弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 薬物簡易試験をやめるべき理由|大麻

<<   作成日時 : 2013/11/04 11:15   >>

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先日、警視庁は、コカインなど簡易試験での判別が難しい一部の合成薬物で、原則として捜査現場での簡易試験を中止すると発表しました。いっぽう、覚せい剤や大麻については、現行の簡易試験は精度が高いので、従来通り、簡易試験を続行するということです。
たしかに、覚せい剤の呈色試験に用いられるシモン試験、大麻の呈色試験に用いられるデュケノア試験は、安定した試験法として広く使われていますが、現に、少なからぬ誤認逮捕が発生しているのも事実です。捜査現場で簡易試験を行うことがはたして適切なのか、もういちど検討しておきたいと思います。

現在の薬物市場には、「ハーブ」などと称して大麻まがいの脱法ドラッグが大量に出回っていて、捜査現場で押収された薬物の判別を混乱させています。大麻に含まれる天然のTHCと、脱法ハーブに使われる合成カンナビノイド類には、化学的な性質に大きな違いがあり、大麻の簡易試験に用いられる試薬に対して合成カンナビノイドが陽性を示すことはないといいます。その意味では、現在行われている大麻の簡易試験は信頼性の高いものであると言いうるのですが、しかし現実には、脱法ハーブが出回るようになって以来、全国で誤認逮捕が起きています。
捜査現場での簡易試験で大麻と誤認・・・相次ぐ誤認の原因を突き詰めて考えてみると、ここにも、簡易試験による判定の落とし穴が浮かび上がってきました。

大麻の簡易試験に使われる大麻試薬(デュケノア試薬)は、3種の試験液で構成されています。第1液がデュケノア試薬と呼ばれるもので、これを加えて十分に振り混ぜた後、第2液として少量の塩酸を加え、さらに第3液としてクロロホルムを加えて振り混ぜ、しばらく静止させると、上下2層に分かれ、下層(クロロホルム層)が紫色を呈します。この手順の最終段階で、上下に分離した下層が紫色を呈していれば、陽性とされます。

【誤判定の指摘】
実は、アメリカでは以前から、大麻所持事犯を簡易試験によって逮捕することの適否をめぐって議論があります。問題は、DEAや警察が大麻の簡易試験に使っている3液一体型の検査キットによって、多くの誤判定が発生しているという点です。
このキットは、小さなカプセル入りのデュケノア試薬など3種の試験液を一つの容器に納め、順にカプセルを割って試験が行えるよう工夫されたものですが、ところが、このキットはありふれた植物など大麻以外のものにも陽性反応を示すことが多いと、問題になっているのです。
私が把握している限りでは、日本の警察ではこのキットは使われていません。しかし、デュケノア試薬を用いる簡易試験法そのものは、日本の警察で行われているものと同じです。
末尾に、誤判定を指摘している2文献を掲げました。いずれも、このキットを用いて様々な物質を試験した結果、誤った陽性結果が示された例を具体的に挙げていますが、大麻と同じような陽性結果を示したものとして、パチョリー(ミントの仲間)やユーカリ属の植物などいくつか挙げられています。
専門家でない私には、これら文献の正確さを判断することはできません。また、誤判定は、このキット特有のものなのか、デュケノア試薬を用いる簡易試験に共通するものなのかも判然としません。とはいえ、こうした批判があるという事実は認識しておかなければならないでしょう。

【判別のあいまいさ】
下記参照@は、デュケノア試薬を用いる簡易試験で示される「紫色」の判定に幅があることも、誤判定を生む要因になっていると指摘しています。この呈色は、文献によって菫色(violet)、紫(purple)、青紫(blue-violet)など様々に表記されているように、示される色には幅があります。
そもそも、覚せい剤などの合成薬物と異なり、天然の植物を乾燥しただけの大麻は、サンプルごとに性質も多様で、同じ試験法でも呈色は様々で、色の濃淡だけでなく色調が異なる場合や、また呈色がごく薄い場合もあります。
いっぽう、上述したように、大麻以外の植物が、この試験に対して陽性あるいは紛らわしい結果を示すこともあるようです。
呈色の微妙さや多様さは、捜査現場での判断を誤らせる要因のひとつです。

【誤認の誘因】
さらに、大麻事犯の件数が少ないというわが国固有の環境下で起きてくる、エラーもあります。この試験には、不慣れな者にとって、誤認しやすい要因があるのです。
前述したように、この試験で判定のベースとなるのは、第3液で処理した後に分離した下層が示す紫色ですが、この呈色には幅があり、判断は微妙です。
いっぽう、大麻でない場合、つまり陰性の場合、試薬を加えてもほとんど色の変化が現れないこともありますが、途中で鮮やかな変化を示したものの、最終結果が陽性にならないこともあるのです。
また、最終結果を判定する際に、上下に分離した上層の色は判断に影響しないとされていますが、この部分がはっきりした色を示した場合には、ともすれば、それに引きずられて、肝心の下層の色を見誤ってしまうこともあるでしょう。
大麻まがいの脱法ドラッグとして出回っている製品には、多種類の乾燥植物が含まれており、そのなかには、この試験法に対して何らかの反応を示すものもあるかもしれません。紛らわしい反応をきちんと識別できるかどうかは、検査を行う人の習熟度にかかっているわけですが、ベテランしかできないような試験では、とても捜査現場に対応できません。
さらに、捜査現場で簡易試験が行われるのは、多くの場合、道路脇に停車した捜査車両の座席など、薄暗く、窮屈な場所です。しかも事件は深夜に発生することも多く、不十分な車内灯の下で、紫という微妙な色調を正確に判断できるかどうか、不安があります。

[参照]
@米国の司法科学雑誌に掲載された論文
John F. Kelly et al., The Non-Specificity of the Duquenois-Levine Field Test for Marijuana, The Open Forensic Science Journal, 2012, 5, 4-8
http://benthamscience.com/open/toforsj/articles/V005/4TOFORSJ.pdf
A大麻試験の誤判定に関する報告書
John Kelly et al., False Positives Equal False Justice, 2008
http://www.cacj.org/documents/sf_crime_lab/studies__misc_materials/falsepositives.pdf

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