弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS アジアで覚せい剤流通が急増|国連の合成薬物報告書2015

<<   作成日時 : 2015/05/27 23:46   >>

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5月25日、国連薬物犯罪事務所は2015年版の合成薬物報告書をバンコクで発表しました。アジア圏の急速な経済発展と、アジア太平洋地域の経済統合の加速に便乗して、不法薬物の国際流通もまた、記録的な拡大を続けています。
日本では、この数年、覚せい剤問題は沈静化しているようにみえますが、日本を取り巻く地域では、覚せい剤(メタンフェタミン)の流通量が急増しているのです。この波が、どんな形で日本に影響してくるか、あらためてアジアのいまが気になります

なお、今年の報告書では、アジア太平洋地域で記録的な拡大を続けているメタンフェタミンの問題とともに、国際社会に新たな脅威をもたらしているNPS(新精神作用物質)についても取り上げているので、アジア地域からみたNPS問題について次回で報告します。

[参照]
@2015年版合成薬物報告書
The Challenge of Synthetic Drugs in East and South-East Asia and Oceania
―Trends and Patterns of Amphetamine-type Stimulants and New Psychoactive Substances, 2015
http://www.unodc.org/documents/southeastasiaandpacific/Publications/2015/drugs/ATS_2015_Report_web.pdf
A国連薬物犯罪事務所・バンコク事務所の報道発表(2015年5月26日)
http://www.actagainstcorruption.org/southeastasiaandpacific/en/2015/05/regional-ats-nps-launch/story.html
画像

↑2015年版合成薬物報告書

●アジアで急増する覚せい剤
東南アジアから東アジア地域に出回る覚せい剤(メタンフェタミン)には、錠剤型と結晶型の2タイプがあります。錠剤の代表は、ミャンマーで密造される「ヤーバ」と呼ばれる小粒のもので、タイやベトナムなど東南アジア中心に流通しています。結晶タイプは、日本で「覚せい剤」として出回っているもので、アジア太平洋地域に広く流通しています。

この地域に出回る覚せい剤の増加を示すのが、押収量のデータです。まず、結晶型覚せい剤について、みておきましょう。2013年中にこの地域で押収されたのは約14トン、2008年から2013年の間に押収量は、2倍に増えました。
この地域での押収量の増加をけん引しているのが中国で、20013年の押収量は約8トンを記録しました。国別で目立っているのは、インドネシア(2012年)の2トン、マレーシア(2013年)の1.7トン、従来は錠剤型覚せい剤が中心だったタイでも、2013年に1.7トンを押収しています。ちなみに、日本でも近年税関での押収が増加気味ですが、覚せい剤押収が記録的に多かった2013年で0.9トン(859キロ)でした。
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↑東南アジア、東アジア地域で報告されたメタンフェタミン(結晶型・錠剤型)の押収量(報告書5ページより転載)
折れ線グラフが結晶型覚せい剤の押収量、目盛は右側。棒グラフ(左目盛)は錠剤型覚せい剤の押収量を表しています。

次に、この覚せい剤の供給源です。
もともと東南アジア、東アジア地域は覚せい剤の大消費地で、この地域内での覚せい剤密造が盛んです。密造所の摘発データから、この地域での密造状況を読み取ってみましょう。
中国では、2013年には約390か所の密造施設が摘発されましたが、その大部分が結晶型覚せい剤の密造を行っていました。
中国は、フィリピンやオーストラリア地域で消費される覚せい剤の主要な供給地となっていて、オーストラリアの専門家は、2012年7月〜2013年6月の1年間に、中国から密輸された結晶型覚せい剤は1.2トンを超えるとみています。
中国から密輸される覚せい剤のルートを代表するのは香港経由ですが、中継地として韓国を経由するルートもあるといいます。

また、従来は錠剤型覚せい剤の密造地域として知られていたミャンマー(黄金の三角地帯)で、近年、結晶型覚せい剤が作られていることも、この地域の状況に影響しています。2012年、ミャンマーの中国国境近くで、大規模な密造施設が摘発されましたが、ここで生み出されていたのは結晶型覚せい剤でした。
ミャンマーで密造された結晶型覚せい剤の大部分は、国境を越えてタイへ密輸され、国内で消費されるほか、さらに外国へ運ばれます。タイは、従来は錠剤型覚せい剤中心だったのですが、近年ではより効力の強い結晶型の需要が高まっているといいます。

供給源は、地域内にあるとは限りません。
近年、アジア太平洋地域で消費される覚せい剤の流通が、急速に地球規模に拡大し、各地の薬物犯罪組織が関わるようになってきました。
たとえば、東南アジア一帯では、西アフリカ系組織の手で覚せい剤が密輸されているとみられ、2014年にマレーシアで摘発された70キロの覚せい剤密輸の仕出し地はナイジェリアのラゴス空港でした。ほかにもタイ、ベトナム、カンボジア、韓国などで、西アフリカに関係した覚せい剤密輸が報告されています。
また、メキシコからの密輸も、日本、韓国、オーストラリアなどで報告されているほか、フィリピンで2012年に摘発された覚せい剤密造施設は、メキシコ系組織関係者の手で稼働していたといいます。
さらに最近では、イランやインドから送り出されたとみられる覚せい剤の報告も増えています。

ところで、この報告書は、結晶型覚せい剤について、大変興味深い分析をしています。前述したように、アジア地域に流通する覚せい剤には、錠剤型と結晶型(日本で流通しているタイプ)の2タイプがあるのですが、その地域の経済力に応じて分布状況が分かれているといいます。密売価格が安い錠剤型は、所得レベルの低い地域、あるいは同じ地域でも低所得階層を中心に流通し、所得レベルの高い地域では、より高価格の結晶型が好まれるという見方には、思わず納得しました。なるほど、所得レベルの高い日本や韓国、中国沿岸部では結晶型が中心です。
そうすると、今のところ、メコン圏の経済発展につれて飛躍的に流通量が増加している錠剤型覚せい剤も、地域経済のさらなる成長とともに、次第に結晶型の市場に塗り変えられていくのかもしれません。
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↑東南アジア・東アジア地域各国での結晶型メタンフェタミンの末端価格
報告書8ページから転載

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