弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS EUの薬物報告書2015年版が出ました

<<   作成日時 : 2015/06/05 13:57   >>

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6月4日、EUの薬物問題対応機関EMCDDA (European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction)は、『ヨーロッパ薬物報告書European Drug Report』の2015年版を発表しました。この報告書は、EU加盟国で収集された各種データに基づいて薬物問題の現況と対策を分析し、今後の指針とするもので、毎年発行されています。
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↑2015年版ヨーロッパ薬物報告書

[参照]
@EMCDDAのサイト
http://www.emcdda.europa.eu/index.cfm
A報告書本文のダウンロード
http://www.emcdda.europa.eu/publications/edr/trends-developments/2015

いま、ヨーロッパの薬物情勢は大きく変貌しつつあります。この数年来、報告書は変化していく薬物の需給情勢にスポットを当ててきましたが、その流れは2015年版にも引き継がれ、さらに掘り下げられています。
2015年版が取り上げたポイントをいくつかピックアップしてみましょう。

●ヘロインユーザーの高齢化
ヨーロッパの薬物政策の基盤となってきたのは、ヘロイン依存者の深刻な状況への対策でした。強い身体依存のせいで薬物摂取をやめられない人たちの周辺で、貧困、ホームレス、犯罪、そして死亡事故などの問題が頻発していたのです。
相変わらず、ヨーロッパは世界のヘロイン需給の要となっている巨大市場です。しかし、近年では新たにヘロイン乱用に手を染める若者が減少し、乱用者層が次第に固定化し、高齢化しているのです。
この事情は、日本の覚せい剤乱用者の高齢化と、実によく似ています。長年乱用を続けてきた特定の人たちが、問題状況を引きずったまま高齢化しているのです。なお、アメリカでも似たような現象が起きていて、かつて大暴発したクラック・コカインの乱用者が減少しているのですが、残念ながら私は、ユーザー層の変化に着目した分析に接する機会がまだありません。
さて、ヨーロッパは、ヘロイン依存者の高齢化という新しい局面を迎え、対策の再構築を迫られています。代替薬物の提供、依存者がヘロインを安全に自己使用するための拠点づくり、感染症の拡大を防止する注射針交換、あるいは高齢依存者の福祉住宅など、多様な施策の有効性の検証が進められることでしょう。

●多様化する興奮性薬物のマーケット
かつてのヨーロッパでは、アンフェタミンとMDMAが興奮性薬物の代表格でしたが、その後広まったコカインが、今ではこの分野のトップを占めています。加えて、メフェドロンの流行以来、次々と形を変えて登場するカチノン系薬物や、一部地域で乱用が拡大しているメタンフェタミンなどもあります。
多様なジャンルの薬物が流通し、競いあっているのが、現在の興奮系薬物のマーケットだと報告書は分析し、そのなかで、各薬物の純度が上昇し、強力化していると指摘します。
たとえば、高純度のMDMAが粉末状で流通し、押収されるコカインやヘロインの純度も上昇しています。
乱用市場に出回る薬物が強力化していることは、中毒事故や死亡事故の発生につながります。とくに、危険性の高いエクスタシー錠剤(大量のMDMAを含有するものや、PMMA含有錠剤など)が出回り、死亡事故などの健康被害が続発している点について、報告書は警鐘を鳴らしています。

●ますます加速する「新薬物」の登場
ヨーロッパでは「ほぼ週に1種類の割合で、新薬物が確認されている」という報告に驚かされたのは、つい2年ほど前だったでしょうか。NPS(new psychoactive substances)と呼ばれる新薬物の登場はますます加速し、ついに年間100以上、つまり「週当たり2種」の新たな薬物がヨーロッパのどこかで確認されるというペースになりました。
EUでは、早期警戒システムとして、加盟各国で検出された薬物のデータベースが共有されていますが、新たな薬物の検出報告は右肩上がりで増え続け、2014年中に101種の新たな薬物が検出されたということです。
相変わらず、合成カンナビノイドと合成カチノン類が二大グループをなしていますが、2014年ではカチノン類が著しく増加しました。
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↑EU早期警戒システムに通知されたNPSの数と分類
報告書33ページより転載

●依然として乱用薬物のトップは大麻
ヨーロッパでの全薬物押収件数は年間約100万件に及びますが、その80%ほどを占めているのが大麻です。2013年では、乾燥大麻の押収は43万1000件、押収量は130トン、大麻樹脂の押収は24万件、押収量は460万トンでした。
この数字をみて、おや?と思われた方もあるでしょう。以前は大麻樹脂が優勢だったヨーロッパでも、近年では乾燥大麻が増えていると聞いているのに、押収量で見ると大麻樹脂が圧倒的に多いのです。大麻樹脂のほとんどはモロッコから密輸されていますが、大量輸送経路の途中で摘発されることが多く、大量押収となるため、こうした数字になっていると、報告書は説明しています。押収件数でみれば、2009年以降、乾燥大麻が大麻樹脂を上回っているということです。
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↑EUでの薬物使用状況の推定値―大麻
報告書15ページより転載

EU全体では、大麻の使用者(過去1年以内に使った人)は1億9300万人、15−64歳人口の5.7%と推計されています。薬物に関心が高いとされる青少年層(15−34歳)では、11.7%が過去1年以内に使用したとみられています。

大麻に関しては、論点が山ほどありますが、まもなく国連薬物犯罪事務所から発表される『世界薬物報告書』でも、大麻に関する踏み込んだ分析や評論が掲載されることでしょうから、その折に、改めて考えてみたいと思います。

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