弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 米連邦の新たな減刑基準、薬物事犯受刑者の刑期短縮へ

<<   作成日時 : 2014/04/30 23:54   >>

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先日、米司法省は、連邦刑事施設に収容されている受刑者に係る減刑の審査基準を緩和すると発表しました。新基準は、減刑の対象者をとくに薬物事犯者に限定していませんが、実際は、過去の厳罰化政策によって長期の刑を言い渡された薬物事犯者が主な対象になるようです。
米国のメディアは、これまで、ごく特別な場合に限って認められてきた減刑による早期釈放の門戸が開放され、多数の薬物事犯受刑者が釈放されることになると報じています。CNNによると、連邦刑務所に収容されている20万人を超える受刑者のうち、新基準に該当するのはおよそ2000人、法律家による審査を経た後に数百人が対象になるとみられています。

新たに定められた基準は、次の6項目です。
・現在、連邦の刑事施設で服役していて、同じ罪について現行の法制で裁判を受けたとしたらより軽い判決を言い渡されたであろう者
・大規模な犯罪組織、ギャング、カルテルとの明らかな関係がなく、非暴力の、軽度の罪を犯した者
・少なくとも10年を超える拘禁刑を言い渡された者
・重大な前科のない者
・受刑中の態度が良好な者
・今回の服役中あるいは刑期の開始以前に暴力行為の経歴がない者

示された新基準の第一に挙げられているのは、過去の厳罰政策によって過酷な刑を言い渡された人たちへの救済です。
1980年代のアメリカで広まった薬物に対する寛容度ゼロは、一連の厳罰化法令の導入をもたらし、薬物犯罪に対して科される刑罰は非常に厳しいものになりました。必要的最低量刑制度やスリーストライク法などによって、単純な薬物事犯者であっても、再犯を重ねると、数十年や終身刑といった拘禁刑を言い渡されたのです。その後、多くの批判を受けて薬物犯罪者に対する刑罰の見直しは進みましたが、今でも、厳罰時代に言い渡された刑に服している受刑者がいるのです。
司法省の報道発表には、「現在の法制の下で科される判決から見れば時代遅れになっている旧弊で過酷な刑罰は、刑事司法制度に対する一般の信頼を侵食している。そして私は、この取り組みが、法の下の平等というアメリカの理念を大きく前進させると確信している。」という、コール副長官の発言が掲載されています。

オバマ政権は、非暴力犯罪者に対する刑の軽減措置を進めると表明し、一連の取り組みを進めており、昨年末には、大統領の署名によって8名の受刑者が減刑を受けて釈放されました。また、つい先日は、連邦の量刑委員会の投票で、薬物事犯者に対する量刑基準の引き下げに賛成の結果が示されたというニュースがあったばかりです。
厳罰をもって薬物犯罪を封じ込めるという手法の是非が問われて数十年、刑罰大国アメリカが、オバマ大統領の下で、ようやく動き出しました。

それにしても、日本では、こうした議論そのものがほとんどないのは、何故でしょうか。たしかに、米国と比べて薬物事犯者の数は限られており、しかも刑務所の収容人員もはるかに少ないのですが、少量の薬物を所持したり、ただ使用したという人たちが数年の刑を言い渡され、大切な人生の一部を受刑者として過ごしている現実は、日本も米国も同じです。
いつもながら、私の持論を繰り返します。刑罰で薬物問題を解決することはできません。厳罰で対処することは、刑を受ける当事者だけでなく、社会にも様々なマイナスをもたらします。より賢明なやりかたを見つけ出すまで、私たちはもっと悩み、議論しなければならないのです。

[参照]
@米司法省の報道発表
Announcing New Clemency Initiative, Deputy Attorney General James M. Cole Details Broad New Criteria for Applicants(April 23, 2014)
http://www.justice.gov/opa/pr/2014/April/14-dag-419.html
ACNNのニュース記事
CNN>Rules change means more drug offenders eligible for clemency(April 26, 2014)
http://edition.cnn.com/2014/04/23/politics/drug-clemency/

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