弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 米連邦、薬物営利犯に対する刑を緩和

<<   作成日時 : 2013/08/14 01:25   >>

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拘禁大国アメリカのホルダー司法長官が、連邦刑務所に収容する薬物犯罪者に対する量刑を見直すという方針を明らかにしました。重すぎる刑、多すぎる受刑者、人種による差別・・・、様々な批判が寄せられてきたアメリカの刑事拘禁制度に、ようやく変化の兆しが見えてきたようです。
それにしても、刑事政策がターニングポイントを迎えるとき、そのテコになるのは、なぜか、常に薬物事犯者に対する政策です。

<ニュースから>*****
●薬物犯罪の量刑軽減指示=収監者数減狙う−米司法長官
【ワシントン時事】ホルダー米司法長官は12日、サンフランシスコで講演し、薬物犯罪の訴追に際し、暴力を振るわず、組織犯罪とは無縁の容疑者に対する量刑の軽減に努めるよう指示したと表明した。刑務所運営の上で負担になっている薬物犯罪の収監者の数を減らす狙いがある。
長官は「刑務所にあまりに長い間送られている国民が多過ぎる」と強調した。米政府が薬物犯罪の摘発に力を入れ始めた1980年代以降、連邦刑務所の収監者数は激増。その数は現在、80年時点の約9倍の21万9000人以上に達し、うち約半数が薬物犯罪に関係した囚人という。
時事通信(2013/08/13-06:28)
*****

●拘禁大国アメリカと薬物犯罪
ホルダー長官の発言のなかに、こんな言葉がありました。「アメリカは世界人口の5%を占めているが、この国では、世界全体の囚人の4分の1を拘禁している。」
そう、たしかにアメリカは拘禁大国だと思います。2012年のデータでは、連邦刑務所の収容者が約219,000人、ほかに各州や郡の刑務所に収容されている人数が約1,353,000人、合わせて150万人以上がアメリカの矯正施設に収容されているのです。

そのなかで、とくに目立っているのが薬物事犯者で、連邦刑務所には約9万人が収容され、全収容者の46.8%を占めています。しかも、この数字には末端の薬物乱用者は含まれていないという点を見落としてはいけません。末端の乱用者による単純所持事犯は一般的に州法で扱われ、しかもドラッグコートなどの制度によって社会内で処遇されることが多いため、連邦刑務所に収容されている薬物事犯者のほとんどは、薬物の輸入や製造、売買などで有罪を宣告された人たち、つまり日本でいう「営利犯」なのです。

薬物事犯者の増加は、1980年代にレーガン大統領が「薬物との戦い」を打ち出した時から始まりました。従来、比較的軽微な犯罪とされてきた薬物事犯などに、一定期間の拘禁刑を科す必要的(強制的)最低量刑(Mandatory Minimum Sentence)制度や、軽微な事案でも再犯を繰り返すと長期刑が科されるスリーストライク法などが導入され、刑務所は薬物事犯者で超満員になったのです。
画像

↑犯罪者総数と薬物事犯者数の推移・1995−2010年
赤線は犯罪者の総数  黒線は薬物事犯者の数
Report to the Congress: Mandatory Minimum Penalties in the Federal Criminal Justice System (下記参照A)165ページより転載

その反面、こうした厳罰化の流れに呼応して、初犯者や軽微な犯罪者などに対する刑を緩和する動きも活発になりました。なかでも前述のドラッグコートは全米に広まり、今では営利行為に関わらない薬物事犯者の多くが、矯正施設に収容されることなく、裁判所の監督下で社会生活を続けながら、更生の道を歩んでいます。

それでも、まだ多すぎる受刑者を抱えている米国が、いよいよ連邦レベルで拘禁問題の本格的な見直しに着手することを宣言しました。これまで多くの問題点が指摘されてきた必要的最低量刑制度にも、ようやく見直しの時が訪れたようです。
薬物事犯の中で、最初に見直しの対象になるのは、犯罪組織の道具に使われて薬物の密輸や密売にかかわった人たち、たとえば密輸における運び屋や、密売の配達係、密造や栽培施設で働かされた不法移民などでしょうか。そういえば、最近英国でも同じように、薬物事犯者に対する量刑の見直しが行われ、犯罪組織に利用された立場の人たちに対する科刑水準が引き下げられました。

ちなみにわが国では、刑務所収容者数(2012年末)は約59,000人、そのうち約15,000人が薬物事犯者で、刑務所収容者の4人に1人は薬物事犯者といった状況です(下記参照C)。アメリカと比べるとはるかに穏当な数字ではありますが、しかし、全国の刑務所に収容されている薬物事犯者の大半が、自己使用のために少量の薬物を持っていた単純所持や、覚せい剤や麻薬の使用で有罪を言い渡された、末端の乱用者であることを考えると、薬物事犯者に対して、まだまだ過度な刑が科されていると思います。

[参照]
@ホルダー長官発言の詳しいニュース(英語)
CNN>Eric Holder seeks to cut mandatory minimum drug sentences(August 12, 2013)
http://edition.cnn.com/2013/08/12/politics/holder-mandatory-minimums/index.html?iref=allsearch
A必要的最低量刑制度に関する米国量刑委員会の議会報告書
Report to the Congress: Mandatory Minimum Penalties in the Federal Criminal Justice System(October 2011)
該当部分は第8章Mandatory Minimum Penalties for Drug Offenses
http://www.ussc.gov/Legislative_and_Public_Affairs/Congressional_Testimony_and_Reports/Mandatory_Minimum_Penalties/20111031_RtC_PDF/Chapter_08.pdf
B米連邦刑務局(Federal Bureau of Prisons)の収容者データ
Quick Facts About the Bureau of Prisons(27 July 2013)
http://www.bop.gov/news/quick.jsp#5
C2012年版矯正統計年報
薬物事犯受刑者の人数は、第4表を参照
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001112208

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