弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤大国メキシコと薬物カルテル

<<   作成日時 : 2015/05/22 23:48   >>

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税関検査で、メキシコから届いた航空貨物の中に隠された覚せい剤44キロが発見され、受取役の在日メキシコ人が起訴されました。
<ニュースから>*****
●金属製タンクで覚せい剤44キロ空輸企てる メキシコ男を起訴 千葉地検
千葉地検は20日、覚せい剤約44キロ(末端価格約11億円相当)を密輸しようとしたとして覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)罪などで、メキシコ国籍の作業員F容疑者(28)=茨城県鹿嶋市=を起訴したと明らかにした。起訴は11日付。
・・・県警などは、メキシコと日本との間に密輸組織が関わっているとみて調べる。
産経ニュース2015.5.20 20:08
*****
先日は、成田空港でメキシコ人女性が逮捕されたところへ、今度は航空貨物での大量輸入、はるか離れた日本に向けて続々と覚せい剤を送り込んでくる、覚せい剤大国の存在が気になってなりません。メキシコの薬物カルテルの現在を探ってみました。

●カルテルの抗争が再び激化
メキシコでは、再び、薬物カルテルによる暴力事件が激化していると報じられています。6月に中間選挙を控えて、各地で血なまぐさい抗争が加速しているのです。
圧倒的な勢力を持っていたシナロア・カルテルが、首領の逮捕や幹部の死亡によって弱体化したスキをついて、いま勢力を伸ばしているのが「新世代」と名乗る新勢力で、メキシコ中部から南部で、旧勢力と衝突を繰り返しながら勢力圏を拡大中だといいます。
5月20日のLAタイムズは、メキシコ南部の小さな町Chilapaが、カルテルどうしの抗争から、対立組織によって封鎖された様子を報じています。3000人ほどの武装集団が5日間にわたって町を占拠し、市長は逃走、多くの住民が拉致されたといいます(下記参照@)。

メキシコでは2008年ころから、薬物カルテルによる暴力抗争がエスカレートし、代々の政権はカルテル撲滅を政策の優先事項に掲げていますが、政権組織の中枢まで汚職構造に浸食されているといわれる中で、カルテルの掃討は思うように進展していないのが現実のようです。
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↑カルテルに封鎖された市街の様子を報じるLAタイムズの記事(下記参照@)

●覚せい剤とメキシコ系カルテルの薬物戦略
メキシコのカルテルは、もともと、コロンビアで産出されるコカインを米国に陸路で運搬する密輸集団から発生しました。もとはローカルな密輸集団にすぎなかったメキシコ系組織が、米国への薬物供給の主力を担う勢力に拡大したのは、1980年代末から90年代初頭の時期で、コロンビア系カルテルが掃討作戦によって弱体化した時期に、アメリカへのコカイン密輸の主力の地位を引き継ぎました。

薬物の巨大消費市場米国に隣接するメキシコは、コカインだけでなく、ヘロイン、大麻、覚せい剤(メタンフェタミン)など米国内で流通する多彩な薬物の生産・供給地となっています。
メキシコ国内ではけし栽培が行われ、2014中に政府が伐採処分したけし畑は21,425ヘクタールに及び、1.4トンの生阿片が押収されました。大麻の栽培も盛んで、2014年中の伐採処分面積は5,679ヘクタール、押収された乾燥大麻は929.4トンに達しました。
なかでも覚せい剤の密造規模は、世界でもトップクラスです。2014年にメキシコ国内で押収された覚せい剤は19.8トン(前年対比で35.9%増)、密造施設の摘発は143件(前年対比11.7%増)でした(下記参照A)。

コカインから覚せい剤へのシフトは、メキシコ系カルテルの戦略だとみられています。もともとメキシコ系組織の活動基盤はコカイン密輸だったのですが、コカインの原料となるコカ樹はアンデス地域でしか栽培できないため、コカインの支配権はコロンビア系組織に握られています。そこで、自ら密造することのできる覚せい剤に重点を移すことで、メキシコ系組織は世界市場での支配的地位を確立しようと図ったのだといいます。
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↑北米大陸でのメタンフェタミン押収量の推移(下記参照B)
ピンクで示した部分がメキシコ国内での押収量

メキシコでの覚せい剤密造が本格化したのは2009年ころで、当時、圧倒的な勢力を誇っていたシナロア・カルテルの支配下にあったメキシコ中南部を中心に、大規模生産施設が設けられました。荒れ地の地下に掘ったトンネル内や、ありふれた農場の内部に隠された大型の密造プラントは、1回のサイクルで数キロから数十キロという規模で高純度の覚せい剤を生産する能力を持っています。
その後、弱体化したシナロアの後継をめぐって組織間の抗争が激化していますが、最近では覚せい剤の大規模密造施設が集中するハリスコ州を中心に、「新世代」と名乗る新興カルテルが急成長していて、覚せい剤密造施設の多くがこの組織の支配下にあるという見方もあります。
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↑メキシコ国内での覚せい剤移動ルート(下記参照B)

覚せい剤の密造・密輸を行うには、覚せい剤合成の技術だけでなく、原料化学品の調達力や、製品の運搬や密輸をコーディネートする力など、様々な分野のノウハウや人脈が必要です。こうした能力をもった集団が、メキシコ国内だけでなく、世界の各地で密造拠点を開発し、新たな覚せい剤供給地点を生み出しています。
カルテルの勢力図はめまぐるしく変化しても、密造・密輸を取り仕切る集団が活動を続ける限り、覚せい剤の供給が途絶えることはないでしょう。

[参照]
@カルテル抗争の激化を伝えるLAタイムズの記事
Los Angeles Times, Mexican town besieged by rival gangs, as police and army stand aside(May 20, 2015)
http://www.latimes.com/world/drug-war/
A米国務省の国際薬物統制レポート
U.S. Department of State, 2015 International Narcotics Control Strategy Report
http://www.state.gov/j/inl/rls/nrcrpt/2015/
B国連薬物犯罪事務所の合成薬物アセスメント
UNODC, 2014 Global Synthetic Drugs Assessment
http://www.unodc.org/documents/scientific/2014_Global_Synthetic_Drugs_Assessment_web.pdf

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