弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 英国で精神作用物質全面禁止法が成立

<<   作成日時 : 2016/02/28 15:48   >>

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英国の国会で審議されていた、精神作用物質法2016(Psychoactive Substances Act 2016)が成立し、今年4月に発効することになりました(下記参照@)。
英国は、世界を巻き込んだ今次の危険ドラッグ禍で最も深刻な影響を受けた国のひとつで、相次いで対策が投入されてきたにもかかわらず、危険ドラッグの蔓延を抑えることがなかなかできず、国民の間にはもっと徹底した対策を求める声もあがっていました。そのなかで、先の総選挙で、危険ドラッグ全面禁止策の導入を公約のひとつに掲げて戦った与党が、公約実現策として議会に提出したのが、この法案です。
薬物規制のあり方を大きく変えるかもしれない新法が、英国で誕生したわけです。

この法令は、精神作用を生じるあらゆる物質を規制対象として、その輸入、製造、販売などを禁止するものです。
<精神作用物質法が定める罪と罰則>
画像


●精神作用物質を包括的に規制
制定された法律の§2は、この法令が規制する対象を示していますが、その規定に従えば、きわめて広範な物質が規制の対象となります(下記参照A)。
*****
§2 「精神作用物質」等の意味
(1)この法令において「精神作用物質」とは、
  (a) 人がこれを摂取すると精神作用を生じることができ、かつ
  (b) 除外される物質に当らない(§3参照)
 あらゆる物質をさす。(筆者による私訳)
*****
規制対象から除外される物質が、別表に示されていますが、そこに記載されているのは、薬物乱用法(Misuse Of Drugs Act 1971)によって規制されている物質、医薬品、アルコール、ニコチン、カフェイン、食品など。民間療法で使われる薬草など、医薬品や食品の定義に含まれるかどうか、すぐにわからないものも少なくありません。

英国では、余りにも漠然としているこの定義をめぐって議論が沸騰してきました。世論はこぞって、規制の範囲が不明確であると糾弾し、また、薬物規制に関して科学的な助言を行う諮問委員会(ACMD)からも、定義規定の見直しが進言されました。
しかし、政府はあくまでも、抜け穴をつくらないことを優先課題とし、全面規制の姿勢を崩すことなく、法案を目指してきました(下記参照B)。

この法令によって新たに規制対象となるものとして、国会審議の過程で、規制の是非が具体的に検討されてきたものもあります(下記参照C)。
たとえば、亜硝酸エステル(いわゆる「ラッシュ」)に関しては、ゲイのコミュニティでその使用が広まっていることから、これを規制すれば、より危険な薬物の使用を招く結果になるという専門家の意見も示されましたが、政府は科学的な根拠を検討したうえでこの物質を除外対象にしないという結論を出しました。

また、最近日本でも指定薬物に加えられた一酸化二窒素(いわゆる「シバガス」)は、日本の場合と同様、英国でも食品添加物として認可されていて、この法令の規定によると、規制から除外されることになります。しかし、食品添加物としての用途から外れて販売されるものは、あくまで規制対象であり、販売者は、実際に食品添加物として使われているかどうかを確認するよう求められることになるだろうといいます。

●法制定を待たず事態は好転し始めている
この法案が議会に提出されたとき、英国メディアはこの話題を大きく取り上げ、様々な意見を表明してきました。当時、英国ではまだ危険ドラッグによる健康被害が発生していて、社会の関心も高かったのです。
しかし、長期にわたる審議が続いている間にも、自治体ごとに、緊急命令措置などを使って危険ドラッグ販売店を閉鎖する努力が続き、また世界的にも危険ドラッグ市場の拡大ペースが頭打ちとなり、市場そのものが縮小し始めました。危険ドラッグをめぐる情勢は、急速に好転し始めたのです。

今年1月末にこの法案が議会を通過した時、英国社会は、もはや危険ドラッグを喫緊の課題と受け止めていなかったようで、主要メディアの報道はごくわずかでした。

日本でも、法改正が行われた時に、同じような状況が起きていたことが思い出されます。法律による薬物規制は、とかく、火急の場面に間に合わないこともありがちです。火急の状況に引きずられて、近視眼的な法改正や新法の制定を求めるのは、考えものということでしょうか。

[参照]
@英政府の広報
Landmark law to tackle psychoactive substances passed(28 January 2016)
https://www.gov.uk/government/news/landmark-law-to-tackle-psychoactive-substances-passed
A法令の本文
Psychoactive Substances Act 2016 - Legislation.gov.uk
http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2016/2/pdfs/ukpga_20160002_en.pdf
B内務大臣からACMD議長への返答書簡
Home Secretary letter to ACMD chair: Psychoactive Substances Bill(27 October 2015)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/471366/2015_10_27_HS_-_Prof_Les_Iversen__Psychoactive_Substances_Bill_.pdf
CPsychoactive substances Contentsに関する国会委員会記録
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm201516/cmselect/cmhaff/361/36107.htm#_idTextAnchor028
Dサイト内関連記事
「英国が、危険ドラッグ全面禁止法案|続報」2015/05/31
http://33765910.at.webry.info/201505/article_13.html

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英国は、日本と同じ島国です。

大雑把な米国人と違い、例えば約束の時間に遅れない等の、几帳面さが特徴の英国人。

ロンドン市民の生活感、気質等も、なんとなく都区内住人に似ています。

ピカデリーサーカス周辺等、夜間繁華街の街頭で、中東系、アフリカ系の外国人が立って、何か物を販売している様子も、都区内繁華街に似ています。

日本が英国の薬物対策をベンチマークしたら、何か役立つ場面が有るのではと思います。
又は英国が、日本の対策をベンチマークしたら、同じ島国特有の、何らかの成果物を得られることでしょう。

神流美 王井門
2016/03/09 00:32

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