弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤による幻覚・妄想と犯罪

<<   作成日時 : 2015/05/07 12:32   >>

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連休中の北九州市で、深夜、警察署の正門に大型トレーラーが突っ込むという騒ぎがありました。警察で行われた簡易検査で、運転していた男性の尿から覚せい剤反応があったということです。
いっぽう取手市では、クロスボウ攻撃事件で捜査対象になっている男性(別事件で起訴)が、逮捕された際に提出した尿から覚せい剤が検出され、覚せい剤使用の疑いで再逮捕されたといいます。

<ニュースから>*****
●トレーラーで警察署突入の男から覚醒剤陽性反応
1日深夜、北九州市小倉北区の福岡県警小倉北署の正門に大型トレーラーが突っ込んだ事件で、器物損壊容疑で逮捕された同市八幡西区鳴水町、会社員N容疑者(53)から簡易検査で覚醒剤の陽性反応が出たことが同署への取材でわかった。
同署は覚醒剤取締法違反(使用)容疑でも調べを進める。
同署によると、N容疑者は「警察にイライラしたので、会社の車で突っ込んだ」などと供述しているという。
YOMIURI ONLINE 2015年05月03日 14時09分
*****

<ニュースから>*****
●尿から覚醒剤反応“クロスボウ”関与否認の男
茨城県取手市の無職の男(36)は3月、知人男性(58)の顔を殴るなどしたとして逮捕・起訴されています。警察は、男の逮捕時に尿から覚醒剤の反応があったとして、6日、覚醒剤取締法違反の疑いで再逮捕しました。男は容疑を認めています。取手市では先月、男性(47)が右足をクロスボウの矢で撃たれる事件が起きていて、男の自宅からは同じタイプの矢が見つかっています。男は事件への関与を否定していますが、警察は、関与した可能性が高いとみて捜査しています。
テレビ朝日系(ANN) 5月6日(水)18時43分配信
*****

こんなニュースが続くと、薬物問題に詳しい人たちは、またかと思うことでしょう。覚せい剤による幻覚・妄想から、周囲がすべて敵にみえて不安をつのらせ、刃物などを持ち歩いたり、意味なく他人を攻撃したりする例が珍しくないのです。

覚せい剤の作用によって周囲の光線や音響に対して過敏になり、存在しない人影が見えたり(幻視)、異臭を感じたり(幻臭)、命令する声が聞こえたり(幻聴)することがあります。本人にとっては、そのひとつひとつが意味を持って感じられ、それに対して敏感に反応するのです。
さらに、覚せい剤精神病と呼ばれる症状が出ている人では、警察が自分を見張っている、敵に襲われそうだ、多数の敵に周囲を取り囲まれているといった、追跡妄想、注視妄想、被害妄想、関係妄想などが入りまじり、周囲の状況を極端に誤認し、突飛な攻撃行動に出る場合もあります。

覚せい剤による幻覚・妄想などの症状は、専門医によって治療することができます。覚せい剤の使用を断ち、必要に応じて抗精神病薬などを投与して治療を続けると、患者の大半は、3か月ほどでこうした幻覚・妄想状態が消え、落ち着きを回復するそうです。
でも、症状が消えたら問題が解決するわけではありません。落ち着いた状態が続いて退院した途端、たちまち覚せい剤を使ってしまい、また病院に逆戻りといった例も多いのだと、専門医からよく聞かされます。
そのため、専門病院では、患者の症状を緩和する治療と同時に、覚せい剤をやめ続けるための集団療法などが行われています。また、退院後も長期的にやめ続けるためのグループ活動への導入も図られます。大切なのは、覚せい剤をやめ続けることなのです。

幻覚・妄想に取りつかれて事件を起こした人たちは、不安定な断薬初期を警察の留置施設で過ごすことになりますが、それでも、逮捕され、裁判を受けている間に、日ごとに落ち着きを取り戻すことがよくあります。
事件に対処する警察官も、法曹関係者も、こうした人たちを頻繁に見ていて、問題の核心が覚せい剤乱用にあることは、よく承知しています。だから、被疑者・被告人に向かって、口をそろえて、この機会に覚せい剤をやめるよう説き続けるのです。でも、残念ですが、どんなに親身の説得を繰り返しても、それは一時的な効果しかもたらさないでしょう。
裁判手続きが終了したら、次は治療の専門家にバトンタッチできるような体制が整備されていたら、私たちも安心して職務に専念できるのに・・・。そんな風に考えているのは、私だけではないと思います。

覚せい剤乱用者による異様な事件が起きるたびに、社会はその異様さ、恐ろしさを取り上げ、覚せい剤乱用の害を説こうとします。たしかに、覚せい剤に手を出す人を減らすことは大切ですが、現にこの日本に数十万人いる覚せい剤乱用者を減らすための体制づくりも、忘れたくないものです。

ちなみに、覚せい剤による幻覚・妄想が関係した事件をまとめた統計ではありませんが、薬物常用者が起こした犯罪については、毎年、警察庁の資料で発表されています。
画像

↑薬物常用者による刑法犯及び特別法犯検挙人員の推移
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課「平成26年の薬物・銃器情勢(確定値)」20ページより転載

資料によると、2014年では、殺人、強盗等の凶悪犯で検挙された薬物常用者は46人、暴行、傷害等の粗暴犯で検挙されたものは253人だったといいます。ここでいう「薬物常用者」とは、覚せい剤常用者、麻薬常用者、大麻常用者、その他の薬物常用者及び有機溶剤等乱用者をいい、中毒症状にあるか否かを問わないと説明されていますが、薬物事犯の検挙状況などからみて、その圧倒多数が覚せい剤常用者であると考えてよいでしょう。
気になるのは、近年では、覚せい剤をはじめ薬物事犯の検挙者が大幅に減少しているにもかかわらず、刑法犯罪で検挙された薬物常用者の数が、ほとんど減っていないことです。現在と比べて、覚せい剤事犯の検挙者がはるかに多かった1997(平成9)年と比べると、殺人や強盗といった凶悪犯はいくらか減少しましたが、暴行や傷害といった粗暴犯はむしろ増えています。

こうした犯罪を減らすには、薬物を断ち続ける人たちを支援する体制づくりは欠かせません。

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
この手の記事を見ていつも思うのですが単なる薬物の性質と薬物中毒をごっちゃにしていませんか
アル中とかタバコの中毒はやめたらすぐ治療前に逆戻りするという話はよく聞くのですが覚せい剤でそういう話は聞いたことがありません。
むしろそれなりに普通に生活できていてしばらくしてからばれるという経過をたどっているように見えます。
>たちまち覚せい剤を使ってしまい、また病院に逆戻りといった例も多いのだと、専門医からよく聞かされます。
また「すぐ」に病院に逆戻りと書いていないのが味噌ですよね。怖さを強調する割に具体的にどれほど怖いのかが全く表現されてません。
少なくともこの記事を見る限り覚せい剤中毒者より統合失調症の患者の方が危険に思えるので(だって中毒症状とされている症状は統合失調症の典型症状です)そういう患者は全員施設に隔離したほうがいいのでは。
不眠症患者
2015/05/07 18:46
悪いお医者さんもいるから反対です。自分が作家になりたいから、患者さんをネタにして作品書いたなどと言ってた人もいます。社会に愛が溢れていれば薬物事件は減少しますよ。有名私大卒の僕の給料が国鉄の切符切りの人より安いという愚痴を堂々とエッセイに書いていて驚きました。
医師免許さえあれば正義でしょうか?政治の力で日本人を幸せにしていきましょう。
反対!
2015/05/07 21:27
医者になったのが偉いのではなく患者を治したことが偉いのではないでしょうか。隔離は治療ではありません。
妄想性障害であるかのようにみせかける犯罪行為は日本では隠蔽されており重大な人権侵害です。
アメリカのように報道出来ないのは何故でしょうか?
名言でしょ?
2015/05/08 01:55
『薬物乱用・中毒百科』38ページでは「覚醒剤最大の問題が覚醒剤精神病である」としています。
依存症よりもまず、覚醒剤精神病の方が深刻な問題なのです。
もし、覚醒剤精神病が生じない覚醒剤が作れたら……
それは薬物開発者の夢です。

しかし今の所、ドーパミン刺激系覚醒剤で、覚醒剤精神病という副作用が存在しないものは登場していません。
ところが、覚醒剤精神病を治す薬は存在します。
それがミノサイクリン(ミノマイシン)です。

http://www.47news.jp/feature/medical/2010/12/post-469.html
http://www.naoru.com/kakuseizai.htm

この薬は個人輸入でも購入が可能なようです。
ただし、女性の場合は副作用が出やすいため、あまり使いやすくないとも言われています。

現在、多くの病院では覚醒剤精神病の患者が入院してきた場合、とりあえずハロペリドールで鎮静させ、あとは何日か待って体から薬物が抜けるのを待つといった対応を取ることが多いようです。
もちろん、「急性覚醒剤精神病」と言われる、体内に覚醒剤があるときだけ発祥するタイプならばこれでも十分ですが、さらにひどくなって「慢性覚醒剤精神病」に移行すると、薬が抜けた後も、非薬物性の統合失調症と同様の、幻覚・妄想状態が続きます。

抗精神病薬でこれら陽性症状を抑えるのも重要ですが、それでは根治にはならないので、今後は、こういったミノサイクリンのような、神経を修復する薬が積極的に使われていくことが望ましいです。

もちろん、乱用者本人にとっては、「ミノサイクリンがあるから、また乱用しても頭は治るし大丈夫」という認識を起こさせてしまいそうなので、あまり賛美するのも考え物ですが。
(というか私が乱用者ならそう考えます)
滅智蓮寺 熾
2015/05/08 15:48
医原性の依存でも、まるで自己責任であるかのように扱われる患者さんは気の毒です。国際麻薬統制機関で麻薬指定
されていることを知り驚きました。
患者は動く不動産と言われているそうです。
ベンゾ依存
2015/05/09 04:50
それはそのまま「動産」では……?
滅智蓮寺 熾
2015/05/09 11:45
精神科の医学書買って読んでいて本当の事をしりました。
でもアメリカみたいに和解金なんて払ったら製薬会社が潰れてしまいますよね。患者さんは可哀想だけど。
・・そうですね
2015/05/09 12:32
利権をめぐりガメラ対ギャオスの対決みたいですよね。
それでも濡れ衣だけは良くないと思います。
ベンゾも常用量依存ならそんなに心配しなくていいのではないかな。未来は明るいと思う。
ガメラ対ギャオス
2015/05/10 15:06
覚せい剤依存や誘発精神病に置き換えが可能なミノサイクリンを精神健常者が服用した場合も精神病誘発が考えられます。
覚せい剤に限らす、MDMAやコカイン、PCP、ケタミンなどに対応が可能とされるミノサイクリンの力価を考えると、精神健常者に無害と考えないほうが自然です。
匿名希望
2015/09/22 18:21
アシュトンマニュアルのダウンロードが何万もありました。困っている社会人は多いのです。
でも焦ることないですよ。大騒ぎしてた女性は断薬に成功しています。若うちは代謝が早いから無理して止めないほうがいいです。高齢になると楽に離脱できるという情報は本物でした。置き換えなど必要ありませんでした。
25年間寝つきが良かったせいか顔にシワがないのも本当です。笑
ベンゾ依存について♪
2015/09/22 21:22
行政犯罪を行政犯罪と言わせて貰えない日本は某国と同じ
既得権益を守るための小細工にはうんざりする。
警察国家
2015/09/27 08:17
某国が日本の1番を2番手利用して失脚させた。 
エンジニアや科学者には知恵があるけど権力者は金しかない。おまけに嫁ブサイク。
特許開発と権力
2015/09/27 09:19
身分保障がある連中が集団でやったことやで。
呆れてものが言えない。猿軍団が天才科学者を囲い込み
カミツキ、引っ掻き最低やと思う。
秀才は天才にはなれない。以上
民主主義ってなんだ
2015/09/29 00:00

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