弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 留め置きの問題がよくわかる1冊

<<   作成日時 : 2015/09/09 06:32   >>

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私は最近、とても興味深い本を読みました。
本書は、覚せい剤事件の裁判でよく争点になる、任意捜査段階での「留め置き」をめぐって、重要判例に基づいて適法性の判断基準を検討するという内容です。この1冊で、「留め置き」と任意捜査の問題点から最近の傾向までを把握することができ、しかもたいへん読みやすい形になっています。
ところで、本書は検討の基本軸として、東京高裁が平成21年7月1日判決で示した、純粋に任意捜査として行われる段階と強制手続への移行段階とに二分して判断するという「二分論」を掲げています。この高裁判決は、任意捜査の適法性判断に新たな枠組みを設けるものとして注目を集め、すでに多くの論考が発表されていますが、本書は、代表的な評釈の論点も織り込みながら、「二分論」の位置づけや、その後の判例傾向までわかりやすくまとめてくれています。
本書は、捜査官のための実務手引書として出版されたものだそうですが、われわれ弁護士も含めて、薬物事件の刑事手続に関わるあらゆる立場の人に役立つものだと思い、ご紹介します。
画像

↑捜査研究臨時増刊号「判例から学ぶ捜査手続の実務 特別編(1)」
詳細は東京法令出版
HPhttp://www.tokyo-horei.co.jp/shop/goods/index.php?97-2015-21

●「留め置き」の問題と「二分論」
薬物事件捜査の初期段階では、証拠の収集を急ぐ捜査官と、その場を何とか切り抜けようとする被疑者の間で、切迫した攻防が繰り広げられることが珍しくありません。
たとえば、街頭で職務質問が行われた場合には、被疑者と捜査官の間で、バッグの中身を見せる、見せないといったせめぎあいが展開されることは日常茶飯事です。また、尿の任意提出を拒む被疑者と、あくまでも説得しようとする捜査官が、長時間にらみ合いを続けることもあります。
職務質問や尿の任意提出は、あくまでも任意捜査であり、被疑者の様子や言動から、覚せい剤に関係しているのではないかと疑いを抱いた捜査官の説得に応じて、被疑者が自らの意思で質問や所持品の検査に応じ、また尿を採取して提出するものです。被疑者は、質問への対応や尿の提出を拒否して、立ち去ることもできます。
犯罪に関与している疑いが濃厚であるにもかかわらず、被疑者が説得に応じない場合は、捜査官は裁判所の令状を請求し、強制力をもった捜査に切り替えることになります。

しかし、実際の捜査現場では、それほど整然と事態が進むわけではありません。
被疑者が、質問に答えず立ち去ろうとすれば、それは捜査官の目には疑いがいっそう強くなったと映ることでしょう。捜査官は応援を求め、現場には次々に白バイやパトカーが駆けつけ、被疑者は10人を超える警察官に取り巻かれることもあります。何事かとヤジウマも集まり始め、騒然とした空気の中で、押し問答が繰り返されることになるのです。
警察官の説得に応じずに立ち去ろうとする被疑者をその場にとどめるために、大勢で取り囲んで動きを制止し、ときには力づくで押しとどめたり引き戻したりといった有形力の行使に至ることもあります。

捜査官が被疑者を留め置いて説得する行為が、任意捜査の限度を超えた場合は、違法捜査となり、たとえ被疑者の身辺から覚せい剤が発見されたり、その尿中に覚せい剤が検出されたとしても、それは違法収集証拠として排除されることになります。

覚せい剤事件の裁判では、違法捜査の訴えが頻繁に登場しますが、それが違法であるかの判断は、従来は、嫌疑の程度、留め置いた時間の長さ、行使した有形力の内容及び程度などを総合的に検討して行われてきました。
しかし多くの事案では、仮に捜査手続に違法があると認めた場合にも、その違法の程度は重大とはいえないとして、証拠能力を肯定しています。被疑者の説得が容易でなく、しかも令状請求のための準備に時間がかかる(たとえば強制採尿の令状を請求するには、あらかじめ採尿にあたる医師の内諾を得ておく必要がある)といった覚せい剤事件の特性を無視して、留め置きや説得行為を外形から判断していくと、捜査実務とかけ離れたものになってしないかねないという配慮が働いたのでしょうか、覚せい剤事件における違法収集証拠の判断は、玉虫色という声もありました。

なにかと問題の多い「留め置き」の違法性判断に、新たな枠組みを提起したのが、冒頭で述べた東京高裁平成21年7月1日判決で、これまで、任意捜査としてひとくくりにしてきたこの段階を、純粋に任意捜査として行われている段階と、強制手続への移行段階とに二分して、各段階ごとに検討するというものです。被疑者を留め置く目的は、純粋任意捜査の段階では説得であり、強制手続への移行段階では、令状の執行に備えて被疑者の所在を確保することとなります。
この「二分論」は、捜査実務に即した判断の枠組みとして注目され、その後、この考え方を踏襲する判例もいくつか出ています。
しかし異論や疑問がないわけではありません。まず、とても基本的なこととして、令状の発布を得ていない段階で、被疑者の退去の自由を制限する根拠があるのかという点、また、この枠組みによって任意捜査意味合いが薄められ、「準強制処分」ともいうべき玉虫色の領域の出現を許してしまうという危惧もあります。

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コメント(17件)

内 容 ニックネーム/日時
ちなみに、先ほどおーぷん2chの趣味一般板のドラッグ関係スレッドに、小森弁護士の名前を名乗って投稿した人がいました。
http://awabi.open2ch.net/test/read.cgi/hobby/1441608398/37
とりあえずお知らせまで(笑)
滅智蓮寺 熾
2015/09/11 07:45
メチレンさん
お知らせくださった投書、見ました。
へえ・・・。
私はこれまで2chに投書などしたことはありません。
そもそも、ほとんど見ません。
小森 榮
2015/09/11 09:11
お世話になっております。5年間風評被害に対する訂正の意味でコメント欄に投稿していました。私も小森先生のブログ以外はお借りしたことがないです。
事務所にお電話を差し上げたとき奥様に勧められたのですが、匿名で投稿すると信憑性がなくなるため一切2chには投稿したことがありません。
この件では政府のどこにも担当部署がなく本当に助かりました有難うございます。2015 9月 11日 
松下 清子
2015/09/11 10:17
一人暮らしであれば、阻止できるトラブルでした。
噂をそのままにしておくことは、過去のありもしない捏造話を認めたことになってしまいます。捏造された相手の方のためにも正確な表現で書いたつもりです。
私の理想は祖父です。いつも本ばかり読んでいるのも祖父に憧れているからです。壮絶な52年間でしたが自分がやったことに後悔はありません。
小森先生ご協力ありがとう御座いました。 

2015/09/11 21:03
ご返事ありがとうございます。
やはり偽物でしたか(笑)
あの掲示板は、過去に麻薬取締官を名乗る人物が書き込んだり、真偽不明の情報がいっぱいです。

なお、私は今ツイッターの他は主にこの板で活動していますが、下記のスレッドがメインスレッドとなっており、時々ドラッグ関係のニュースを見つけては貼って、コメントをしています。
http://awabi.open2ch.net/test/read.cgi/hobby/1441532041/
ご参考まで。
滅智蓮寺 熾
2015/09/12 08:02
兄が生きていたら遥か幼少の頃から盗聴されていたことを証明できるのですが、芦屋も瓜破も故郷が見事に無くなってしまい、まるで本郷メイちゃんみたいです。
母は電話で騙していたことを認めていました。
どこかの国の工作員だったのでしょうか・・。
負けたくなければ自分の運命に立ち向かっていかなければ
いけませんよね。本当にお騒がせしました。
松下 清子
2015/09/12 14:01
特殊な事件です。日本の警察では捜査できないそうです。
事実無根の養子説をきちんと否定していればこんな被害は防げたはずだと思います。権力者であったころ公的文書から削除しておくべき責任があったのではないでしょうか。
↑コインテルプロ
2015/09/13 02:49
彼らはテロによって歴史を変えたに過ぎない・・
↑オールドテロリスト
2015/09/15 05:21
恋愛ストーカーなど女性にとっては逃げ場がないですね。
同性に打ち明けることも出来ず困っている人も多いです。
交際を断られると、高額な品物を貢がせた!と言いふらされたりすることも。購入歴を調べてもらい無実を証明したかったみたいです。
そもそも女の人は働いた分の賃金を貰えていないという事が大きな問題なのではないでしょうか・・。
女性を守る法律がない
2015/09/20 17:38
福祉の充実というけれど役人を増やすよりも、性別や年齢に関係なく、働いた分の賃金を支払う!という事が徹底されるべきだと思います。人権侵害は無償労働を強制することから発生するのではないでしょうか。


女性と子供を守る法律
2015/09/20 19:15
5年間ものあいだ投稿し続けなければ生活できない状態にした人たちに責任があるのではないでしょうか。
社会的地位を利用して風評被害を与えています。
女性と子供への人権侵害
2015/09/20 19:32
風評被害の女性は2003年以降直筆の手紙を誰にも書かないと決めたそうです。なりすまし防止のために寂しいですが誰とも接点を作らない覚悟でいるらしいです。
官僚と庶民のハーフなので民間を巻き込みたくないそうです。従って運転免許もスマホも所持せずカードもないそうです。そんな生活この人でなければ無理なので、なりすましは発生しませんね・・笑 9月24日 松原 沙矢さん
マイナンバーカード
2015/09/24 20:42
行政犯罪を行政犯罪だと認めないこの国に未来はあるのか。現役の医師、役人、政治家にとって都合の悪い人物を潰したに過ぎない。笹井氏は行政犯罪の被害者です。
今活躍している学者が彼に嫉妬していたのですよ。

行政犯罪
2015/10/20 01:51
それにしても、なんで沙矢さんとノルウェイの森を結びつけようとしたのかな?
グレートギャツビーを凌ぐ事件だったのかも・・。終
疑問
2015/10/22 15:16
塗り替えた歴史はやがて修正されると思う。
天才は5次元にワープしても永遠に天才なのだ!
真実は素粒子が知っている
2015/10/25 17:11
大事件を未然に防いで下さった皆様、ありがとう御座いました。こうやって元気にコメントを書けるのも、小森先生と皆様のおかげです。大騒ぎした結果、月光仮面状態となってしまいました。私は、これからも一切の団体と関わることなく個人で活動していきたいと思っております。
53歳になったらブログで童話を書く予定です。
良かったら、遊びに来てくださいね。
この5年間のために生まれてきたのかも・・と思えるような感動的な出来事がいっぱいありました。
勇気を出してコメントし続けて本当に良かったです。
それでは、失礼します。2015年 11月 1日 
松原 沙矢 
2015/11/01 21:28
右胸に腫瘍ができたので手術しました。
ブログは未定になりました。
まずは、頑張って治療に専念します。
お騒がせしてばかりですみません。  松原 沙矢
新年おめでとうございます
2016/01/03 08:13

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