弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 覚せい剤輸入事件、大阪、東京で相次いで無罪

<<   作成日時 : 2013/05/30 22:35   >>

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5月28日には東京地裁で、そして29日には大阪地裁で、覚せい剤輸入事件の裁判員裁判で無罪判決が出ました。裁判員裁判で、覚せい剤輸入事件に全面無罪判決が出たのは、この2件を加えるとすると、14件目になるはずです。
なお、東京の事件では、同時に審理された入管法違反事件(不法在留)で被告人は有罪となっているため、全面無罪事件としてカウントすることはできないかもしれませんが、覚せい剤輸入に関する部分(覚せい剤取締法違反と関税法違反)については無罪の判決です。

●大阪地裁の無罪判決
・大阪地方裁判所 2013年5月29日判決
・覚せい剤取締法違反、関税法違反事件
・無罪(求刑・懲役12年、罰金600万円)
2012年5月、ウガンダからドバイを経由して関西国際空港に帰国した日本人女性のスーツケース内から、コーヒー豆袋20袋内に隠匿した覚せい剤約8キロが発見された事件です。女性は、交際していたウガンダ人男性と一緒にウガンダへ旅行した後、単独で帰国したところでした。
報道によると、被告人は、捜査・公判を通じて「交際相手のウガンダ人がスーツケースにコーヒー豆を入れたと思っていた」と説明。覚醒剤との認識はなかったと無罪を主張していたといいます。
新聞は次のように伝えています。
「裁判長は、男性とウガンダを旅行中、急に1人での帰国を促され、男性が荷物を詰め直していたことを指摘。被告が同空港の税関検査で提出書類にコーヒー豆をどう記載するか尋ねていた点も踏まえ、『密輸の故意があったと認めるには疑いが残る』と述べた(読売新聞 5月30日)。」

[参考]大阪税関の報道発表
ウガンダからの覚醒剤密輸入事犯を摘発(2012年5月30日)
http://www.customs.go.jp/osaka/news/2012houdou.html#5

●東京地裁の無罪判決
・東京地方裁判所 2013年5月28日判決
・覚せい剤取締法違反、関税法違反、出入国管理及び難民認定法違反事件
・懲役2年6月・執行猶予4年、覚せい剤取締法違反及び関税法違反については無罪、入管法違反は有罪(求刑懲役23年、罰金1000万円)
事件の発端は、2011年9月、タイから来日した米国人女性の別送品として送られた椅子の内部に、隠された覚せい剤約17キログラムが発見され、東京税関に椅子を受け取りに出向いた女性が逮捕されたというものです。この女性は一審、控訴審とも有罪(懲役12年・罰金600万円)となり、現在は上告中。
本事件の被告人は、日本に不法在留していたイラン人男性で、受取役の女性など3人と共謀して輸入したとして起訴されました。
検察側は、男性が使っていた携帯電話が密輸に使われ、税関近くで男に現金を渡していたとして、共謀が成立すると主張。男性は「携帯電話は友人に譲り渡しており、現金は頼まれて届けただけだ」と供述していた(時事通信5月28日)といいます。裁判長は「女の逮捕後も逃亡しようとした形跡がなく、密輸について意思を通じていたと認めるには合理的な疑いが残る」と判断したと報じられました(日本経済新聞5月28日)。

[参考]東京税関の報道発表
タイ王国来覚せい剤密輸入事犯を摘発(2011年10月12日)
http://www.customs.go.jp/tokyo/yun/mitsuyu_H23.htm

●覚せい剤輸入事件の無罪率2.62%
最高裁が発表する裁判員制度に関する情報をみると、裁判員制度が導入されたことで、日本の刑事裁判が変化し始めている状況をありありと感じとることができます。現在、2013年3月末までの状況が速報として発表されていますが、覚せい剤取締法違反事件では、無罪の割合が伸び続け、発表時点の累計では実に2.62%となっています(下記参照@)。
画像

↑裁判員裁判の量刑分布・強盗致傷、傷害致死、覚せい剤取締法違反の比較
最高裁判所編「裁判員裁判の実施状況について」のデータに基づき筆者がまとめたもの

日本の刑事裁判では、もともと無罪が言い渡されることはきわめて稀です。2011年では、全国の地方裁判所で57,968人の被告人に対する刑事裁判(通常第一審)が行われましたが、無罪が言い渡されたのはわずかに79人。無罪の割合は0.14%ということになり、グラフに表示しても読み取ることのできない数なのです。
このうち、裁判員裁判で審理されたのは1525人で、10人に無罪が言い渡されていますが、その半数にあたる5人は、覚せい剤取締法違反の裁判員裁判での無罪でした(下記参照A)。
[2011年の通常第一審での無罪]
・全地裁通常第一審  (終局人員)57,968人、(無罪)79人、(無罪率)0.14%
・うち裁判員裁判   (終局人員)1525人、(無罪)10人、(無罪率)0.66%
・うち覚せい剤取締法違反 (終局人員)167人、(無罪)5人、(無罪率)2.99%

たしかに、流れが変わったと思います。とはいえ、裁判員裁判で審理される覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の被告人は、年間に100〜150人程度、無罪判決が劇的に増加したといっても、年に数回のことでしかないのです。
あくまでもピンポイントで起きていることですが、それでも、この小さな変化が、日本の刑事裁判を少しずつ変容させているようです。

[参照]
@裁判員裁判の実施状況について(制度施行〜平成25年3月末・速報)
http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/pdf/09_12_05-10jissi_jyoukyou/h25_3_sokuhou.pdf
A司法統計年報(現時点では2011年版が最新のもの)
http://www.courts.go.jp/search/jtsp0010List1

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