弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS オーストラリアで覚せい剤大量密輸を摘発|狙われるアジア太平洋市場

<<   作成日時 : 2016/02/18 05:19   >>

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覚せい剤(メタンフェタミン)乱用が深刻さを増しているオーストラリアで、大型の密輸摘発が発表されました。
捜索押収が行われたのは昨年12月下旬のこと、4か所の倉庫から押収された絵の具や接着剤、さらに香港から到着したコンテナ貨物内からは、ブラジャーに装着するジェル状パッド・・・、さまざまに偽装された液体状覚せい剤がみつかり、合計720リットルに及びました。

<ニュースから>*****
●ブラジャーから覚せい剤=大量密輸で4人逮捕−豪
【シドニー時事】オーストラリア連邦警察は15日、液体状にした大量の覚せい剤をブラジャーや絵の具、接着剤に隠して船荷で輸入したとして、中国や香港の男女4人を逮捕したと発表した。
押収量は、乾燥した覚せい剤が2キロ、液体状が720リットル。キーナン司法相は「末端価格は12億6000万豪ドル(約1000億円)相当」と指摘した。液体状の覚せい剤押収としては豪国内で過去最大という。
時事ドットコム 2016/02/15-16:02
*****
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↑大量押収を報じるオーストラリアのニュースサイト
Sydney Morning Herald(February 16, 2016)
http://www.smh.com.au/national/ice-worth-1-billion-seized-in-joint-crime-group-operation-20160215-gmu4nz.html

近年、オーストラリアで覚せい剤密輸の大量押収が報じられると、その仕出し地として頻繁に登場するのが香港や中国の名です。この事件でも、逮捕されたのは、香港および中国籍の男女4人だといいます。
中国・香港ルートが目立っている事情は、日本でも同じこと。この10年ほど、密輸覚せい剤の仕出し地がどんどん多様化しているとはいえ、依然として、中国・香港ルートは常に上位に名を連ねています。

香港とその近傍に位置するシンセンあたりは、アジア太平洋地域の覚せい剤流通のハブ基地になっているとみられています。世界中で密造された覚せい剤がこの地に集められ、ここを起点に、再び世界の各地に密輸されていくのです。

オーストラリアと日本は、ともに同じ地域から、同じ覚せい剤を供給されているわけです。しかも、周囲を海に囲まれている条件も同じとなると、当然、密輸の手法も同じようなものになるはずです。オーストラリアで摘発された同じ手口、同じ隠匿手法のものが、日本にも届いているとみるのが自然でしょう。
液体状の覚せい剤が様々な形に偽装され、香港から到着する大量の貨物にまぎれて、すでに日本にも送り込まれているのではないでしょうか。
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↑世界の覚せい剤の流れ
国連犯罪事務所編「2015年版世界薬物報告書」より転載(下記参照@)

●日本、オーストラリア、韓国がアジア太平洋地域の3大市場
世界の各地で乱用されている覚せい剤ですが、なかでも需要と流通が集中しているのがアジア太平洋地域です。
この地域の流通動向を左右しているのが日本、オーストラリア、韓国の3国で、覚せい剤の3大マーケットを構成しているのです。

この3大市場は、とてもよく似た性格をもっています。
まず、覚せい剤の末端密売価格が、世界でも群を抜いて高値である点です。アジア圏では、薬物の末端価格をきちんと統計化する体制が立ち遅れているため(日本も含めて)、比較は難しいのですが、ざっくり比べてみましょう。

日本では、警察などが公式に発表している覚せい剤の末端価格は、1グラム当たり7万円、私の私見による実勢価格は3〜5万円程度です。
韓国では、日本よりやや高めで取引されているようです。
オーストラリアでは、昨年3月に政府機関が発表した覚せい剤問題の報告書によると、日本円に換算して、1グラム当り54,000円(下記参照A)。また同国の報道をみると、警察発表の数字は、これより高く、1グラム当たり11万円ほど。実勢価格は、日本と同程度か、やや高めとみてよいでしょう。

これは、世界でも際立った高価格です。日本の公式な末端価格を基準にしてみると、覚せい剤の巨大市場であるアメリカ合衆国や中国に比べて2〜3倍、フィリピンやタイの7〜8倍という水準なのです。
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↑アジア地域での覚せい剤末端価格の比較
国連薬物犯罪事務所の2015資料より転載(下記参照B)

この3大市場には、覚せい剤への強い需要があり、際立った高価格で取引され、しかも国内には緻密な密売ルートが張り巡らされ、相当な量を売りさばく能力もあります。これは、供給側にとっては、かけがえのない魅力にあふれた市場ということになります。
供給側にとっての難点があるとすれば、海に囲まれているため、水際の守りが固いことで、国力に相応した新鋭の装備で通関検査が行われるため、雑な手口で密輸品を隠しても、すぐに発見されてしまいます。

検査装置の高度化に対応して、当然、密輸のための隠匿・偽装にも次々と新たな手口が登場し、イタチごっこを展開しています。
目下のところ、最新の攻防点のひとつが、液体状での覚せい剤密輸で、エックス線検査装置が大型化し、高性能化するのに対抗して、検査の目をすり抜けるための手口として、急速に広まっているようです。

この攻防戦を勝ち抜き、覚せい剤密輸を阻止する決め手は、おそらく、情報の活用でしょう。同じルートから送り込まれる消費国どおしの連携、仕出し地側との情報交換、情報の間口を広げることで、防止効果は大きく向上するはずです。
とりあえず、私も、オーストラリアから発信される密輸摘発のニュースに、もう少し敏感になってみることにしましょうか。

関連の過去記事
@国連犯罪事務所編「2015年版世界薬物報告書」
UNODC, World Drug Report 2015(上記グラフは68ページ)
https://www.unodc.org/documents/wdr2015/World_Drug_Report_2015.pdf
Aオーストラリア犯罪委員会の報告書
The Australian methylamphetamine market
https://www.crimecommission.gov.au/publications/intelligence-products/unclassified-strategic-assessments/australian-methylamphetamine
B国連薬物犯罪事務所の2015資料
The Challenge of Synthetic Drugs in East and South-East Asia and Oceania(上記グラフは8ページ),
https://www.unodc.org/documents/southeastasiaandpacific/Publications/2015/drugs/ATS_2015_Report_web.pdf

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