弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 危険ドラッグによる死亡、同伴男性を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕

<<   作成日時 : 2015/01/22 23:32   >>

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おととしの年末、静岡市内で起きた危険ドラッグによる死亡事故で、同伴していた男性が、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されました。被害者は18歳の少女、交際相手とホテルでアロマリキッドを飲み、薬物急性中毒を起こしたといいます。

<ニュースから>*****
●危険ドラッグ使用の少女死亡=遺棄致死容疑で男逮捕―静岡県警
交際相手の少女が危険ドラッグ服用後に急性薬物中毒を起こしたのに、適切な処置をせずに死亡させたとして、静岡県警捜査1課などは21日、保護責任者遺棄致死容疑で、建築作業員K容疑者(32)を逮捕した。「薬物使用の発覚を恐れて通報しなかったわけではない」と話し、容疑を一部を否認しているという。
逮捕容疑は2013年12月30日午前0時40分ごろ、沼津市のホテルで、交際していた少女=当時(18)=とともに危険ドラッグを服用。少女が錯乱状態となったのに、直ちに医師による治療を受けさせず、多臓器不全で死亡させた疑い。
同課によると、2人はK容疑者が購入したアロマリキッドと呼ばれる危険ドラッグを服用。少女が呼び掛けに応じなくなったため、同容疑者が同4時半に病院に運び込んだという。
時事通信 1月21日(水)12時5分配信
*****

少女が錯乱状態に陥ったため、逮捕された男性は少女を連れてホテルを出て、車で市内を転々とした後、夜間救急医療センターに少女を運び込んだといいます。少女に異変が起きてから3時間以上が経過していました。
捜査陣は、1年がかりで全国の専門家から意見を聞き、早い段階で救急通報していれば、救命できた可能性が高いとして、逮捕に踏み切ったということです。
事件の詳しい経緯について、下記に詳しい記事があります。
■静岡新聞「生死分けた3時間余 沼津の少女放置死」2015/1/22 08:11
http://www.at-s.com/news/detail/1174161116.html

2009年に東京の高級マンションでMDMAを服用した女性が死亡し、その後、男性タレントが保護責任者遺棄致死罪に問われた事件を思い起こした方も多いことでしょう。
この事件では、被告人は当初、MDMA使用罪で起訴され、有罪判決が確定しましたが、その後改めて逮捕され、MDMA譲渡、保護責任者遺棄致死で起訴されました。異例の展開に、当時は様々な噂も飛び交いましたが、保護責任者遺棄致死での立件に伴う捜査上の困難が、大きく影響していたといえるでしょう。

この事件では、検察官は、より罪の重い保護責任者遺棄致死で被告人を起訴しましたが、裁判所は、保護責任者遺棄罪の成立を認めたものの、公訴事実である保護責任者遺棄致死罪の成立は否定し、この点でも話題になりました(東京地方裁判所平成22年9月17日判決、保護責任者遺棄致死、麻薬及び向精神薬取締法違反被告事件)。

判決は、密室状態の室内で、MDMAによる急性中毒症状から被害者が危険な状態に陥った場面で、「被告人以外に被害者の生存に必要な保護を加えられる者はおらず、また、ここで生存に必要な保護として考えられる119番通報をして救急車の派遣を求めることは被告人にとって極めて容易であったことに照らし、被告人には被害者を保護すべき責任があった」として、被告人の責任を認めています。
そして、被害者が錯乱状態に陥った時点で被告人が119番通報していれば、「被害者を救命できる可能性があったのに、そのような行為に及ばなかったものであるから、被告人に保護責任者遺棄罪が成立することは明らかである。」としました。
いっぽう、判断保護責任者遺棄致死罪の成否については、「犯人において生存に必要な保護に及べば病者等の救命が確実であったことが合理的な疑いをいれない程度に立証されることが必要である。」として、このケースでの救命可能性について、医師の証言などを具体的に検討したうえで、「専門家である医師の間でも見解が分かれているということになるわけであるから、結局、被害者が錯乱状態に陥ってから数分が経過した時点で被告人が直ちに119番通報したとして、被害者の救命が確実であったことが合理的な疑いをいれない程度に立証されているとはいえない」と結論付けました。つまり、保護責任者遺棄致死罪の成立は否定されたわけです。

保護責任者遺棄致死事件は、裁判員裁判の対象事件です。二人きりの室内で、一緒に薬物を使った相手が苦しみだしたといったケースでは、その場にいた人が保護すべき責任を負っているかどうか、また被害者に生命の危険があることを被告人が認識していたかといった基本的な点から検討しなければなりません。
さらに、被害者が死亡に至った経緯を検討し、もしも被告人が119番通報していれば被害者を助けることができたかどうかを具体的に判断していくことになります。

裁判員にとっては、負担の大きい事件だと思います。でも、こうした事件が法廷で審理されることで、目の前で苦しんでいる相手の生命を救うという責任の重さについて、私たちは、法律を通じて確認することになるのです。

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内 容 ニックネーム/日時
ドラッグのオーバードース等で苦しんでいる場合でもほとんどは死に至らないと思います。数時間〜1日たてば正常に戻るのが99%ではないでしょうか。そのような認識があるという前提では、救急車を呼ぶリスクを避けその場をはなれずにきちんと様子を見続け介護してあげるというのが第一選択肢になると思います。放置するとかは問題外の対応ですが、特に違法ドラッグを使っている場合、救急車により総合病院に搬送されれば確実に警察に連絡が行き、状態が落ち着き退院するときには警察が待っているわけですから。付き添った本人も救急搬送したものから薬物が検出されれば病院はその時点で即警察に連絡をし、警察が即座に病院に来ます。救急搬送されたものから薬物反応が出ている以上の同伴者の尿検も避ける事ができないでしょう。もし病院で薬物反応がでても警察への通報はしないということになっていれば救急車を呼ぶことへの抵抗もなくなり救えた命もあったと思うのですが。そもそも薬物を使うということ自体が間違っているのでしょうが、ドラッグユーザーをゼロにすることは不可能な現状から考えて、薬物反応が出ても病院から警察への通報はしないといことを法的に定めておく必要があるのではないでしょうか
lol again
2015/01/25 20:42
>数時間〜1日たてば正常に戻るのが99%ではないでしょうか。

小森さんの著書(薬物事件の弁護術)151ページに、科捜研の人の談話として「性的に興奮するような激しい運動をした場合などには覚醒剤の毒性は10倍以上になる」とあります。

この少女は、錯乱状態になったため、暴れるなどして、激しい運動状態だったと思います。
そのため、錯乱していなかった同伴男性よりも、薬物の毒性が強く現れたのだと思います。

そういう知識(暴れてると危険)があるならば、錯乱の初期に救急車で受診し、たとえばハロペリドールを打って鎮静させるなどの方法により、運動をやめさせることは可能だったでしょう。
しかし、多くの人は「激しく暴れる元気があるのだから死ぬわけがない」と解釈してしまうと思います。
実際には、本来であれば倒れこんでしまうほどの疲労が体に蓄積しているのに、薬物のせいでリミッターが消滅しているため、際限なく激しい運動を続けてしまうのでしょう。


話は変わりますが、脱法ドラッグの界隈では、死にそうになっても救急車は呼ぶなという掟のようなものが語られてもいます。
この意見は必ずしも多数派ではないでしょうが、そういった部分の基本的な考え方を、きちんと議論する必要があると思います。
確かイギリスでは、テレビCMでドラッグのODの場合にきちんと救急車を呼びましょうという意味の啓発が行われたと思います。
滅智蓮寺 熾
2015/01/27 02:02

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