弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 天神暴走事件、運転者と幇助者に執行猶予付判決

<<   作成日時 : 2015/02/14 23:49   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 1

2014年2月4日の深夜、福岡市の繁華街で起きたいわゆる天神暴走事件の公判で、福岡地方裁判所は、運転者と幇助者の2被告人に判決を言い渡しました。

<ニュースから>*****
●危険ドラッグ:吸引し運転の被告に有罪判決 福岡地裁
福岡市の繁華街・天神で危険ドラッグを吸って乗用車を暴走させ、12人に重軽傷を負わせたとして、危険運転致傷罪に問われた福岡市博多区、自営業、A(37)と、同乗者で危険運転致傷ほう助罪に問われた福岡市南区、会社員、Y(37)両被告の判決公判が13日、福岡地裁であった。岡部豪裁判官は荒木被告に懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役3年)、吉田被告に懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。
毎日新聞 2015年02月13日 18時17分
*****

危険ドラッグ暴走事件の中でも、この事件の異様さはひときわ目を引くものでした。
混雑する交差点で信号待ちする車列に、突然割り込んできた1台の車が、次々に車10台に衝突しながら暴走した挙句、歩道を守るガードパイプに衝突して、ようやく止まったのです。報道された現場の写真には、大破したガードレールとともに、フロント部分や側面が文字通りボロボロになった真っ赤な車が映し出されていました。
被害者は、衝突された車の運転者など11人と、歩行者1人の合計12人、傷害の程度は加療5日から、加療2か月まで。幸いなことに死亡者こそありませんでしたが、人的な被害の大きさからいえば、これまでに起きた危険ドラッグ関連の交通事件の中でも、大規模なものといえるでしょう。
また、最初の衝突を起こした後も運転をやめず、次々と衝突を繰り返した点は、きわめて悪質だといえます。

運転者に対して、実刑が言い渡される可能性も十分にあったケースだといえます。付された執行猶予期間は法律が定める上限の5年、さらに保護観察付という判決の内容をみれば、まさにギリギリで執行猶予付になったということが、ありありと読み取れます。
上記の記事によると、裁判官は次のように説示したそうです。
*****
岡部裁判官は「極めて危険性が高く、死者が出なかったのは不幸中の幸いだが、ほとんどの被害者と示談が成立している」と述べた。また、判決言い渡し後、両被告に「30代の大人のすることとは思えない。犯状は重く、実刑も考えられた。示談で許してくれた被害者に感謝してほしい」と説いた。
*****

こうした事件では、事件後、被害者の被った被害を少しでも埋め合わせるために、被告人がどんな努力をしたかが、最も重視されます。具体的にいえば、被害弁償につとめることや、誠意をこめて謝罪することです。
刑事事件でいう示談とは、加害者側が誠意をこめて謝罪し、被害者にその謝罪を受け入れてもらったことを示すことで、両者の合意を示談書や合意書といった書類にします。
しかし、被害者に対する謝罪は、けっしてスムーズに受け入れてもらえるものではありません。被害者の立場に立てば、今さら詫びてもらっても取り返しはつかない、という気持ちは当然のことです。とくに被害の程度が大きいケースでは、謝罪の意を伝えようと訪問しても追い返され、謝罪の手紙は送り返されることも、しばしば経験します。
断られ、追い返され、そのたびに被害者の怒りや悲しみの大きさを感じ取りながら、加害者である被告人は反省を深めていくことになります。その過程にもまた、意味があるといえるでしょう。

ところで、この事件では、助手席に同乗した男性も、運転者に危険ドラッグを渡すなどして危険運転行為を助けたとして、危険運転致傷幇助罪で起訴され、2人の被告人が一緒に裁判を受けました。

2013年9月に静岡県で起きた事故で、運転者に危険ドラッグを提供し、自分の車の運転を認めた男性が、危険運転致傷幇助で有罪判決を受けて以来、危険ドラッグによる危険運転事件で、危険ドラッグ提供者が幇助罪で検挙された例がいくつか報じられています。長野県で2014年5月に発生した死亡事故でも、無免許の少年に危険ドラッグを提供し、車の運転を任せた男性が危険運転致死幇助で起訴されました。
なお、飲酒運転の事案ですが、酔っぱらった後輩が車を運転することを了承し、その車に同乗して飲酒運転を黙認した職場の先輩が、危険運転致死幇助で有罪になった例があります(平成25年4月15日最高裁決定、危険運転致死幇助事件)。薬物やアルコールの影響で正常な運転が困難な状態になっている人に対して、運転をやめさせるべき立場にある人が、運転することを認めたり、制止せずに黙認し続けたりすることが、幇助にあたると判断される場合もあるのです。

薬物の影響を受けている状態での自動車運転、その場に居合わせた身近な人には、何としてもやめさせる責任があるのです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
深夜も若者で賑わう天神交差点の大事故。
繰り返しニュースで流された映像を見て、車の特有な挙動に気付きました。

暴走した車は、最近は世界的にも大流行のSUVでした。

見た目は都会的なデザインですが、車体(プラットフォーム)は、れっきとした4輪駆動車です。
主用な想定路面は、グラベル、氷雪路面が本来の目的です。


驚愕したのは、あれだけの車が並んだ交差点後部から進入。2車線の間に割り込み、あっという間に交差点前方に出られた状況です。

最初に左右の車に挟まれ動けなくなった状況を、あのSUVは悪路に阻まれスタックした状況を想定。車のECU制御が4輪デフロック状態になり、前方の車を踏みつけたと思われます。

4輪駆動車の駆動系統には、前、中間、後ろに差動制限装置(リミテッド スリップ ディファレンシャル)が装着されます。
アクセル全開で片側のタイヤが空転すると、差動制限装置により接地側からトルクが伝わり、最大の結束駆動力に変わります。 4輪駆動車の特徴が挙動に現れました。

もし運転手の車が、軽量な前輪駆動車()えば量自動車、だったら、僅かに軽減したかもしれません。

現在、世界で開発されている安全自動運転支援システム、自動走行システムへ、運転手の突発的な異常事態を、予想、予測させる事が必要だと思います。

神流美 王井門
2015/02/16 23:14

コメントする help

ニックネーム
本 文
天神暴走事件、運転者と幇助者に執行猶予付判決 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる