品又は法第14条の9の規定により届出をして製造販売をされた医薬品を使用する場合に限る。 )
2 元素又は化合物に化学反応を起こさせる用途 
3 学術研究又は試験検査の用途(ただし、第1号に掲げる者における場合を除き、かつ、人の身体に使用する場合以外の場合に限る。 )
4 工業用の洗浄剤の用途
5 食品衛生法 (昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物の用途 6 電気絶縁の用途
7 噴射剤の用途
8 冷媒の用途

[参照]
@厚生労働省サイト内「一酸化二窒素(別名:亜酸化窒素)を新たに指定薬物に指定します」2016年2月18日
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html
Aパブリックコメント 結果公示案件
「「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令の一部を改正する省令」(案)に関する意見募集の結果について」2016年2月18日公示
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495150202&Mode=2
B厚生労働省通知「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」2005年3月22日、食安発第0322001 号
CNHKニュース「規格外ボンベで亜酸化窒素販売か 女を逮捕」2016年2月18日 20時32分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160218/k10010414151000.html
D厚生労働省通知「薬事法第2条第14項に規定する指定薬物及び同法第76条の4に規定する医療等の用途を定める省令の制定について」2007年2月28日、薬食発第 0228006 号

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