弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 中国での覚せい剤密造 | 覚せい剤密輸の半世紀9

<<   作成日時 : 2014/05/11 16:48   >>

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2、中国大陸への密造拠点の移転
 1990年代初めころ、韓国や台湾は覚せい剤に対する取り締まりを強化し、国内での密造を制圧しました。覚せい剤供給の源泉を断ったことで、韓国や台湾では、拡大し始めた覚せい剤乱用問題が鎮静化し、わが国でも、密輸される覚せい剤が減少し、品薄状態となりました。一時的には、大成功をおさめたことになります。
 しかし、その裏では、密造グループの手で、中国大陸への密造拠点の移転が行われており、間もなく、新たな生産地から覚せい剤が供給され始めるのです。取り締まりの厳しくなった韓国や台湾から、覚せい剤密造拠点が中国本土へ移転していった経緯について、当時の警察庁幹部は次のように記しています。
 「1980年代の終わり、中国は台湾との対岸交流を認め、台湾と中国の経済交流が容易となった。台湾の密造グループは、これに目を付け、90年代の初め、福建省厦門に会社を設立、密造器具と原料等を密かに運び込み覚せい剤の密造を開始した。以降、中国東南部は覚せい剤密造の一大拠点となった。一方、韓国で過去に摘発されたグループも刑期を終え、刑務所から出所し始め、そのうちのいくつかは中国東北部の朝鮮族居住地を密造拠点として開拓を始めたのである[62] 。」
 台湾の密造グループによって覚せい剤密造が伝えられた中国東南部の沿岸地域は、その後、中国でも有数の結晶タイプ覚せい剤の密造地域として、急速に生産力を高めていきます。国連薬物犯罪事務所の報告書には、次のような記述があります[63]。
 「覚せい剤の密造拠点は明らかに、東南部の省、とくに(香港に近い)広東省や福建省に集中しているが、当局によると、中国内の他の地域でも覚せい剤の密造が報告され始めている。中国の密造拠点の多くは、現に、香港や台湾の犯罪組織のために活動している(私訳) 。」
画像

↑UNODCに報告された中国の覚せい剤密造拠点の摘発数
国連薬物犯罪事務所編「2003年版世界の不正薬物動向」より[64]

 中国南東部の沿岸地域で行われる覚せい剤密造の実態を知る手掛かりが、ごく最近もたらされました。今年1月、中国広東省沿岸部の小さな村の一斉捜索で、3トンの覚せい剤が押収されたというニュースがありました。
 広東省陸豊市博社村、戸数2000ほどの小さな村で、数十軒が覚せい剤密造に関わり、逮捕者は200人近くにのぼりました。この地域では1990年代から覚せい剤密造が始まり、次第に村人の多くが覚せい剤の密造や密売に加担するようになったといいます。密造は、地域の密造グループを取り仕切る有力者の下で、家族や親族といった小規模なグループによる手作業で行われています。作業場は一般住宅の一隅や簡素な作業小屋で、取り立てて大きな設備も使わず、手作業で覚せい剤が生み出されています。
 まさしく、上記で指摘された中国東南部の密造地域の一部です。1990年代に、台湾の密造グループによって持ち込まれた覚せい剤密造が、この地域の小さな村々に伝わり、今日まで引き継がれてきたわけです。なお、中国をはじめ東南アジア一帯で流通している覚せい剤には、錠剤タイプと結晶タイプがありますが、台湾や韓国から密造が伝えられたのは、結晶タイプです。詳しくは後の項目で述べます。
 ただし、密造方法は、時の経過とともに変わっているようです。摘発された博社村で行われていたのは、原料としてマオウ(エフェドラ)を使う方法です。台湾では、エフェドリンを原料とする方法が主流だったはずですから、中国本土で密造が行われるようになって後、この土地で入手が容易だったエフェドラを使う方法が主流になっていったものと思われます。漢方薬として古くから使われてきたエフェドラは、中国北部に自生する植物で、含まれているエフェドリンを抽出して覚せい剤密造原料とします。エフェドラの栽培や流通は国によって管理されていますが、それでもヤミのルートに乗って不法流通が絶えず、近年、中国で摘発される覚せい剤密造事犯の90%程度が、エフェドラを原料として使っていると報告されています[64] 。

注釈と出典
[62] 大橋亘「現下の薬物情勢と薬物対策における当面の課題」警察学論集51巻5号、37頁、1998年
[63] UNODC, Global Illicit Drug Trends 2003, P.35, 2003
[64] 前注63、同ページ
[65] UNODC, Patterns and Trends of Amphetamine-Type Stimulants and Other Drugs: Challenges for Asia and the Pacific 2013, p.62, 2013

続く

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