弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 薬物か?錯乱状態で保護された男性の死亡が続く

<<   作成日時 : 2014/06/01 23:51   >>

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東京港区で、奇声を上げ暴れていた全裸の男性が警察官に保護され、その後死亡したと伝えられています。今のところ、死因や錯乱状態の原因などは発表されていませんが、このニュースに接して「脱法ドラッグか?」と思った人も多いことでしょう。
そういえば、5月中旬にも、錯乱状態で保護された男性が死亡したというニュースがありました。男性の周辺から薬物らしい物が見つかっているということです。

<ニュースから>*****
●警察官保護の男性死亡=死因を調査−警視庁
警視庁高輪署は1日、東京都港区港南の路上で、奇声を上げ暴れていた無職男性(37)を同署で保護したところ、ぐったりして呼吸がなくなり、搬送先の病院で死亡したと発表した。同署は司法解剖して詳しい死因を調べる。
同署によると、5月31日午後4時ごろ、「全裸で男が暴れている」との通報が相次いだため、署員3人が駆け付け衣服を身に着けていない男性を確保。体を保護シートにくるんでパトカーで同署に移したが、保護室に入れる直前に、ぐったりしているのに気付き119番した。男性は同日午後7時40分ごろ死亡が確認された。
保護シートにくるまれていた時間は約25分だったという。男性は4月にも同署に保護されたことがあった。
時事ドットコム【時事通信】(2014/06/01-12:12)
*****

<5月12日のニュース>*****
●精神錯乱状態の男性、警官保護後に死亡 都内ホテル、室内に粉末も
東京都内のホテルで精神錯乱状態に陥り、警視庁目黒署に保護された男性(37)が約20時間後に死亡していたことが12日、警視庁生活安全総務課への取材で分かった。ホテルの室内から覚醒剤のような粉末などが見つかっており、同課は成分の鑑定を急ぐとともに、13日にも男性を司法解剖して死因を調べる。
・・・・・・11日午前2時35分ごろ、東京都目黒区内のホテルの一室で、大声を出し、腕時計を投げつけるなどしていたのを目黒署員が発見。同署員は精神錯乱状態と判断し、保護バンドを手足に巻くなどして保護した。
男性は間もなく心肺停止状態になり、都内の病院に搬送されたが、同日午後10時55分ごろ、死亡が確認された。
・・・・・・室内からは覚醒剤のような粉末が入ったポリ袋のほか、茶色い粉末入りの袋や空の袋も見つかり、同課は男性が何らかの薬物を摂取していたとみている。
産経ニュース2014.5.12 18:54
*****

こうしたニュースに触れていつも思うのは、なぜ救急隊員が搬送せずに、警察官が保護にあたったのだろうという素朴な疑問です。
もし、叫んだり暴れたりしている人が血を流しているなら、誰だって救急車を呼ぶことでしょう。でも、外見上からはわからない原因で錯乱状態が起きている場合や、薬物使用の疑いがある場合は、その場に居合わせた人は、反射的に110番に通報してしまうのかもしれません。そして、通報を受けた警察官は、とくに珍しくない保護事案と判断すれば、対象者を力ずくで抑え込み、パトカーに乗せ、警察署に連れて行って保護の手続きを取ることになるのでしょう。

そう、ほとんどの場合は、これで十分なのです。でも、稀ですが、救急隊員が搬送して病院で適切な医療措置を取ってさえいれば、死亡事故に至らずに済んだケースもあるはずです。
とくに、薬物による急性中毒が起きているような場合には、錯乱と同時に、体温や血圧が異様に上昇して心不全や脳の血管障害が起きかねない危険な状態になっていることもあるのです。

仮に、こうした状態の人が救急搬送されたとすれば、病院では、まず医薬品を投与して患者の興奮を鎮めることになるでしょう。ところが警察では、おとなしくさせようと力ずくで抑え込み、対象者をさらに興奮させて危険性を高めてしまうのです。また、異様な高体温などの症状があれば、病院ではできるだけ速やかに体温を下げる措置がとられるはずですが、警察では保護室などで経過を観察するだけです。
さらに、医療的な手当てができない警察では、ときには、対象者が暴れ回って自らを傷つけないよう手足を拘束することもありますが、その結果、身体の自由を失った対象者が吐しゃ物をのどに詰まらせてしまうことだってありうるのです。
病院へ搬送していれば助かった生命が、警察署で保護したために失われるようなことは、絶対にあってはなりません。

警察署での保護でよいのか、病院での医療措置が必要なのか、その見極めが肝心なのです。しかし、医学知識を持たない警察官にその判断をゆだねるわけにはいきません。
だったら、救急治療の専門医の指導を仰ぎ、だれでもわかるガイドラインを作成し、保護に当たる警察官を訓練する・・・。こうした解決策を早急に整備しなければ、頻発する保護対象者の死亡という事態に、歯止めをかけることはできないでしょう。

覚せい剤や脱法ドラッグなど、多種多様な乱用薬物があふれている現在、薬物による急性中毒の症状も多様化しています。日ごろから覚せい剤事件に慣れている警察官の感覚が、通じないケースだってあることでしょう。薬物による急性中毒が疑われるケースでの保護対応を見直すべき時が来ていると思います。

なお、警察官による保護は、警察官職務執行法で定められています。同法第3条は「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して次の各号のいずれかに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。」と定め、その第1号に挙げられているのが「精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者」となっています。

ちなみに、警察白書によれば、2012年中に全国の警察官によって保護されたのは、214,073人でした(平成25年版警察白書 統計資料)。

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内 容 ニックネーム/日時
既読でしたらすみませんが、『薬物乱用・中毒百科』の24〜25ページに、拘束性窒息死に関する詳しい解説があります。
滅智蓮寺 熾
2014/06/09 18:35

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