弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 米の薬物対策、処方薬が重点|向精神薬問題・続

<<   作成日時 : 2015/11/07 00:56   >>

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つい先日、米連邦の麻薬取締局(DEA)は、2015年版の「薬物脅威分析」報告書を発表しましたが、そこでは、現在の米国を脅かしている薬物のトップとして、処方薬が挙げられています(下記参照@)。
以前は、米国で最も問題とされてきた薬物はコカインとされ、対策の重点もコカインに置かれてきましたが、この流れが変わり始めたのは2012年頃のことで、上記の「薬物脅威分析」報告書でも、2013年版以降、処方薬が米国を脅かす薬物の第一と捉えています。
なぜ処方薬が問題なのか、2015年版の報告書は、その理由を次のように説明しています。「米国全体で、毎日120人が薬物のオーバードーズで死亡している。とくに問題なのは、処方薬による死亡者が、コカインとヘロインによる死亡者の合計を上回っていることである。また、オピオイド鎮痛薬使用者のなかには、ヘロインを使い始める者もあり、ヘロイン乱用者の増加につながっている。こうした理由から、処方薬とヘロインは、米国にとって最も重大な脅威に位置付けられている。」(報告書巻頭のサマリーより)
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↑2015年版「薬物脅威分析」報告書

●乱用されるオピオイド鎮痛薬
処方薬・・・、有用な医薬品として使われているが、使い方を誤ると有害な作用があるため、法規制を受けている薬物で、医師の処方せんがなければ入手することはできません。日本でいう医療用麻薬や向精神薬と同じようなものと考えてよいでしょう。
米国でいま問題になっているのは、オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬で、患者の痛みを和らげるために処方されるのですが、それが本来の患者の手を離れて別人に渡り、乱用薬物として使われ、様々な問題が起きています。
薬物使用実態調査(The National Survey of Drug Use and Health)によると、米国で最も乱用されている薬物は大麻ですが、第2位には処方薬が上がっていて、3位のコカインを大きく引き離しています。2013年調査では、過去1か月以内に、正規の医療目的外で処方薬を使用した人は、全米で648万人と推計されています。
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↑過去1か月以内に乱用した薬物(The National Survey of Drug Use and Health調査による)

処方薬乱用が広がることによる何よりの問題は、中毒事故の多発です。米国では、オピオイド鎮痛剤に関係した中毒事故による死亡者が2010年ころから急速に増え、2013年では16,235人、この数字は、コカイン中毒による死亡者(4,944人)と、ヘロイン中毒による死亡者(8,257人)の合計を上回るものです。
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↑主な薬物の中毒による死亡者数(2007−2013年)
上段から順に、オピオイド鎮痛薬、コカイン、ヘロインによる中毒死者数を表しています。

●安易な過剰処方への対策
医薬品の正規流通ルートから横流しされたり、盗みだされたりした処方薬が、不正ルートで販売されることもあります。しかし、こうした不正行為によってヤミ市場に流れ出す量は、正規流通量の1%以下にすぎません。鎮痛薬の氾濫を招いている真の原因は、なんといっても安易な過剰処方にあります。
なかには、満足に診察せずに大量の鎮痛薬を処方したり、医療知識のない従業員に大量の処方せん発行の実務を任せたりする悪質な診療所もあり、ピルミル(クスリ製造所)と呼ばれてきました。いっぽう、患者の側にも問題があります。ドクターショッピングを重ねたり、安易に大量処方してくれる診療所を利用したりして、大量の鎮痛薬を入手して、闇市場で売りさばく問題患者も少なくないといいます。
かつて、フロリダ州南部には、オキシコドンを大量処方する悪質診療所が集中し、米国一のピルミル地域となっていました。2009年には、処方薬中毒による死亡者が、同州の異常死亡者の8分の1を占めるまでになりました。
この状況を打開するため、当局は悪質診療所の摘発に力を注ぎ、また、処方薬監視システムを導入して患者への多重処方の防止に努めました。その結果、2013年には州内で処方されるオキシコドンが、2010年対比で51%減少し、オキシコドンによる中毒死も27%減少、フロリダ州のピルミル問題は大幅に改善したといいます。
しかし、これで問題が解決したわけではありません。報告書は「フロリダ州で処方薬監視システムが導入された後は、ピルミル医師の多くが、ジョージアやマサチューセッツなどの他州へ移動し始めた。」と指摘しています。

じっさい、最近のDEAサイトには、全米各地で処方薬の不適正な処方で医師や関係者が摘発されたというニュースが頻繁に掲載され、つい最近では、ロサンゼルスの医師が医学的に正当な理由なく大量の処方薬を処方した結果、患者3名が中毒死するに至り、殺人罪に問われ、有罪の判決を受けたという記事もありました(下記参照A)。
米国の処方薬問題は、まだまだ深刻な状況にあるようです。

[参照]
@DEAの薬物脅威分析報告書2015年版
2015 National Drug Threat Assessment Summary
http://www.dea.gov/docs/2015%20NDTA%20Report.pdf
ADEAの最近のニュース
Doctor Convicted of Three Murders in Prescription Drug Overdose Case(October 30, 2015)
http://www.dea.gov/divisions/la/2015/la103015.shtml

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