弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤密輸で暴力団組長を逮捕

<<   作成日時 : 2015/09/17 23:37   >>

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中国からEMS(国際スピード郵便)で覚せい剤を密輸した事件で、受取人の周辺を丹念に捜査した結果、暴力団の組長の検挙に至ったというニュースがありました。密輸事件の陰に真の首謀者が潜んでいることはわかっても、捜査の手がそこまで及ぶのはまれなことです。

<ニュースから>*****
●チョコレートケーキに隠し、韓国物産店に覚醒剤密輸 容疑の暴力団組長ら逮捕 警視庁
覚醒剤を中国から密輸したとして、警視庁組織犯罪対策5課は覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で、指定暴力団稲川会系組長、N(63)=横浜市・・・=と、組員のA(50)=神奈川県大和市・・・=の両容疑者を逮捕した。同課によると2人とも「知らない」などと容疑を否認している。
逮捕容疑は1月上旬、国際スピード郵便で、チョコレートケーキに隠した覚醒剤約2キロを中国から国内に輸入したとしている。
郵便物は2箱あり、横浜市中区の別々の韓国物産店に送られた。同課は店に受け取りに来た韓国籍の男ら関係者4人を同容疑で逮捕。携帯電話の通話履歴から両容疑者が浮上した。
産経ニュース2015.9.15 15:50
*****

かつての暴力団は、覚せい剤密輸の大元を取り仕切って莫大な利益を挙げてきました。2000年代前半ころまで、日本に流入する覚せい剤の最大の供給地だったのは中国ですが、その現地に、有利に覚せい剤を仕入れるための拠点を設け、様々な手段で日本に送ったり、運び屋を雇って運ばせたりしてきました。
買い付けから運搬、密輸用の偽装手段まで、すべてを自ら取り仕切ったのですから、密輸が成功すれば、破格の収益を手にすることができたわけです。

ひと昔前までの、覚せい剤輸入事件には、暴力団が組織的に取り仕切り、同じルートで繰り返し輸入してきたような事例がたくさんありました。暴力金融の返済で行き詰った商工業者に運び屋をさせたり、中国から送ってくる国際宅配便を受け取らせるために組員の親類縁者の名前を借りたり、「中国からお茶が送られてくる」と競馬仲間をだまして荷物の受け取りを頼んだり・・・。
手先に使われた人たちをたどっていくと、やがて密輸の首謀者の暴力団にいきつくというわけです。

でも、検挙されるのは暴力団周辺の下っ端ばかりで、その先へ到達するのは、そう簡単ではありません。資金の流れを洗い、通信履歴を洗い、ときには長期の内偵を続けて、ようやく、その先に潜んでいる暴力団の本体へ捜査の手が伸びることになります。
密輸された覚せい剤を最終的に引き受けるのは、密売組織を束ねる暴力団なのですが、密輸事件の犯人として、暴力団の組員などが検挙されるケースは限られています。

画像

↑覚せい剤密輸事犯中の暴力団員の割合
警察庁「平成26年の薬物銃器情勢」及び同資料過去年度版のデータに基づいて筆者が作成したグラフ

覚せい剤密輸事件で、暴力団に捜査の手がなかなか及ばない理由が、もうひとつあります。近年では、取締りが厳しくなる中で、日本の暴力団は、密輸の実行行為から手を引くケースが増えているのです。
とくに、中国側の取締まりが厳しくなり、現地での買い付けや送り出しのリスクがどんどん高くなってきました。中国で、覚せい剤密輸への関与が発覚すれば、死刑を言い渡されることを覚悟しなければなりません。現地での買い付け活動ができなくなって、こうした密輸から手を引く組織も増えました。

そのスキマを埋めたのが、外国の密輸グループです。世界各地に広がる同国人のネットワークを使って、各地の中継ポイントを経て覚せい剤を運搬し、日本に密輸します。貨物に隠して輸送する場合も、日本で貨物を受け取るのは、外国のグループが派遣した人物です。やがて、覚せい剤密輸は外国人組織の手に移り、日本の暴力団は、自ら密輸するリスクを避けて、外国人グループなどの手で密輸された覚せい剤を買い受けるという、よりリスクの低い立場を選ぶようになりました。

しかし、安全な立場を選択すれば、密輸の利益を手にすることはできません。近年、国内での覚せい剤密売価格が低下しているなかで、より高い利益を得るために、あえてリスクの高い密輸を行う組織もあることでしょう。近年でも、こうした密輸が時おり摘発されています。
でも、一連の密輸計画の中で、真の首謀者は、いつも姿を隠し続けていて、めったに足跡を残しません。逮捕された被疑者に対する捜査を遂げて立件し、裁判に向けて証拠を整えるのに、まだまだ苦労が続きそうです。

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日本の国際空港への入国仕組みの場合、特に菓子類等の土産品を装い、違法な品物を国内へ持ち込む密輸等が、拡大するのではと推察します。

入国時の税関手荷物検査では、特にチョコレート等の菓子類土産品は、全く開封しません。

例えば海外の国際空港入国時には、例えば知人宛てに持ち込む菓子類土産品(『白い恋人』とか『キットカット』)外箱を、抜き打ちで普通に開けられて、税関職員が中身を丁寧に確認します。
※正確には通関時に、土産品中身を見せろと、税関職員からオーダが出されます。

何故か日本の入国時だけは、菓子類等の土産品個装を破いて、箱を開ける習慣が殆ど有りません。

海外の実勢をベンチマークして、密輸実行者達への抑止力という観点でも、土産品箱の開封をルーチンにされたらいかがでしょう。

たとえ長い行列が出来たとしても、密輸を防止する為には、有意義な検査だと思います。
中身が傷付かなければ、個装箱なんてどうでもよいと思うのですが。

今のままでは新たなマーケティングと、その仕組み作りが生まれることでしょう。
神流美 王井門
2015/09/21 00:53

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