弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 刑の一部執行猶予法案ようやく成立、3年後に始動

<<   作成日時 : 2013/06/13 23:57   >>

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いわゆる刑の一部執行猶予法案が、ようやく成立したとニュースが報じています。この法案がはじめて国会に提出されたのが2011年、国会運営の混乱のなかで廃案となった後、今国会であらためて提出されていたものでした。

対象となるのは「薬物使用等の罪を犯した者」と、比較的罪の軽い初犯者で、3年以下の懲役または禁錮刑を言い渡される際に、刑の一部の執行を猶予されるという制度で、たとえば「懲役2年、うち6か月については5年間執行を猶予する」という形で判決を受けることになるといいます。受刑者は、まず施設内で一定期間受刑した後、刑の一部の執行を猶予され、保護観察を受けながら社会内で過ごすことになります。
これまでの刑事裁判では、刑期のすべてが実刑になるか、すべてが執行猶予になるかの選択肢しかなかったものが、中間的な制度を設け、執行猶予期間中に行われる保護観察や支援体制などを通じて、円滑な社会復帰を進め、再犯防止をはかるものといわれてきました。

さて、3年後の施行へ向けて関係各所での準備がスタートしますが、一部執行猶予制度で社会復帰する人たちの受け皿づくには、いくらか不安もあるようです。とくに、薬物事犯での受刑者の平均年齢が上がり、複数回の受刑経験を持つ人も少なくない中で、執行猶予期間中を通じて保護観察を受けるとなると、安定した住居や生活基盤の確保が不可欠です。
毎日新聞の記事は、新制度を支える受け皿の不安定さを指摘しています。

<ニュース記事から>*****
●出所者の受け皿不十分
法務省の試算では、一部執行猶予制度で出所する薬物依存者は年間約3000人を見込む。このうち出所後の住居のない人は約700人に上るとみられる。しかし、現状では、居住先のない出所者に部屋を提供できる施設は十分とは言い難い。
出所者を一時的に保護する更生保護施設は全国に104あるが、収容人員に余裕がない施設が多いばかりか、「覚醒剤依存者は対処が難しい」として受け入れに消極的な施設も目立つ。
同省は2011年度から居住先を増やそうと、NPO法人などが管理する民間アパートの空き部屋などを有効活用する「自立準備ホーム」の整備を開始した。12年末時点で225事業者が登録し、計約1000人を受け入れてきたが、新制度の導入を見据えると、まだ足りない状態だ。
薬物依存者を受け入れてきた「ダルク」などの民間リハビリ施設で自立準備ホームに登録したのは41事業者にとどまる。「国の制度に関与すべきではない」と否定的な事業者もあり、足並みはそろっていない。(記事の一部)
毎日jp・毎日新聞「刑の一部執行猶予制度:薬物依存者に専門治療の道」(2013年06月13日 21時26分)
*****

薬物事犯者の再犯防止に向けて、これまでに、主に保護観察の段階で、受刑者の社会復帰を支える様々な制度や取り組みが導入されてきました。しかし、最も根深い問題性を抱える人たちの多くは、刑期満了で出所し、保護観察を受けることもなく社会へ戻ってきたのが現実です。
迎えてくれる家族もなく、戻る住まいもない人たちが、受刑者仲間を頼って暴力団に身を寄せたり、昔の薬物仲間を頼って密売を手伝ったりするうちに、またしても薬物事件で逮捕される・・・。私の手元にある薬物事件の記録には、こうした人たちの軌跡がずっしり詰まっています。
刑の一部執行猶予制度の導入を契機に、これまで何の援助もなく社会に戻っていた人たちが、適切な支援と監督の下で安定した生活基盤を築きながら社会復帰するようになれば、再犯リスクはずいぶん低減することでしょう。
まだまだ不足だらけの薬物依存者対策が、この機会に前進することに、期待したいと思います。

ところで、刑の一部執行猶予制度が導入されるとなると、刑事裁判も様変わりすることになります。検察官が執行猶予を求刑したり、場合によっては弁護人が、拘束が長期に及ぶことを理由に、執行猶予を回避しようとすることも起きてくるかもしれません。
そういえば、刑事裁判の場で、被告人にふさわしい矯正処遇のあり方を論じることがほとんどなかったことは、片手落ちだったとも思えます。
機会があれば、刑事裁判の変化について、改めて考えてみたいと思います。

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