弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤大国メキシコからの密輸を摘発

<<   作成日時 : 2015/05/17 13:13   >>

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成田空国でメキシコ国籍の女子大生が、覚せい剤を密輸したとして逮捕されました。特産のテキーラ瓶に詰められていたのは、液体状の覚せい剤、乾燥重量にして約1.6キロでした。

<ニュースから>*****
●メキシコ人女性による覚醒剤密輸入事犯を摘発
東京税関成田税関支署と千葉県成田国際空港警察署は、平成27年4月27日、メキシコ合衆国から入国したメキシコ人女性が覚醒剤を密輸入しようとしたところを発見・摘発して、関税法並びに覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕し、同月28日、身柄を千葉地方検察庁に送致した。
被疑者は、成田国際空港に到着した際、覚醒剤1,632.5グラムを含有する溶液を紫色スーツケース内のテキーラ瓶2本に分散隠匿して密輸入しようとしたが、税関検査において、発見・摘発されたものである。(平成27年5月15日 成田税関支署発表)
東京税関HP「密輸事件報道発表(平成27年)」より
http://www.customs.go.jp/tokyo/yun/mitsuyu_H27.htm#20150515narita
*****

●米国では、覚せい剤の流通量が飛躍的に増加している
もともと、覚せい剤の密造は、目立たない小規模な密造拠点で、細々とした手作業で行われてきました。ところが、近年、メキシコのカルテルが手掛けているのは、国際的な管理の及ばない新原料を使い、工場規模の密造拠点を設け、大々的に密造加工を行うやり方です。2012年にメキシコのハリスコ州で発見された密造施設からは、15トンにおよぶ覚せい剤が押収され、世界を驚かせたものです。
メキシコのカルテルが覚せい剤密造に本格的に乗り出して以来、世界の覚せい剤需給は大きく変貌したといわれます。大規模な施設で生み出される桁違いの密造量と、密造・密輸・密売まで一元的に管理する強力な組織力によって、世界に流通する覚せい剤の総量は飛躍的に増加し、また、密売価格も大きく下落しているのです。
ひと昔前、北朝鮮が国家的な規模で覚せい剤を密造し、密輸した時にも、世界の覚せい剤需給情勢は大きな変化を経験し、日本でも、安価な覚せい剤の大量流入によって、第三次乱用期がもたらされたことが思い起こされます。

メキシコで大量に密造される覚せい剤の最大の密輸先は、当然、米国です。米国の南西部国境地域では、メキシコから密輸される覚せい剤の大量押収が続いており、今年1月に発表された2014会計年度での押収量は14,732キロに達したと報じられました。メキシコから、純度が高く、しかも安価な覚せい剤がどんどん送り込まれている結果、米国内に出回る覚せい剤の量が大幅に増加し、密売価格は下落し、国民の健康を脅かす重大な脅威となっています(下記参照@)。

国境地域の密売ルートでは、1ポンド当たり3500ドルとコカインの3分の1の価格で取引されていると、サンディエゴのニュースメディアが報じています(下記参照A)。日本円に換算すれば、1グラム当たり840円程度でしょうか。
画像

↑米国のメキシコ国境地域で押収された覚せい剤
2014 National Drug Threat Assessment Summary(下記参照@)より転載

今のところ、米国の覚せい剤乱用者はそれほど増えていません。全米の薬物実態調査National Survey on Drug Use and Health:NSDUHの2013年調査によると、過去1か月以内にメタンフェタミンを使った人は595,000人、乱用者が急増した2000年代前半と比べると、はるかに低い状態が続いています。
ちなみに、米国では最もユーザーの多い薬物は大麻で過去1か月以内のユーザーは推計2,457万人、コカインでは1,500万人となっていて、覚せい剤ユーザーは順位からいうと下位にあたります(下記参照A)。

でも、これを深読みして、米国の覚せい剤マーケットが供給過剰になった今、メキシコのカルテルは、次なる市場の開拓を目指すはずだと、専門家の多くが指摘しています。次なる標的として、最も狙われやすいのは東アジアと太平洋地域でしょう。もともと、この地域では覚せい剤乱用者が多く、覚せい剤の密売ルートも出来上がっています。しかも、日本やオーストラリアなど、覚せい剤の密売価格が高値で維持されている、おいしい市場が控えているのです。

日本でも、ここ数年メキシコから密輸された覚せい剤の大量押収事件が続いています。2013年には鉄鉱石に擬装して200キロ近くが密輸され、2014年には石材に仕込まれた150キロが摘発され、その大胆な偽装手法と、隠匿された覚せい剤の量に驚かされたものです。

そういえば、米国境で摘発される覚せい剤密輸の中で、液状の覚せい剤が目につくといいます。下記参照@にあげた報告書は、液体状の覚せい剤は、隠匿しやすいため、密輸手法に使われる例が増え、シャンプーや酒類など食品や日用品の缶詰や瓶入り商品に擬装した密輸が頻繁に摘発されていると指摘しています。
液状で密輸される覚せい剤には2タイプあり、結晶状(いわゆる白い粉)の覚せい剤を溶剤や水に溶かしたものと、密造工程の途中で結晶化させる前段階の液体が密輸されるケースもあるといいます。
いずれにしても、液状で密輸された覚せい剤は、国内に持ち込まれた後で、最終工程を経て製品化しなければなりません。米国の国境地帯では、運び屋の手で持ち込まれた液状覚せい剤を受け取り、製品化させるグループの拠点が、相次いで摘発されています。でも、この最終工程は、とくに悪臭が発生するわけでもなく、また特別な材料や器具を使うこともないので、拠点をあぶりだすことが難しく、当局の地道な突き上げ捜査によって摘発されているということです。

@米の薬物情勢報告書2014
2014 National Drug Threat Assessment Summary
http://www.dea.gov/resource-center/dir-ndta-unclass.pdf
ASan Diego Union-Tribuneの記事
Record border meth seizures(JAN. 3, 2015)
http://www.utsandiego.com/news/2015/jan/03/record-border-meth-seizures-california/
B米の薬物使用実態調査
Results from the 2013 National Survey on Drug Use and Health: Summary of National Findings
http://www.samhsa.gov/data/sites/default/files/NSDUHresultsPDFWHTML2013/Web/NSDUHresults2013.pdf

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>コカインでは1,500万人となっていて、覚せい剤ユーザーは順位からいうと下位にあたります

これは多分覚せい剤をアンフェタミンとメタンフェタミンに限定した言葉の用法なのだと思いますが、コカインもメタンフェタミンと同様、覚醒剤であるので、やや混乱した書き方だと思います。
基本的に、ドーパミンを溢れさせて眠気をなくする物質は覚醒剤であり、モダフィニルのようにドーパミン系統への作用が少ないが、同様に眠気をなくすものも覚醒剤です。
日本の法律上は「覚せい剤」の指定はアンフェタミンとメタンフェタミンのみですが、海外記事について語る場合は日本法は関係ないので。
滅智蓮寺 熾
2015/05/18 23:57

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