弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 工藤會系幹部だから?裁判員裁判の対象外

<<   作成日時 : 2015/04/03 21:07   >>

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福岡地裁は、九州で最大規模といわれる暴力団組織、工藤會系の組幹部を被告人とする麻薬特例法違反事件などについて、裁判員裁判の対象から除外する決定をしました。

<ニュースから>*****
工藤会系幹部公判 裁判員裁判の対象外に
密売目的で覚醒剤約1キロを約930万円で購入したなどとして、特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)系組幹部のM被告(34)ら2人が麻薬特例法違反などで起訴された事件について、福岡地裁は裁判員裁判の対象から除外し、裁判官だけで審理するとの決定を出した。3月31日付。最高裁によると、除外決定は3例目。
福岡地検が昨年12月に除外を請求していた。地裁は決定で、「工藤会による組織的、計画的犯行であるか否かについて、裁判員が判断を求められることが予想される」と指摘。工藤会系組員が過去に市民を狙った殺傷事件などを起こしているとし、「組員らが裁判員やその親族らの生命や財産に危害を加える恐れがある」として請求を認めた。
これまでに除外された2件も工藤会系組員が被告の事件で、いずれも福岡地裁小倉支部が決定した。
読売新聞・九州発2015年04月02日
*****

裁判員法(正式には「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」)は、裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあり、裁判員の職務の遂行ができないような事情がある場合には、裁判所の決定により、その事件を裁判員裁判の対象から除外し、裁判官による合議体で取り扱うと定めています(3条1項)。

裁判員裁判の対象事件のうち、これまでに除外決定が出されたのは、いずれも工藤會系の事件で、福岡地裁小倉支部で審理された事件です。
1件目は2009年10月に起訴された、工藤會傘下の暴力団幹部ら2名が被告人となった、内部抗争による殺人事件で、これが全国で最初の除外決定でした。2件目は、2013年9月決定、建設会社社長銃撃事件で、工藤會の幹部2名が起訴されていました。
これで3件目の決定です。

●集中取締まりの焦点は裁判へ
ここ数年、ニュースで工藤會の名を頻繁に目にしました。警察庁は、最近発表された「平成26年の暴力団情勢」のなかで、緊迫が続いた福岡県の暴力団情勢について触れ、工藤會総裁等を検挙し、また事業者襲撃等事件の発生が減少するなど、一定の成果がみられるとしています。また工藤會に対する集中取締りについては、とくに1ページを割いて「トピックス」として、相次ぐ検挙などを紹介しています。

<警察庁の資料から>*****
2 工藤會総裁等の検挙
このように、暴力団対策法の規定も効果的に活用しつつ、工藤會に対する徹底した取締りと警戒を講じてきたところ、26年9月及び同年10月には、工藤會総裁、同会長等の幹部を逮捕するに至った。
(1) 殺人等事件の検挙
10年に発生した、元漁業協同組合長が射殺された事件につき、26年9月、工藤會総裁及び同会長を殺人等で逮捕した。
(2) 組織的殺人未遂事件の検挙
25年に発生した、女性看護師が刃物で突き刺されるなどした事件につき、26年9月から同年10月までに、工藤會総裁、同会長、同理事長らを含む幹部組員等を組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反(組織的殺人未遂)で逮捕した。
[出典]
警察庁組織犯罪対策部 暴力団対策課組織犯罪対策企画課編
「平成26年の暴力団情勢」
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai18/h26_jousei.pdf
*****
画像

↑工藤會に対する集中取締りを紹介したページ
上記「平成26年の暴力団情勢」13ページ

警察の集中取締りが一定の成果を収めた後は、暴力団対策の焦点は、裁判に移ります。裁判を通じて、社会が暴力団に立ち向かう姿勢を毅然と示すとともに、集中取締まりの名の下で捜査の行き過ぎがなかったかどうかをチェックするという、重大な役目も果たさなければなりません。

2009年10月に福岡地裁小倉支部で初の除外決定が出されたとき、地検支部は除外を請求した理由として、@工藤会系組員が過去に一般市民を狙った凶悪犯罪を起こしている、A構成員が組織維持のため裁判員に圧力をかける恐れもある、B裁判員が選任される地域と工藤会の勢力範囲がほぼ一致しており、裁判員が恐怖を感じる可能性がある、ことを挙げたと、当時のニュースは報じています。
[参照]
朝日新聞デジタル「組幹部の射殺、裁判員裁判から除外検討 福岡地検支部」2009年10月10日8時46分
http://www.asahi.com/special/080201/SEB200910090043.html

暴力団幹部が被告人となる刑事裁判は、どこの裁判所でも行われ、裁判員裁判で審理されることも珍しくないなかで、工藤會とはそれほど特別な組織なのでしょうか。地元の人が感じている恐怖心や不安感は、離れた土地に住む私たちにわかるものではないでしょうが、それなら、事件を地裁本庁で審理するという選択肢もあるのではないでしょうか。
少し昔のことになりますが、イタリアがマフィア撲滅に乗り出したとき、本拠地パレルモでは、「要塞法廷」と呼ばれる、厳重警備が敷かれた大法廷でマフィア裁判が行われたといいます。警察が暴力団集中取締りに乗り出したなら、それと同時に裁判所は、法廷警備を見直し、裁判員や証人の安全を確保する施策導入に乗り出さなくてはなりません。裁判の安全のための新施策や工夫をどんどん取り入れ、進化していく裁判所の姿を繰り返しアピールするうちに、裁判員の皆さんに安心して参加していただける環境が次第に整うことでしょう。そうした努力を伝えずに、裁判員裁判からの除外を認め続けては、暴力団に立ち向かう社会は完成しないと思います。

そういえば、工藤會総裁とナンバー2が元漁協組合長射殺事件で起訴された件でも、地検は裁判員裁判からの除外を請求することを検討していると報じられましたが、その後どうなっているのでしょうか。当面は、殺人など裁判員裁判の対象事件も含めて、工藤會関係の一連の事件の裁判が続きます。今後の裁判をどのように進めていくか、正念場を迎える小倉支部や福岡地裁の動きが気になるところです。

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