弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 課税と価格の戦略|変わり目の薬物政策3

<<   作成日時 : 2014/01/29 23:58   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 1

コロラド州で始まった嗜好品としての大麻販売について続けます。
前記事は
電子機器による監視|変わり目の薬物政策2(2014/01/23)
http://33765910.at.webry.info/201401/article_7.html

コロラド州では、大麻販売制度を開始するにあたって、認可店の大麻販売に特別税を課すよう定めています。
小売時点で課されるのは、従来からの販売税(2.9%・州税)に加え、特別税10%、さらに自治体独自に市税などの上乗せ課税を定めている場合もあります。また事業者に対しては、卸売額に対して平均で10%という消費税が定められています。デンバー市の場合、州税および市税を合わせると、小売価格に占める税の割合は28.5%強になるといいます。

ユーザーの側からは「高い」という声もあがっているようですが、この税率そのものは、特に目を引くものではありません。
たばこ税のように、公共財源確保のためだけでなく、税を課して販売価格を引き上げることによって消費量を抑制するために、あえて高率の税を課す場合もあります。昨年末、ニューヨーク市で、たばこ1箱の最低価格を10.5ドル(約1050円)とする条例が制定されましたが、このケースでも、喫煙率の削減が目的だとされています。ちなみに、わが国では、たばこに対しては国と地方のたばこ税、特別たばこ税が課され、消費税と合わせると小売価格の64.5%を税金が占めているのです。

課税によって州政府も自治体も財源を得ることができ、しかも、市場の爆発的な拡大も抑えることができるなら、実にありがたいことですが、しかし、問題はそれほど単純ではないのかもしれません。

コロラド州には、いま、3種類の大麻市場が存在し、それぞれの市場で売買される大麻の価格には大きな開きがあると、ビジネスウィークの記事は指摘しています。
まず、開幕したばかりの大麻の認可販売市場では、上乗せされる特別税や、先進システム導入のコストに加え、目下のところ大麻の需給バランスが整っていないために供給不足が起き、小売価格が急騰しているようで、1オンス(約28グラム)当たり400ドル程度だといいます。1グラム当たり14ドルで、日本円でいえば、1グラム当たり約1400円となります。
いっぽう、従来からある医療用大麻の市場では、税率が低く設定されており、平均的な価格は1オンス当り200ドル程度。1グラム当たり約700円といったところです。
ところが、ヤミ市場での取引価格はさらに安く、1月初旬の時点でコロラド州での均的な価格は、高級品でも1オンス当り156ドルから250ドルだったといいます。1グラム当たり約560円(5.6ドル)から900円(8. 9ドル)ということになります。
これまで、取り締まりを回避して密輸・密売するヤミ市場特有の体質が、薬物の取引価格を高騰させているといわれてきましたが、現実には、高コスト高税率の認可販売店より、ヤミ市場のほうが安い大麻を供給しているようです(下記参照)。

ところで、認可販売店での大麻小売価格の予測を超える高騰ぶりは、事前の予測に基づく試算がいかに不確かなものかを示しているのでしょうか。

コロラド州の試算では、州政府が大麻販売から得る収税は、導入当初でおよそ6000万ドル(約60億円)と見積もられ、州政府はその用途として、少年の薬物乱用防止活動や薬物運転対策、薬物依存者の治療などに活用するとしています。
しかし、上記の記事は、この算定の不確かさについても指摘しています。大麻の消費拡大は、アルコール消費の減少をもたらし、大麻税は増加しても酒税が減少してしまうかもしれません。あるいは、大麻とアルコールの消費がともに拡大することになれば、飲酒運転・薬物運転対策費用が急増してしまうでしょう。

もうひとつ、気がかりなのはヤミ市場の動向です。認可販売店が店を開け、地域の大麻需要が膨らむ日に向けて、密売人も体制を整えてきたはずです。販売価格の高騰が、密売人を潤してしまうことにならないよう、密売取り締まりがどこまでできるか、気になります。
コロラド州で動き出した、認可店による嗜好品としての大麻販売制度、当面の動きから目が離せません。

[参照]
ビジネスウィークの記事
Bloomberg Businessweek>Legal Weed's Strange Economics in Colorado(January 09, 2014)
http://www.businessweek.com/articles/2014-01-09/colorado-legal-marijuanas-strange-economics

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
読んでいてとても滑稽に思えてきました。

大麻の有害性から考えたら、アルコールやニコチンの方が凶悪で恐ろしい。しかしそれを嗜んでいる人たちが大麻を恐れ、その管理に躍起になっている(日本においては悲喜劇な状態)。

自分たちはより強力なドラッグをやっているのに、強弱関係なくそれ以外のドラッグをやっている者を差別し排除しているのが現在の状況です。驚いた事に、その是非については科学の力も及ばない。無知で非科学的な差別と排除を行い、幇助し、黙認している。それが薬物問題の実態なのだと、この一件から見えてくるようです。
日鷲
2014/04/28 12:56

コメントする help

ニックネーム
本 文
課税と価格の戦略|変わり目の薬物政策3 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる