弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 勾留の執行停止|覚せい剤事件と裁判

<<   作成日時 : 2013/09/14 23:48   >>

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ほんの数日前に、勾留の執行停止中に逃走していた被告人が、およそ9年半ぶりに身柄を確保されたという報道があったばかりだというのに、今度は、執行停止中の男が、入院先の病院から逃走したとか。ちょうどここ数日、私はいま抱えている覚せい剤事件で、勾留の執行停止の申立をも視野に入れて弁護活動をしていたところに、相次いでこんなニュースが飛び込んできました。

<ニュースから>*****
●覚せい剤容疑の男逃走=勾留停止中、病院から−大阪
大阪府吹田市で7月、覚せい剤取締法違反容疑などで逮捕された男(40)が、勾留停止中に病院から逃走し、行方不明になっていることが14日、府警への取材で分かった。男は体調不良を訴え、府警吹田署が入院させていた。
車に乗って逃走した目撃情報があり、別の人間が手助けした可能性もあるとみて、同署が男の行方を追っている。
同署によると、男は7月26日に同法違反容疑(使用)で逮捕された。「内臓のあたりが痛い」と訴えたため、医師が診察した結果、収容に耐えられないと判断。大阪地裁は8月13日、勾留執行停止を決定した。
男は同月17日、入院中の吹田市の病院ロビーにいたところ、いきなり走りだしたという。勾留執行停止中は身柄確保ができず、捜査員が説得のため追い掛けたが見失ったという。地裁は同日、執行停止の決定を取り消した。
時事通信(時事ドットコム)2013/09/14-13:59
*****

勾留中の被告人が一時的に釈放されるといえば、普通は保釈ですが、外見上よく似たものとして、勾留の執行停止(刑事訴訟法[以下「法」といいます]95条)があります。保釈の場合は保釈保証金を納付することを条件に釈放されるのですが、勾留の執行停止では保証金を納付する必要がないため、私たち弁護人は、保釈保証金を用意する資力のない被告人の身体解放を得る最終手段として検討することもあります。
また、保釈は被告人にのみ許される制度ですが、勾留の執行停止は被疑者(つまり、起訴前勾留中の容疑者)についても認められます(法207条1項)ので、この点でも保釈と異なります。
しかし、勾留の執行停止の場合は、保釈保証金という担保なしに被告人の身柄を釈放するのですから、当然ながら、ごく限定的に運用され、事実上、病気のため病院等に入院して治療を受ける場合や、親族の葬儀、重要な試験などの場合に限られています。これまで1000件を超える薬物事件を担当してきた私も、勾留の執行停止の経験は数えるほどしかありません。
ちなみに、被疑者ではというと、勾留中に入院を要するような重篤な状態になった覚せい剤使用のケースを扱いましたが、日を経ずに勾留が取消されて釈放され、執行停止の問題は生じないまま、終わりました。

ちなみに、司法統計年報によれば、2012年中に勾留状を交付された被告人は57,720人ですが、このうち、
・保釈を許可されたのは12,156人(21.1%)
・勾留の執行が停止された被告人は401人(0.69%)
という状況でした。

●繰り返されてきた執行停止中の逃走
勾留の執行停止に当たって、釈放される被告人は、裁判所が指定する条件を守るよう求められ、違反すれば、勾留の執行停止が取り消されることがあると注意されます。指定条件の内容は住居の指定や逃亡、罪証隠滅と疑われるような行為をしないこと、召喚を受けた時に出頭することなど、保釈の場合とほぼ同じです(法96条)。つまり、外見上は、勾留の執行停止は、限りなく保釈と似ているのです。
実際、保釈を請求すれば許可されるだろうが、適当な身元引受人がいない、保釈保証金が用意できないなどの理由で保釈請求ができず、勾留の執行停止を得た場合は、実質的に保釈とほぼ同じです。

しかし、現実に勾留の執行が停止されるケースの多くが、病気等によるものであり、逃亡や罪証隠滅のおそれがあるとして保釈が許可されないまま病状が悪化して、精密検査や入院が必要になったといったものも多いのです。
被告人に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合には、事実上、警察官などが釈放中の被告人を監視します。病院に入院中も、交代で監視要員が配置されています。しかし、法律上は勾留の執行が停止されているので、仮に目の前で逃亡を図ったとしても、監視している警察官は被告人の身体を拘束することができません。
監視する警察官の目の前から逃亡・・・、これまでも同じような例が何度も起き、そのたびに、勾留の執行停止という制度の矛盾が話題になってきました。

こうした逃走が、実際にどれくらい発生しているのか、残念ながら具体的に知るデータはありません。
なお、なお、保釈条件に違反して保釈を取り消されたのは63件、保釈許可人員の0.5%でした。
しばしば報道されるように、執行停止中に逃亡する例があることは事実で、たしかに問題ではあります。しかし、逃亡の恐れがあるからと、必要な診療を受けることさえ制限するとすれば、これは別次元の人権問題です。逃亡のおそれのある被告人でも安心して収容でき、必要な手術や治療を施すことのできる施設がないことが、こうした矛盾を生み出しているのです。本来必要な施設が不足、不備なまま、治療のために釈放することの是非を論じてみても始まりません。
刑事拘禁施設内での医療・・・、そういえば、長いことタブーのままで放置されている課題のひとつです。

[参照]
@司法統計年報のデータ(該当箇所は第16・17表)
裁判所>司法統計年報>平成24年度刑事編
http://www.courts.go.jp/search/jtsp0010List1

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