弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 室内栽培が日本の大麻市場を変えている・2

<<   作成日時 : 2013/11/19 07:50   >>

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またしても、営利目的での大量栽培が摘発されたというニュースが流れています。10月末から立て続けに、全国各地から、大型の大麻栽培事件の摘発が報じられていますが、今度は、倉庫など2拠点で合計500本以上という規模で、今年の摘発では最大規模になるのでしょうか。

<ニュースから>*****
●大麻を大量に栽培、所持 5人逮捕
大麻を大量に栽培していた倉庫が摘発され、男ら5人が逮捕された。
大麻取締法違反の疑いで逮捕されたのは、自称・自営業のM実容疑者(62)ら5人。警察によると、M容疑者らは神奈川・綾瀬市などの倉庫で大麻を販売する目的で大量に栽培し、所持していた疑いが持たれている。警察は倉庫2か所を摘発し、大麻草の鉢植え500鉢以上と大量の乾燥大麻を押収した。
警察の調べに対し、M容疑者ら3人は「栽培したり所持したりしていたのは間違いないが、人に売った覚えはない」などと話しているという。
日本テレビ系(NNN) 11月18日(月)22時45分配信
*****

●国内で栽培された大麻が出回っている
ここ数年、日本の大麻市場を観察していて、なんとなく落ち着きの悪さを感じてきたのは、私だけではないはずです。
2009年以降、大麻事犯の検挙者が着実に減少し、それとともに押収される大麻の量が減少し、とくに、密輸事件での押収量は著しい減少を示してきました(下記参照@)。ところが、末端市場を見る限り、日本の大麻市場がとくに縮小しているとは思えないのです。末端での大麻密売価格はそれほど変化しておらず、薬物密売人を検挙すれば、相変わらず、覚せい剤とともに大麻も押収されています。
また、若者たちの意識や態度にも、それほど大きな変化を感じることはできません。つい先日、関西4大学が新入生に対して行った調査では、回答者の4.5%が大麻を使用しているところを実際に見たことがあると回答しています(下記参照A)。

検挙や押収のデータが示す縮小傾向と、実際の市場から伝わってくる感覚とのギャップを埋めるコマのひとつが、国内で栽培され、密売される大麻の存在でしょう。
画像

↑乾燥大麻押収量の推移
警察庁の統計(下記参照@)に基づいて私がグラフ化したもの

上のグラフは、警察庁のデータ(下記参照@)に基づいて私が作成したものです。棒グラフは押収量の推移を示していますが、そのうち、赤色で示したのは密輸事件で押収された分です。折れ線グラフは、栽培事件で押収された大麻草ですが、重量ではなく本数で記録されているので、別軸で表示しました。
なお、日本の大麻密売市場で、無視できないものとして大麻樹脂がありますが、近年では流通が極めて少なくなっていること、また1回分の使用量や価格が乾燥大麻と異なり単純に加算できないことから、ここでは除外しています。

このグラフから見て取れるように、密輸事件で押収される大麻の減少を埋め合わせるかのように、栽培事件で押収される大麻草が増加しています。おそらく今年の集計値が発表されると、この傾向はさらに明らかになることでしょう。

さてここで、押収された本数で記録される大麻草が、重量で表すと、どのくらいの量なのかという疑問が浮かび上がります。栽培事件で押収される大麻草は、大きく茂って収穫期を迎えた物から、生育中の小苗まで多様で、単純に1本当たりの大麻重量を設定することはできません。
そこで、私なりの仮説を組み立てるために、少し作業をしてみました。実際の事件では、押収された大麻草は乾燥後、花穂や葉の部分を切り分けて1本分ずつ計量されます。そこで、実際に私が担当した事件の記録を探したところ、ある事件で押収された約120本の大麻草から切り分けた花穂、葉の重量(乾燥させたもの)は、1本当り平均で61.9グラムという値が出ました。また、別のケースでは約80本で、同じく1本当たり平均42.7グラムでした。そこで、とりあえず、両者の1本当りの量を単純平均した52.3グラムを仮の数値として、以下の仮説を進めてみます。
画像

↑仮説に基づく試算・大麻押収に占める栽培大麻(2012年)

警察庁の統計によれば、2012年では大麻に関する押収データは次のようになっています。
・乾燥大麻の押収量 301.8s
・うち密輸押収量  120.6s
・大麻草押収    6680本 
上記の大麻草を1本当り52グラムで換算すると、乾燥大麻押収量を上回る数値となります。私の仮説が正しいとすれば、日本の密売市場には、すでに、輸入されたものよりはるかに大量に、国内で栽培された大麻が出回っているということになります。ただし、前述したように、これは、ある特定事件でのデータに基づいて数量を計算したものであり、あくまでも試算に過ぎません。どなたか、体系的にデータを集め、きちんとした数値を示してくださることに期待しています。

●それでも説明しきれない密輸押収量の減少
国内で栽培された大麻草の増加を考えれば、大麻市場に感じるギャップをいくらか埋めることができそうですが、でも、これだけで説明がつくのでしょうか。ごく普通に考えるなら、密輸押収量の顕著な減少が示すものは、従来のルートと異なる密輸ルートへの移行が進んでいるということが想定されます。

ひと昔前までは、日本で流通している大麻のほとんどは外国から密輸されたもので、大麻草の葉や花穂、ときには小枝や種子も混入している、今から思えばいささか粗悪なものでした。ところが、この数年、私が担当する大麻事件の押収品やニュース報道でみかける乾燥大麻が変わってきているのです。THC濃度の高い花穂部分、いわゆる「バッズ」と呼ばれる形状をとどめているものを見かける機会が増えています。以前のような大麻をあまり見かけなくなったことからみても、旧来の密輸ルートはすでに役割を終えているのでしょう。
しかし、世界には、いわゆる高品質大麻の市場があり、しかも拡大しているのです。全く新たなルートを通じて、こうした物が密輸されている可能性は無視できません。

さらに特筆しておきたいのは、日本の大麻密売市場では、国際的にみて、極めて高価格で乾燥大麻が売買されているという事実です。
最近のニュースによると、営利目的で大麻を栽培していたグループが、収穫した乾燥大麻を密売グループに売り渡す際の価格は、1グラム当たり1,300円あるいは1,500円と報じられていますが、この価格は、数年前から私が把握してきた相場から変化しておらず、おそらく安定的なものなのでしょう。
ところが、この価格はといえば、アメリカの医療用大麻の小売価格とほぼ同じ水準なのです。医療用大麻として販売されているのは、含有するTHCやCBDなどの成分がコントロールされている物もあり、特定銘柄のいわゆる高級品です。こうした大麻の小売価格が、日本での卸売価格とほぼ同水準だとすれば、それに多少の手間とコストをかけて日本に持ち込んでも、経済的には釣り合うことになります。

高品質大麻への移行をキーワードに、大きな変動が起きている大麻市場の動向を考慮するなら、まだ私たちには見えていない何かが、着実に進行しているような気がしてなりません。

[参照]
@警察庁の統計
警察庁「平成24年中の薬物・銃器情勢・確定値」2013年3月
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h24_yakujyuu_jousei.pdf
なお、過去年度の数字を補充するため、犯罪統計書のものを一部使っています。

A関西4大学の調査
関西四大学「薬物に関する意識調査」集計結果 報告書(2013年10月)
http://www.kansai-u.ac.jp/mt/archives/pdf/131107_n_report.pdf

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