弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 密売人検挙のニュースで覚せい剤の流通経路をまとめてみた

<<   作成日時 : 2014/04/20 23:12   >>

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大阪で密売人検挙のニュースが、相次いで報じられました。逮捕されたのは、100グラムを仕入れて営利目的での譲り受けに問われている密売グループと、密売用の覚せい剤267グラムを営利目的で所持したとされる密売人。
両者とも、取り扱った覚せい剤の量からみると、いわゆる中卸(なかおろし)と呼ばれる中間密売人なのでしょうか。
4月18日のニュースには、密売グループが約100グラムの覚せい剤を105万円で仕入れたとあります。1グラム当たりにすると10500円。この1例だけを取り上げて云々することはできませんが、最近、様々な場面で見聞きする、卸売価格が全体に安くなってきているようです。しかも、時おり報じられる密売人検挙のニュースでは、押収される覚せい剤の量も増えています。
やはり、日本国内に流通する覚せい剤が、かなり増えているのでしょう。

<4月19日のニュース>*****
●宅配便で覚醒剤仕入れ…大阪拠点の密売グループ
宅配便で覚醒剤を仕入れていたとして、近畿厚生局麻薬取締部が、住所不定、無職F被告(50)ら3人を覚醒剤取締法違反(営利目的譲り受け)容疑で逮捕、起訴していたことが、捜査関係者への取材でわかった。
3人は大阪市内を拠点とする密売グループ。宅配便の発送元は東日本とみられる。同取締部は、全国の密売人を顧客として覚醒剤を流す「宅配ネットワーク」が存在しているとして、上部組織の実態解明を進める。
起訴状などでは、F被告らは昨年8月、大阪市内のマンションで覚醒剤約100グラム(末端価格700万円相当)を宅配便で受け取り、仕入れ値105万円で購入したなどとされる。
読売新聞 2014年04月19日
*****

<4月18日のニュース>*****
●“売人20面相”を逮捕 偽名多用で違法薬物販売 近畿厚生局
覚醒剤を密売目的で所持したなどとして、近畿厚生局麻薬取締部神戸分室が、覚せい剤取締法違反(営利目的所持)などの疑いで、住所不定の貸金業T(49)と内妻B(38)の両被告=別の覚せい剤取締法違反罪で起訴=を逮捕していたことが17日、捜査関係者への取材で分かった。T容疑者は20以上の偽名を使い違法薬物を密売しており、捜査関係者の間で「売人20面相」と呼ばれていた。
・・・(略)・・・T容疑者は大阪や東京などの短期賃貸マンションを転々としていたが、同分室が3月、大阪市西区のマンションなどでT容疑者ら2人を発見。覚醒剤約267グラムを営利目的で所持していたとして、同法違反容疑で逮捕した。
MSN産経ニュース 4月18日(金)9時37分配信
*****

密輸された覚せい剤は、まず、元売(もとうり)と呼ばれる組織の手に渡り、数段階の卸売りを経て、全国通津浦々のユーザーの手に届きます。
覚せい剤の密売は、暴力団にとっては昔からの資金源のひとつで、全国の警察に検挙される覚せい剤密売関係の被疑者のほとんどが、暴力団関係者で占められています。しかし、覚せい剤取引は、暴力団組織の系列とは関係なく、グループが流動的に連携したり、系列を超えて取引が行われることも多いため、流通の全体像をとらえることはなかなか困難です。
覚せい剤の取引価格は、取引の量、時期、地域といった条件で異なり、また売買の相手ごとに差が大きく、しかも、相場は市場の需給バランスで日々変化しています。
マスコミがよく取り上げる「末端密売価格」とは、最末端の密売人がユーザーに売る価格で、警察庁の集計に基づいて現在は1グラム当り7万円で計算されていますが、私が感じている実勢価格よりかなり高めです。いっぽう、密輸された覚せい剤がユーザーの手に届くまでの間には、複雑な流通経路があり、各段階で取引価格も変化します。流通過程での取引価格は、あまり世間の目に触れることはありませんが、全国の麻薬取締部が検挙した被疑者の供述に基づいて、麻薬・覚せい剤の密売価格を継続的に集計した厚生労働省の資料から、2012年の取引価格の一部を抜き出してみます(下記参照資料)。
■覚せい剤の大量取引価格・2012年・1グラム当たり
・1キログラム単位の取引・・・[最低価格]6,000円、[最高価格]12,000円
・100グラム単位の取引・・・・・[最低価格]8,000円、[最高価格]20,000円
・10グラム単位の取引・・・・・・[最低価格]10,000円、[最高価格]25,000円

@大卸(おおおろし)
最初の取引はキロ単位で、1回の取引で動く資金も多額になるため、資金力のある密売組織がこの段階の取引に参加しています。1キロ単位の取引での価格が、上記のように6,000円〜12,000円だとすれば、1キロを仕入れるとなると600万円から1200万円の取引になるわけです。
キロ単位の取引は、直接顔を合わせて行われることが多く、新幹線の駅や空港の周辺、高速道路のパーキングエリアといった、さりげない場所で取引が行われることもよくあります。
大卸の密売組織は、キロ単位で仕入れた覚せい剤を小分けし、100グラムから数十グラムといった単位に小分けして、下位の密売人に卸売りします。

A中卸(なかおろし)
100グラム単位で覚せい剤を仕入れ、これを10グラム単位や5グラム、3グラムといった量にわけて、末端の密売人に卸売りするのが、中卸と呼ばれる密売人です。
上記のように100グラム単位取引では、1グラム当り8,000円〜20,000円ですから、中卸の密売人は、100グラムの覚せい剤を80万円から200万円で仕入れ、それを100万円〜250万円で卸売りしていたことになります。
中卸が、密売市場で売る商品を品揃えすることもよくあります。最近の薬物密売人は、覚せい剤のほかに大麻やコカインなどの麻薬を取りそろえ、また注射使用するユーザーには注射器も売りますが、こうした品物は、覚せい剤とは異なるルートで流通しているため、複数の仕入れ先から品物を仕入れ、覚せい剤とともに取引相手に売るのです。
卸先は広い範囲にわたることが多く、最近では、宅配便や郵便局のレターパックで品物を配達し、代金は指定口座に振り込むという取引方法もよく見かけます。

B末端の密売人
最末端にいる密売人の覚せい剤仕入れ量は、普通、それほど多いものではなく、1回に仕入れる量は、数十グラムから数グラムといったものです。10グラム単位での取引価格は、1グラム当たり1万円〜2万5000円と割高になります。
末端密売人は、仕入れた覚せい剤を0.1グラムや0.2グラム程度の少量に小分けして、ユーザーに密売します。実際に密売される覚せい剤は、1万円、2万円といった売りやすい価格単位で決められることが多く、仕入れ価格の変動は、パック(パケ)の内容量に反映されています。同じ1万円パケでも、仕入れ価格が安い時期には内容量が多めになり、値上がりすると量が減るわけです。末端密売人の多くは、自らも覚せい剤乱用者で、仕入れた品物から自分の使用分を浮かすためには、こうした売り方のほうが都合がよいという事情もあります。
末端の密売人の利益幅はかなり大きいのですが、零細な密売人にとっては、仕入れ資金を用意することは負担となるため、自分で仕入れをせずに、密売グループの手先となって売りさばき、歩合で報酬を受け取る例も見かけます。

[参照資料]
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課編『麻薬・覚醒剤行政の概要(2014年1月)』
第67表「覚せい剤の不正取引価格(全国)*平成24年1月〜12月

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
http://drug.space.toratorawiki.net/?&ZdfKSwCw
私のサイトに「カチノン系化合物とは何か」という解説記事を書きました。
よろしければご参考にしていただけると幸いです。

カチノン包括規制の影響で、ネット販売の大手であったU店が撤退し、これからはもう新たなカチノン類は脱法ドラッグ市場に現れないのではないかという観測もありましたが、最近、規制の抜け穴を突いた新たなカチノン類が出回りそうな状況です。

α-PVP(麻薬指定)とα-PHPP(薬事法指定薬物)のちょうど中間の構造を持った、α-PHPという物質なのですが、うまい具合に規制の網からはすり抜けています。
今後も、カチノン規制における、権力側と業者・ユーザー側の攻防は続きそうですね。

なお、同じカチノン類でブプロピオンという未規制の物質(海外では医薬品として使用されています)も存在しますが、どの程度乱用のポテンシャルがあるかは未知数です。
こちらはもしかすると正式に医薬品として認可される可能性も残されています。
滅智蓮寺 熾
2014/04/26 11:31
ブプロピオンは現在、日本の精神科医も使用しています。
知り合いの薬剤師によれば、日本での治験は第三相までいって、無期限中止になりました。
製薬会社の都合だそうです。
もしかしたらカチノンの系を誰かが嫌ったのでしょう。

中には有益な脱法、違法ドラッグもあるのに、国家は何を畏れてるのでしょうね?
mossarin
2014/04/27 00:42

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