弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 危険ドラッグ対策|2015年上半期の取締まり実績

<<   作成日時 : 2015/09/04 03:59   >>

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警察庁が「平成27年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)」を発表しました。これは、全国の警察による薬物・銃器事犯の取締まり実績をまとめた年次報告書の、上半期分の速報資料として、毎年この時期に発表されているものです。
[参照]
@警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課「平成27年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)」2015年9月3日発表
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h27_kami_yakujyuu_jousei.pdf
A統計データ:薬物(EXEL)
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h27_kami_yakubutsu.xlsx

ここ数年、薬物問題が比較的落ち着いた状況を示している中で、目下の注目点は、やはり危険ドラッグ問題の推移です。
危険ドラッグ関連事件の検挙が大幅に進展したのは、池袋駅前で発生した暴走死傷事件を契機に、政府をあげて対策の強化が図られた2014年下期以降のことです。
2014年下期の検挙状況が発表された時には、危険ドラッグ事犯の急増ぶりに驚かされたものですが、今回の発表をみると、2015年上期も、引き続き、前の半年とほぼ同レベルの検挙実績となりました。
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↑危険ドラッグ関連事件の検挙人員―半年ごとの推移
警察庁が発表した各年度の「薬物・銃器情勢」のデータに基づき筆者がグラフ化

@滞留事案の処理はいつまで続くのか
昨年秋以降、危険ドラッグ対策が集中的に投下された結果、国内に流通する危険ドラッグは目に見えて減少し、昨年末には販売店がほぼ壊滅、最後まで残った店舗も今年夏には閉鎖に追い込まれ、さしもの危険ドラッグ禍もほとんど終息しました。しかし、捜査陣にはまだ休息の時は訪れないようです。問題は、未処理のまま滞留している大量の事案です。
報告書9ページには、「危険ドラッグ事犯検挙人員のうち、515人(74.7%)は平成26年12月末までに認知したものである。」と記載があります。つまり、今年上半期中に処理した危険ドラッグ事犯の約4分の3が、昨年から持ち越した事案だというわけです。

昨年4月に、指定薬物の単純所持や使用等を禁止する改正法が施行され、以来、警察が取り扱う危険ドラッグ関連事件が急増しました。中毒者の救急搬送、交通取締まり、あるいは街頭の挙動不審者・・・、薬物使用の疑いがある様々な場面で、任意提出を受けた危険ドラッグが、今もまだ未処理のままで残っていることでしょう。
そのほとんどは、指定薬物に係る違反、つまり上のグラフで青色に示した医薬品医療機器法(旧薬事法)違反にあたるかどうか、鑑定しなければならない事案です。グラフからもわかるように、警察は昨年下期からの1年間で、1000人近い指定薬物事犯を検挙したのですが、まだしばらくはこのペースが続くのでしょうか。
事件処理の進展が気になって、私は、時おり犯罪統計で医薬品医療機器法の送致データを確認しているのですが、昨年秋頃から毎月の処理ペースはあまり変化していません。現在は7月分の数字が発表されていますが、これまでと同様のペースが続いています。

短期間で次々と切り替わる薬物が、鑑定を極度に困難にしていることなど、危険ドラッグ特有の問題が山積していることは理解しますが、しかし、適切な時期を超えて事件処理が長引くことは、被疑者の生活に思いがけない負担を強いることにもなります。
そろそろ、滞留事案に最終決着をつけるべき時期を迎えています。

A危険ドラッグと大麻の関係
危険ドラッグが流行し始めた2011年ころ、それと呼応するかのように、大麻の検挙者が減少し始めたことは、これまでも度々話題になり、大麻に興味を示してきた若者たちが、次々と危険ドラッグに乗り換えているという声もありました。
たしかに、危険ドラッグがわが国に流入し始めた初期には、「大麻の合法版」というとらえ方をするユーザーも多く、危険ドラッグに乗り換えたユーザーもあったことでしょう。しかし、その後危険ドラッグ市場が拡大するにつれ、大麻からの移行組をしのぐ新たなユーザーが危険ドラッグを使い始め、独自のユーザー層を構成していったことは、読者もご存じのとおりです。

ところで、危険ドラッグ販売店が消えた今、入手先をなくしたユーザーが、覚せい剤や大麻といった薬物に手を伸ばすことが、警戒されています。
今のところ、覚せい剤市場には目立った変化は見えませんが、大麻検挙者が2014年下期あたりから増え始めています。

大麻事犯検挙者は、2000年ころから若者を中心に増加傾向を見せていましたが、2010年に大学生大麻問題が話題になり、社会的な非難が強まり、減少に転じました。その後、2011年から2013年まで検挙者が少ない状態が続きましたが、この3年間は、危険ドラッグが急速に流通を拡大していた時期と重なります。
そして、危険ドラッグ市場が急速に縮小した2014年下期には、大麻事犯の検挙者が増加に転じ、この傾向は2015年上期にも引き継がれています。
この数年、若者の関心を集めてきた危険ドラッグが姿を消したことで、今後の大麻市場にどう影響するか、当面は目が離せません。
<大麻事犯検挙人員の推移>
2013年上半期・・・758人
2013年下半期・・・797人
2014年上半期・・・766人
2014年下半期・・・995人
2015年上半期・・・947人
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↑大麻事犯の年齢構成・2004年〜2014年
警察庁が発表した各年度の「薬物・銃器情勢」のデータに基づき筆者がグラフ化

気になるのは、こうした変化に敏感に反応しているのが、20歳代の若者層だということです。検挙者中に若者の割合が増えるときは、乱用薬物が拡大傾向にあることを示しています。2015年上期の検挙者データでは、若者層の割合がさらに増え、30歳未満が47.6%を占め、半数に迫っています。

折から、米国では2016年選挙に向けて、医療用大麻や娯楽用大麻の販売をめぐって、議論が活発化し始めました。世界の若者の視線が、大麻に引き寄せられています。私たちも、大麻について真剣に語ることを始めなくてはなりません。
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↑大麻事犯の年齢構成・2014年上期と前年同期の比較
警察庁が発表した各年度の「薬物・銃器情勢」のデータに基づき筆者がグラフ化

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内 容 ニックネーム/日時

日本臨床カンナビノイド学会、第1回学術講演会、総会、懇親会が、9月27日 昭和大学鷹の台キャンパス 上條講堂で開催されます。
テーマは、『海外で進む、日本で始まる、カンナビノイド研究』です。

※医療従事者、医学、薬学研究者以外に、一般の方もご参加可能です。
神流美 王井門
2015/09/04 20:15
日本は今、前代未聞の異常事態が発生しているのかも?
民主主義を守るためにご協力よろしくお願いします。

アムネスティボランティア活動
2015/09/10 08:52

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